中〜大規模構成では無線LANコントローラー導入が前提だ。管理や制御機能はコントローラーが担当し、APはその管理下で随時適切に設定を自動変更しながら運用する。
コントローラーはAPからの信号により電波状況や利用状況を全て把握する。過負荷APの負荷分散を他のAPで行ったり、AP間の電波干渉が起きていれば電波強度調整(ビームフォーミングも含めて)を行ったりすることで、ネットワーク内にどんな変化があっても全体のスループットを維持するようにAPをリアルタイムに自動設定できる。コントローラー同士の連携が可能なので、構成の拡張も自在だ。
APを10台以上展開するような環境がみこせるようなら、コントローラーが必須となろう。図1の下段右端が典型例だ。ベンダーによってはコントローラーに有線スイッチを一体化した製品があるが、別途有線スイッチに接続するコントローラーも多い。
センター拠点で遠隔拠点の集中管理を行うイメージは図1では下段の右から2番目にあたる。この類型は図3のようなイメージで考えるとより分かりやすいだろう。
なお、図1下段左から2番目のように、データセンタでコントローラーをホスティングすれば、拠点数が多い場合にも対応が容易になる。また、図1上段のような管理機能をクラウドで提供するサービスもある。これから続々拠点が増えるようなケースではコスト低減が望めるだろう。
無線LANコントローラー機能が端末高密度化環境でどのように問題を解決していくのか。3つのよくある悩みや疑問(事例)をカギに紹介しよう。
事例
フリーアドレスオフィスにおいて、入口近くでAPに接続するとスムーズに通信できたものの、オフィス奥のスペースに移動したら速度が半減。また通常の作業エリアでの通信に支障はないが、打ち合わせなどで端末を持って移動するとレスポンスが遅くなり、作業エリアで移動していない端末にも影響が出てしまう。
原因は?
無線LANでは1つのAPに同一チャネルで接続する場合、通信は衝突防止のために「順番待ち」で行われる。接続する端末数が増えて通信量が多くなるとそれだけで速度が低下する。しかも同時接続する端末の中に通信品質の悪いものがあると、その端末だけでなく他の端末も含めて全体が影響を被ることになる。
事例は、最初に捉えた最も電波強度の高いAPと接続した端末が、そこから離れた場所に移動した後も同じAPと接続し続ける「スティッキークライアント」と呼ばれる現象だ。一般的にAPから離れるほど電波伝播は悪くなり、速度が低下する。ある作業エリアから一部端末が移動した場合もそれは同じだ。
解決法は?
もともと無線LAN規格には受信側からのACK応答の強さやリトライ率、エラー率を判断して最大通信速度を自動選択する機能がある(動的PHYレート)。加えて新型APが備える、いわば「待ち時間(無線空間占有時間)の均等化」機能により、低速な端末と高速な端末が混在していても低速な端末に他の端末が引きずられることなく、公平な待ち時間分配が行える。
とはいえ本来はあるAPから移動したら、移動先にあるより通信品質が高いAPに自動接続(ローミング)するのが望ましい。入口付近のAPなど特定APに負荷が集中するのを避けるのが本筋だ。このように最初のAPをひきずってしまうことがレスポンス低下の原因になっている場合、システム側から電波の弱いクライアントを切断するか、引きづられにくくローミングしやすくなるようにAPの送信電力を弱くしておくなどの対策が必要だ。
また、自律型APでもローミングは可能だが、よりきめ細かくスムーズなローミングで負荷分散するには、全体のAP分布や端末利用状況の監視データをもとにして、空きのあるAPやチャネル、ときには周波数帯域(2.4GHz帯か5GHz帯か)を選び、移動場所に応じて最大のスループットが出るように自動切替できるとよい。それができるのが無線LANコントローラーだ。
特に2.4GHz帯では11b/g対応の「遅い」端末が混在するのと、電子レンジなどをはじめとする電波干渉源が多いため、5GHz帯の11n対応の端末はできるだけ5GHz帯で使うようにすると効率がよくなる。最新コントローラーでは、適正な周波数帯やチャネルへの自動切替が可能になっている。
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