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オムニチャネルの旗手となるか、「モバイルPOSレジ」大全IT導入完全ガイド(5/6 ページ)

» 2015年01月05日 10時00分 公開
[酒井洋和てんとまる社]

モバイルPOSレジのメリット、デメリット

 次世代のPOSシステムとして注目されるモバイルPOSレジだが、あらためてモバイルPOSレジの強みについて見ていこう。もちろん、既存POSレジの強みについてもしっかり確認していきたい。

【メリット1】圧倒的に安価な初期・運用コスト

 モバイルPOSレジに移行する最も大きなメリットとして考えられるのが、コストの部分だろう。一般的なPOSシステムは1システム当たり100〜200万円程度が必要となり、1店舗当たりの利用料も毎月数万円程度発生する。モバイルPOSレジの場合は、モバイルPOSレジアプリの利用料とタブレット本体、ドロアやレシートプリンタなど周辺機器の料金を合わせても数万円〜数十万円の範囲で済む。

【メリット2】データ保護も含めた業務の継続性

 モバイルPOSレジのサービスを利用する場合、サービス事業者が用意するクラウド上のサーバで売上データを管理することになり、常にリアルタイムな情報がサーバ側で管理される。それ故、タブレット側で障害があったとしても、データを安全に保護できる。モバイルPOSレジの場合、実際のデータとPOSレジアプリ、そしてハードウェアである筐体が分離されているためだ。

 また、停電が発生したりインターネットに接続できない状況が発生したりした場合でも、オフライン機能によってレジ業務を継続させることが可能な点もメリットの1つに挙げられる。

【メリット3】外部連携のしやすさで業務効率を飛躍的に高める

 モバイルPOSレジサービスの環境は、クラウド上で提供されオープンな仕組みで構築されるものが多い。それ故、会計をはじめ給与管理やメニューを注文する際に活用できるオーダーエントリーシステム、在庫管理などさまざまな外部サービスと連携させることで、業務の効率化に寄与できる。店舗での売上情報がそのまま人手を介さずに会計サービス上で仕訳処理できれば、月次の処理などがスピーディーに行えるはずだ。これはオープンなシステムならではのメリットといえる。

【メリット4】可搬性の高さが用途の幅を広げ、省スペース化に貢献

 固定で設置される既存のPOSシステムと違い、タブレット端末をベースにしたモバイルPOSレジであれば、自由にレイアウトが変更でき、店内で持ち歩いて利用することも可能だ。単なるPOSとしての機能だけでなく、店舗での業務端末としてさまざまな活用が期待できる。もちろん固定で設置せずとも活用できるため、スペースの効率化にも貢献する。ただし、周辺機器をBluetoothなどで常時接続することで起こるバッテリーの消耗などには十分注意したい。

【メリット5】新しい技術への追従

 既存のPOSシステムに新しい機能を追加する場合、ハードウェアも含めた検証作業が必要となり、簡単にバージョンアップするというわけにはいかないケースが一般的だ。しかし、モバイルPOSレジは、新たな機能が追加されればアプリの配信を行うことで簡単にバージョンアップできる。将来的に新たなサービスや技術が登場した際には、既存POSシステムよりも追従しやすいというメリットはあるだろう。

【デメリット1】周辺機器の個別対応による信頼性

 既存POSシステムは決済のためのカードリーダーやレシートプリンタ、ドロアなど会計処理に必要な機器が一体化しており、複雑な管理も必要ない。しかし、モバイルPOSレジはそれぞれ個別の製品を組み合わせる必要があり、管理も煩雑になりがちだ。個別製品の保管も含めた管理面では既存POSシステムの方が当然ながら優れている。

【デメリット2】Bluetoothならではの業務処理能力の限界

 大手スーパーマーケットなどの導入時に課題となりやすいのが、処理能力に関する課題だ。大量の商品をレジで処理する場合、短時間でスキャンを実施し情報を読み取りながら会計処理を行うことが求められる。この処理が遅いとレジに大量の人を停滞させてしまい、売上に大きく影響する。

 モバイルPOSレジの場合、周辺機器をBluetoothで接続するため、既存POSシステムのような高速読み取り、高速処理には不向きな面がある。WindowsタブレットなどUSBインタフェースによる有線接続が可能なタイプのサービスであればこの限りではない。

【デメリット3】堅牢性に欠ける

 POSでレジを担当する人が専任者であればいざしらず、調理なども担当しながらレジを兼任する場合、水や油でPOSレジが汚れてしまうこともあるだろう。そんな環境でタブレットを使い続ければ、いつかは故障する可能性も否定できない。

 堅牢性という観点では、水をかけても壊れないことをアピールする既存POSシステムに軍配が上がる。モバイルPOSレジの場合は、店舗に予備機を設置し、動作が安定しない場合はその場で取り換えるといった保守環境を整える必要がある。

 なお、タブレット端末を従来型のPOSシステムのよう形で提供するソリューションを展開しているベンダーもある。

タブレットPOSレジ 図8 タブレットPOSレジ(出典:エスキュービズム・テクノロジー)

【デメリット4】アプリについて回るセキュリティへの懸念

 モバイルPOSレジにかかわらず、タブレット端末でアプリを動作させる際に抱くセキュリティに対する懸念は当然ある。専用端末であれば脆弱(ぜいじゃく)性も発生しにくいが、オープン化されたタブレット端末であれば、他のアプリとの相性で動作が不安定になることも考えられる。

 店舗で働く従業員にアプリのインストールを制限する意味でも、MDMなどの仕組みは一緒に利用することも必要になる場面もある。ネットワークに常時つながっているレジという意味で、セキュリティに不安を抱く人は少なくない。

コラム:究極のセキュリティと勘違い、AppStoreを削除すると……

 モバイルPOSレジのセキュリティを高める目的のために、店舗スタッフが勝手にアプリをインストールできないようAppStoreを削除してしまうケースが実際にある。すると、そもそものモバイルPOSレジアプリのアップデートができず、脆弱性対応などがおろそかになってしまうことにもなりかねない。クローズにしておけば安全と考える人がいれば、それは間違いだ。iOSがセキュアに保たれているのは、アップデートが常に行われているからこそだということをしっかり認識しておきたい。

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