高速なスループットを実現するためには、チャネルを束ねることが必要になってくるが、利用できるチャネルが少なくなると他のAPとのチャネル干渉が起こり、せっかく複数のAPがあっても全体のスループットが上がらないことも。そこで、クライアントへの干渉を防ぐための機能が求められている。その中核となるのがビームフォーミング機能だ。
IEEE802.11ac標準では、トランスミット(送信)ビームフォーミングと呼ばれる技術が用いられている。これは、事前にサウンディングパケットをAPからクライアントに送り、クライアントの状態をAPにフィードバックすることで可能になる。
具体的には、送りたいクライアントに対しては位相差がゼロとなるよう2つの電波を合成することで強いシグナルを生み出す。逆に、送りたくないクライアントに対しては、180度の位相差を合成し互いを打ち消すことで干渉を防ぐことが可能だ。これはノイズキャンセリングと同じ考え方になる。
ベンダーによっては、APに設置されているスマートアンテナ表面の電力を制御し、クライアントに向けて最適なアンテナパターンを作り出す、つまり電波の方向をダイナミックに変えることができるものがある(図4)。
また、電波の飛ぶ方向を物理的に制限、調整する外部アンテナを設置し、セル設計を容易にする製品もある。これらの技術はクライアント側からのフィードバックは不要なため、すぐにでも実装することが可能となる。同じビームフォーミングと言っても技術的には異なるものになるため、注意が必要だ。
また、電波強度の強弱によって通信を受ける閾値を設け、弱い電波しか受信できないクライアントからの通信を受け取らず、感度の良いAPへローミングを促す機能を持った製品もある。
チャネルの使用率を確認し、空いているチャネルを自動的に探し出す機能。それぞれのチャネルにどの程度のクライアントが接続しているのかを確認するものや、チャネルごとのスループットを判断し、どれが一番高速に通信できるかを判断するものなど、幾つかの方法が存在する。
また、チャネルの幅を自動的に判断し、80MHz幅で通信できないときは自動的に40MHzや20MHz幅を利用し、利用できるようになったタイミングで80MHz幅に戻すといった自動調整を行う機能を実装した製品もある。
他にも、気象レーダーなどの電波を感知して干渉しないようにするDFS(Dynamic Frequency Selection)機能が無線LANには備わっており、80MHz幅で利用している際に検知するとチャネルが限定されてしまい、安定した通信が難しい場合もある。その場合、帯域幅を自動的に調整し、なるべく多くのチャネルが利用できるように自動調整する機能を持った製品もある。
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