ITインフラとして欠かせない存在となった無線LAN。最近では「802.11ac Wave2」製品が登場するなど、知っておくべき情報が多い。Wave2が既存環境とどう違うのか。
多くの企業においてネットワークインフラとして利用されている無線LAN。既に有線ケーブルのRJ45インタフェースを持たないノートPCやタブレットなど、無線LANを前提にしたデバイスも多く、もはや無線LANはITインフラとして欠かせない存在といっても過言ではない。今回は、そんな無線LANの最新動向について紹介していきながら、新たに登場した802.11ac Wave2の話題についても触れていきたい。
IEEE802.11の規格が1997年に登場して以来さまざまな規格が登場してきたが、現在主流となってきているのがIEEE802.11acと呼ばれる規格だ。最近は汎用(はんよう)型の新たなチップが実装され始めており、以前に比べて購入しやすい価格帯となっている。
これによって、一つ前の規格となるIEEE802.11nの時代は終わり、企業が調達する無線LAN規格としてIEEE802.11acが要求仕様に明記されるケースが一般的だ。ただし、現状は802.11ac Wave1と呼ばれるものが一般的で、802.11ac Wave1では最大スループットが1.3Gbps、次世代規格の802.11ac Wave2では現状は最大1.7Gbpsとなっており、今後はハイエンド製品として最大3.5Gbpsのチップを積んだものがリリース予定となっている。
なお、無線LANの国際業界団体「Wi-Fi Alliance」のWi-Fi認定プログラム「Wi-Fi CERTIFIED ac」に合格したものが第1世代「Wave1」と呼ばれており、IEEE802委員会によって標準化されたものとは仕様が異なる。それ故、これまでのWave1や2015年になって新たに登場している第2世代「Wave 2」を表現する場合は、IEEEという表記は行わない。
現行モデルの802.11ac Wave1と2015年になって市場に投入され始めた802.11ac Wave2の違いは、主にチャネルボンディング可能な帯域幅の拡大とMU-MIMO(Multi User-Multi input Multi Output)への対応だろう。
チャネルボンディングとは、周波数を複数束ねることで1度に大容量データが送信できる技術で、これまでは80MHzだったものが、802.11ac Wave2からは160MHzおよび80+80MHz幅に拡張されている。
MU-MIMOは複数のユーザーへ同時に送信する技術で、802.11ac Wave2で新たに実装された技術だ。以前のIEEE802.11nや802.11ac Wave1ではSU-MIMO(Single User-MIMO)であり、APと端末は1対1の関係だった。MU-MIMOになることで、端末のストリーム数によって最大4台と同時に通信が可能になっている。
ただし、現状ではクライアント側で複数ストリームに対応している製品はそろっておらず、MU-MIMOを最大限活用できる状況にはない。ちなみに、IEEE802.11ac標準規格では、アンテナは最大8台まで拡張できるものの、同時接続は最大4台までとなっている。
802.11ac Wave2では、最大160MHz幅にボンディングすることが理論上可能だが、その場合使えるチャネルは2つしかなく、通信エリアとなるセルの設計が非常に難しい。干渉を防いでチャネル数を効果的に利用するためには、結果として20〜40MHz幅で運用せざるを得ないのが現状だ。
そこで現在検討されているのが、割り当てられている5GHzの拡大だ。現状は5GHzのW52、W53、W56が利用可能となっているが、屋外利用が不可とされているW52とW53の制限の緩和や、W54とW58といった上位周波数の割当が検討されている。東京オリンピックを見据えた上で、より利便性の高い使い方ができるよう総務省でも検討が進められていくことだろう。
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