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地下街でも居場所が分かる「地磁気データ屋内測位」とは?5分で分かる最新キーワード解説(2/4 ページ)

» 2015年05月27日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

地磁気データ屋内測位の仕組みは?

 地磁気データ屋内測位の際立った特徴は、上述の測位技術と違って発信装置がいらないことだ。利用するのは地磁気なので、いわば地球そのものが発信装置ともいえるが、実際には地磁気の位置によるわずかな違いを利用する。実は地磁気は鉄筋などの金属の存在によって、磁気の強さと方向が、位置ごとに微妙に違うのだ。

 ある地点での地磁気の状態を記録し、次の地点に移動してまた記録するという操作を繰り返すと、屋内の地磁気特性のマップができる。それをデータベースに取り込んでおき、スマートフォンなどが搭載している地磁気センサー(「コンパス」アプリなどで利用しているもの)が捉えた地磁気情報とマッチングを行うと、磁気特性に最も近い場所(絶対位置)が分かるという仕組みだ。

 厳密にいえば離れていても同じ磁気特性の地点もあるため、測位には移動による連続的な値変化を利用する。

位置ごとの地磁気特性をマッピング 図2 位置ごとの地磁気特性をマッピング。円の色:x,y,z各軸の磁気、円の大きさ:磁気の大きさ、矢印の向き:磁気の方向(出典:NRI)

 この仕組みなら、地磁気センサー搭載端末は何でも利用できることになり、特別な測位機器も必要ない。上述の各種技術のうち、測定用の発信機も端末側の測位機器も不要なのはPDRだけだ。しかし、PDRはある地点から次の地点までの相対位置を図るものなので役割が違う。

 地磁気データ屋内測位技術の場合は、最初に地磁気データを測定して、マップ情報にひも付けて管理する手間がかかるが、それさえできてしまえば機器メンテナンスの必要もなく、運用コストは他よりも低くなり、屋内ナビゲーションシステム実現について技術的にも難しいところはない。

 なお、他の技術で必要となる発信装置の設置にはその区画の所有者の同意が必要だが、地下街などでは所有権が複雑で、エリア全体をカバーできるまで設置を進めるのに時間がかかること課題だ。その労力がいらないところも地磁気データ屋内測位技術のポイントだ。

 測位情報は管理サーバに蓄積され、移動や滞留の状況把握(動線把握など)が可能であり、企業のマーケティングに資する情報が得られる一方、アプリを利用するユーザーは屋内のナビゲーションに加え、O2Oマーケティングによるクーポンや割引、情報配信などのサービスを利用できるため、顧客満足度向上や店舗への集客に役立てることも期待できる。

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