具体的なストレスチェックの方法は厚生労働省の「実施マニュアル」に例示されている。ただしストレスチェックを行うための企業体制作りについては具体的に法制化されているわけではなく、法令に準じた対応体制を構築する必要がある。毎年実施するためには、次のようなプロセスが必要になろう。
制度に基づいた実施ルールを作り、従業員に分かりやすいように書面化し、業務プロセスを定義する。
受検しやすい方法や設問を用意し、受検を促進する仕組みを作る。国の標準としての設問を取捨選択しても良いし、独自に追加しても良いが、目的に沿って適切な実施を図る必要がある。
判定は実施者が行い、面接指導対象者を決定する。その基準は国の評価基準を参考に各企業が定める。これには産業医などの専門家との契約が必要であり、評価基準や該当者の割合を専門知識をベースに決めることになる。なお判定の結果は、検査を実施した医師、保健師などから直接本人に通知されることになっており、本人の同意なく会社に提供することは禁止されている。
高ストレスと判定された対象者に結果を通知し、結果開示の同意と面接指導を希望するか否かを尋ね、同意や希望する場合は面接指導を実施する。その結果医師などの意見を聞いて就業上の措置を行う。法令上は申し出窓口を知らせるだけで良いが、面接申し込みを奨励することがマニュアルでは推奨されている。
個人が特定されないよう、10人以上の単位でチェック結果を分析(集団分析)し、職場環境の改善につなげる努力義務が課されている。実施結果をレーダーチャートなどのグラフも利用しながら集計し、報告書を作成する必要がある。
また、ストレスチェック実施時期、対象人数、受検人数、面接指導実施人数、集団分析の実施有無については年1回、労働基準監督署に報告する義務もある。
厚生労働省ではこの流れを図4のように示している。上表の(1)が「実施前」、(2)(3)が「ストレスチェック」、(4)が「面接指導」、(5)が「集団分析」と「全体評価」に対応する。
なお、ストレスチェックはメンタル不調の未然予防を行う「一次予防」にすぎず、本来はメンタル不調を早期に発見して適切な対応を取る「二次予防」、不調となった労働者の職場復帰などを支援する「三次予防」までを考えておく必要がある。
職場環境の問題発見や改善につなげなければリスク管理として十分とはいえない。ストレスチェックを実施すれば良しとするのではなく、あくまでも最低ラインの対応であることを意識しておく必要があるだろう。
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