では10Pbps伝送を実現させる要素技術について簡単に紹介していこう。
まず問題なのは、髪の毛よりも少し太いくらいの光ファイバーの中にみっちりとコアを詰め込むと、どうしてもコアから漏れる光が隣のコアに影響を及ぼす現象(クロストーク/混信)が起きてしまい、伝送速度が上がらないことだ。
これを抑えるには、コア間の距離をできるだけ離せるようファイバーの径を大きくすればよいのだが、太くすればするほど折れやすくなってしまうし、せっかくのコンパクト性をなくしてしまっては意味がない。配線の都合を考えると、深い角度で曲げても大丈夫な柔軟性と強度を保つ必要がある。その上で最大のクロストーク抑制ができる設計と材質の選択がいる。
NICTではその研究を7コアや19コアシングルモード光ファイバー開発当時からずっと続けており、その成果が36コアマルチモード光ファイバーに生かされた。
19コアシングルモード光ファイバーと36コアマルチモード光ファイバーの断面を図2に示す。36コアの方は、19コアファイバーの外周にさらにコアを配置した格好だが、必ずしも同心円状に整然と並んでいるわけではない(実際には37芯あるが、その1つはマーカーとして使用され、情報伝送には関わらない)。
背反する種々の要件の最適バランスをとりながら、できるだけ多くのコアを収納した設計がこの構造というわけだ。しかしそれだけではない。NICTではコアそのものの屈折率をわずかに変えて、3タイプのコアを製作した。屈折率が違うコア同士の間では、クロストークは起こりにくくなる。同一のタイプのコアが隣り合わないようにうまく配置することで、クロストークの発生を抑えたことが、36コアまでの大幅なコア数追加を可能にした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。