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第3のプラットフォームへの変遷期に見るユーザー部門のIT予算すご腕アナリスト市場予測(5/5 ページ)

» 2015年08月20日 10時00分 公開
[木村聡宏IDC Japan]
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IT部門とユーザー部門とのコラボレーションを進めることが大事

 こうした課題を解消し、ユーザー部門によるIT投資のメリットを生かしながら企業としてのガバナンスを効かせていくためには、やはりIT部門が主導して、全体最適なITアーキテクチャを設計し、それに即したIT導入や利用を全社の各部門が進めていく必要があるだろう。

 少なくともIT部門がユーザー部門のIT設備状況や利用状況をきちんと把握し、問題があれば口を出して是正できる仕組みがなければならない。その1つの方法として、ユーザー部門のIT投資に関して互いに相談することが挙げられよう。

 ただし、口出しがユーザー部門が進める業務効率化や新ビジネス展開の流れを逆行させるようなものであってはならない。ユーザー部門が求めるのは売上の拡大などのビジネス目的に即したITだ。その方向性を認め、それに拍車を掛けながらガバナンスを効かせていくことがカギになる。

 それには、IT部門がこれまでのように定型業務の安定した運用だけに注力しているだけではもちろん足りない。IT部門がビジネスを理解し、売り上げを上げるためのIT活用を計画できるように方向性をシフトしていく必要がある。

 加えて肝心なのはユーザー部門とのコラボレーションだ。実際にビジネス目的に即したITを構築するには、業務をよく知るユーザー部門の参加がなければ難しい。IT部門もリーダーシップを発揮するが、できればIT部門とユーザー部門の中立的な立場の業務系の企画部門の人などに間に立ってもらい、ユーザー部門との橋渡しをしてもらうような形でコラボレーションを図る体制を作るとよいだろう。

 もしそのような人が得られない場合は、IT部門とユーザー部門との間での交流人事を行う手もある。実際に、システム統合が社運を左右する銀行などにおいては、業務部門とIT部門の交流人事は行われており、一定の期間IT部門で修行することが1つのキャリアパスになっている。ITが競争力のカギになっている現在、他業種の企業もこれは見習うべきポイントではないだろうか。

 以上、今回はユーザー部門のIT投資に関する調査データをベースに、企業ITの実情とIT部門の今後の役割について考えてみた。この調査に当たり、ユーザー部門のIT投資について国内企業数社の実態も取材した。

 ある外資系製薬会社では、海外製ERPをユーザー部門が導入し、卸売会社とのB to Bシステムを構築、運用している。この会社ではIT部門は統括業務だけを担当し、わずか4〜5人のスタッフで間に合うようにしている。IT系の仕事の多くはユーザー部門が担っているとのことだ。

 また、IT部門はインフラなどの共通基盤に特化し、それ以外はユーザー部門が担当している総合商社、IT部門を持たずに経営企画部門がITについても兼務する建設会社などが出てきている。といっても、多くの企業にとってIT部門が不要になるとは考えられない。上述のようにユーザー部門とのコラボレーションを進めながら、IT部門のガバナンスが効いたIT投資、IT活用を図ってシャドーITを排斥しながら第3のプラットフォーム時代に対応していくことが大切だ。

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