クラウドやモバイルなど第3のプラットフォーム時代に見る、ユーザー部門のIT予算の動きとは。アナリストが徹底解説する。
木村聡宏(Akihiro Kimura):IDC Japan ITサービス リサーチマネージャー
SI、ソフトウェア開発、ITコンサルティングなどの国内ITサービス市場およびビジネスコンサルティング、BPOなどの国内ビジネスサービス市場を担当。市場全体の動向や主要ベンダーのサービスセグメント別、産業分野別の競争環境の調査、分析、コンサルティングを行う。
メインフレーム(第1のプラットフォーム)の時代からクライアントサーバ(第2のプラットフォーム)の時代、そして現在のクラウドやモバイル、ソーシャル、ビッグデータ/アナリティクス技術が花開く第3のプラットフォームの時代へとプラットフォームが進化する中で、顕著になってきたのがユーザー部門のIT投資の増加傾向だ。
技術者の慢性的不足と基幹系システムの運用管理負荷が深刻化する中で、それは一面ではIT部門のコミットなしで業務効率を上げる原動力となる一方、コーポレートガバナンスが及ばないシャドーITをまん延させ、セキュリティやIT統制上の問題を引き起こしかねない。今回は企業IT投資に起きている変化の実態を紹介し、これからのIT部門の役割がどうあるべきかを考えていく。
IDCが2015年3月に実施した、従業員300人以上の中堅以上の国内企業対象のIT購買行動変化に関する調査(有効回答は国内200社のIT部門、400社のユーザー部門)によると、IT部門では「ユーザー部門が管理するIT予算(部門IT予算)がある」という回答が45.5%にのぼった(図1)。
図に見る通り、明らかにユーザー部門のIT投資が一般化しようとしていることが分かる。ユーザー部門では37.5%が「分からない」と回答しているが、ユーザー部門では各部門が企業内のIT投資の状況を管理する義務はない一方、IT部門は自らの責任範囲外のIT投資については、ユーザー部門に委ねている状態とも考えられるため、45.5%という数字はより実態に近いものと考えてよいだろう。
なお、IT部門で20%が「ユーザー部門のIT予算があるかないか分からない」と回答しているのには要注意だ。これはユーザー部門からIT投資をしているかいないかについての情報が出てこない、あるいは企業全体のIT投資規模について把握していないということだろう。ここにはいわゆる「シャドーIT」が存在している可能性がある。コーポレートガバナンス上は大きな問題だ。これについては後述する。
ともあれ、かつてIT予算はIT部門が一括して管理するのが常識だったことからすると、現在ではIT投資のトレンドの潮目ははっきりと変わってきているようだ。
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