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無線LAN利用の最適解、高速化と高密度化がもたらす弊害は?IT導入完全ガイド(4/4 ページ)

» 2014年11月10日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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IEEE 802.11acを利用したいが導入はまだ控えるべきか?

 最大1.3Gbpsの伝送速度を実現するIEEE 802.11ac Wave1対応機器が続々登場する一方、第二世代の最大6.93Gbpsの速度と同一チャネルで同時に複数端末が通信できるMU-MIMOを実現するWave2対応チップが2015年には発売と予想される。Wave2対応機器登場まで11ac機器導入は控えた方がよいのだろうか。

 この機会に、無線LANの用途を再考してみよう。1.3Gbpsという速度は理論値で実効速度はそれほどでないにしろ、現実の一般的なオフィス業務には十分だ。動画再生など特殊な使い方の場合を除き、速度に不満が生じることはあまりなさそうだ。

 Wave2の導入の場合、むしろそのトラフィックを受け止める有線LANのほうがボトルネックとなる可能性がある。AP当たりの接続端末数の目安は、11nの場合で20〜30台が推奨されることが多かったが、11ac Wave1では50〜60台に増やしても問題ないケースが多いという。

 端末数が2〜3倍になることを見込んでも、AP数を多少増やす程度で済む。この先数年で有線LANの見直しを含めたネットワーク増速が必要な場合は別だが、現状の11g/a/n対応端末も効率的に使える11ac対応コントローラーやAPへのリプレースは選びやすい選択だろう。

数年後のデバイス数を見越した設計が可能な製品を選ぶ

 従来は無線LANへの接続数はユーザー数単位で設計されてきた。ユーザーが数人程度なら家庭用のAP設置で十分、5〜6人以上になったら企業向けAP、企業向けAPが10台を超えるようならコントローラー導入という目安だった。

 ところが、現在は1人で端末を3台使うことも珍しくなくなった。あるグローバル企業では当初1人2〜3台のつもりで設計していた無線LANを、今では1人で8台使う前提の設計に変えたという。今後はユーザー数の増加の3倍以上のデバイス増加を見込む必要がある。スモールスタートする場合は自律型AP導入の方がコスト効果が高いが、将来のコントローラー導入に対応できるAPを選ぶほうが合理的だ。

BYODやゲストアクセスを考えた認証機能にも注目

 企業での無線LANセキュリティの要になる認証機能には、IEEE 802.1X認証(RADIUSサーバと連携)の利用が常識化しているが、BYODや一時的なゲストアクセスを許可する場合にはクライアントに証明書を導入する手間が問題だ。

 ベンダー側ではそんな場合でも簡単に証明書配布ができる仕組みを提供する場合がある。例えば図5のように社内SSIDにログインしようとすると支給(社内用)ID/パスワードを入力するよう促し、入力されると証明書を自動インストール、その後は802.1X認証により接続が可能になる仕組みが提供される。

BYODやゲストアクセスをセキュアにする証明書配布機能の例 図5 BYODやゲストアクセスをセキュアにする証明書配布機能の例(出典:アルバネットワークス)

コラム:スタジアムの超高密度端末環境でもライブストリーミング配信

 メジャーリーグのスタジアムや日本の西武ドームに無線LANが備えられているのをご存じだろうか。観客席には超高密度にスマホなどの端末がある。その端末に向け、試合映像のストリーミング配信や飲食物のオーダーシステムなどが提供されている。

 スタジアム天井など各所にWi-Fiアンテナを約8〜10メートル間隔という非常に短いスパンで設置しながら、電波干渉を抑えてスムーズな通信ができるのは電波と端末の状況監視に基づく制御が効果的に実現されているからだ。加えてベンダー独自のスタジアム専用高密度アンテナや置局設計ノウハウが存分に生かされている。

スタジアム天井部の超高指向性アンテナ 図6 スタジアム天井部の超高指向性アンテナ(出典:シスコシステムズ)
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