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「次世代CRM」最前線、顧客エンゲージメントを実現するには?IT導入完全ガイド(3/4 ページ)

» 2015年03月02日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

モバイル活用

 同様に特に注目されるのが、顧客が持つモバイルデバイスを利用した情報配信と情報収集機能だ。顧客行動の把握や個人の行動に即応した情報配信、さらにはO2O(Online to Office)マーケティングにも役立つ機能が備えられるようになった。

 スマートフォンや携帯電話に特化したメールやSNSによる店頭割引キャンペーンを効果的に行えば店舗への集客を増やすことが見込め、NFC機能つき機種なら決済時に割引を行うなど、さまざまな来店客へのサービスが考えられる。

 図7は、モバイルデバイスを利用して会員登録を誘い、顧客情報およびVOCの収集を行うとともに、店舗への来店を促進する手法の一例だ。

モバイルデバイスを利用した顧客情報やVOC収集、来店促進の例 図7 モバイルデバイスを利用した顧客情報やVOC収集、来店促進の例(出典:ライトポケット)

 また、スマートフォンにアプリを配布し、顧客の了承を得てGPSやiBeaconの機能を利用し、場所に合わせたサービスのレコメンド、店舗の近くにいる人に向けての店舗個別サービスの情報プッシュ配信なども行える。優良顧客の来店をいち早くキャッチして、顧客担当スタッフが応対するなど、多様な応用が考えられよう。

iBeaconやGPSを利用して来店を促すO2Oマーケティングの例 図8 iBeaconやGPSを利用して来店を促すO2Oマーケティングの例(出典:ライトポケット)

コラム:店舗近くで商品レコメンド配信、予約すれば待たずに購入可能

 米国のあるコーヒーショップでは、会員のスマートフォンのGPS情報をモニターしており、客が店舗の近くまで来ると「あなたの好きな◯◯が今なら◯%割引」といったメッセージを配信して予約と来店を誘い、予約すると、店舗に到着する前に飲み物などを用意しておくサービスを実施している。O2Oによる売上アップを狙った好例だ。

通話データの録音を効果的に分析

 コンタクトセンターに寄せられる電話の「生の声」からのVOC収集やモニタリングは、通話録音の分析機能の進化でこれまでにない効率化が進んでいる。オペレータ―の対応効率や品質の改善はCRMツールが追求してきているが、通話内容の分析となると、膨大な時間がかかるため、なおざりにされてきたケースが多いはず。特に月に1万コールを超えるようになると、人手では不可能に近い。しかしそのような規模であればこそ、統計的に意味のある傾向分析が可能になる。

 現在では通話録音を自動的にテキスト化し、コールリーズンごとに自動分類するカテゴリ分析やネガ/ポジ分析や声のトーンと文脈による感情の起伏の分析、潜在/顕在のキーワード増減を自動表示するトレンド分析、相関語句や根本原因まで掘り下げるマイニングまで可能な音声認識+分析機能を備えたツールが利用可能だ。

 図9に通話録音の中から特定の複数キーワードがある通話を検索し、その内容を分析する画面例を示す。ここでは、検索でヒットした通話がリスト表示され、選んだ通話の音声波形とともに文字テキスト欄に話者やキーワードテキストの属性をハイライトで示し、要点を押さえた再生ができる。

 通話の1〜2時間後にはテキスト化と文脈の解析、内容属性の分析が可能になるという。そのデータはテキスト分析などのソリューションとCRM機能に取り込み、他のさまざまなデータと統合的に管理可能だ(図10)。

通話録音のキーワード検索画面の例テキスト分析の主要指標ダッシュボード 図9 通話録音のキーワード検索画面の例、図10 テキスト分析の主要指標ダッシュボード(出典:ベリントシステムズジャパン)

 以上、次世代CRMツールの新機能の一端を紹介した。これまでよりもはるかに「個客」に寄り添うアプローチが可能な仕組みが備わっていることが分かる。CRMは顧客管理ではなく「顧客エンゲージメント」を実現するツールとして捉え直すべき時期に入った。

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