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IoTの基礎知識、4年後には16兆円市場になる魅力とは何かIT導入完全ガイド(4/4 ページ)

» 2015年11月24日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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5つのレイヤーの水平展開と垂直統合

 次にIoTの要素となる技術について見てみよう。調査会社のIDC Japanでは、IoTを5つのレイヤーに整理している。これに沿って概要を紹介する。

【レイヤー1】IoTデバイス(エッジデバイス)

 最下層に当たるレイヤーは「IoTデバイス」である。センサーなどを組み込んで情報を取得できる機器のことで、国内で大規模に導入が進んでいるのはスマートメーター。電力使用データ取得と通信機能を持つこのデバイスは2015年末には1000万台以上が導入され、ゆくゆくは全世帯5000万にまで拡大する。他に普及が進むと見込まれているのは、次のようなデバイスだ(参考:経済産業省「IoT時代に対応したデータ経営2.0の促進のための論点について」)。

製造、販売分野

在庫管理用スマートタグ、建機用エンジンなどのモニターシステム、プログラムなどのコントロールシステム、製造現場用スマートロボットなど

モビリティ分野

オーディオ、テレマティクスなど、シートベルト、エアバッグなど、先進運転支援システム(ADAS)、後付け型カーナビ、オーディオ、電気自動車、ハイブリッドカーバッテリーシステムなど

ヘルスケア分野

スマートウォッチ、センサー付き衣類、運動時の身体ログ用時計、運動ログなど管理装置、高齢者や要介護者の生活補助装置など

エネルギー分野

電気用スマートメーター、スマート電源ソケット、アダプター、充電メーター、ガス用スマートメーター、サーモスタット、発電所におけるセンサー、各種ネットワークのコントロールパネルなど

政府部門

天候、公害、騒音センサー、道路状況管理センサー、橋や道路などの耐久性モニター、駐車メーター、自治体設備の管理センサーなど

【レイヤー2】通信モジュール、通信回線、通信機器

 次のレイヤーは、キャリアや通信機器ベンダーが提供する通信モジュール、通信回線、ルーター、スイッチなどの「通信関連リソース」だ。このレイヤーには既存や新規の標準が幾つかある。

 例えば省電力無線ネットワークの6LoWPAN、省電力センサーのためのZigbee、IP500、日本発のものでは省電力無線技術のWi-SUN、スマートホームのためのECHONET、スマートフォンと外部デバイスの連携を担うGotAPIなどだ。

 また通信を主とした標準化プロジェクトには、LTEやLTE Advancedを利用する大規模無線ネットワークの3GPP、M2M通信の規格化を目指すoneM2M、新プロトコル「Thread」の導入促進を目指すThread Group、産業・自動車向けイーサネット規格のEthernet AVBを拡張する「TSN(Time-Sensitive Networking)」の普及を目指すAVnu Allianceなどがある。

【レイヤー3】IoTプラットフォームソフトウェア

 次のレイヤーは、GE社の「Predix」のような、IoTプラットフォームとなるソフトウェアだ。通信機器やデバイスの保守や遠隔ファームウェアアップデート、アプリケーション開発支援やAPI提供などを担当する。このレイヤーで競争優位に立つことが、IoTビジネスで覇権を握ることにつながると考えられており、企業間だけでなく国家間でも争われているのが現状だ。

 他には、IoT Foundation(IBM)、ThingWorx/Axeda(PTC)、docomo M2Mプラットフォーム(NTTドコモ)、GDSP(vodafone)などがある。富士通も2015年8月からFujitsu Cloud Service IoT Platformの提供を開始し、既存システムと革新システムとの連携を実現する同社の「デジタルビジネスプラットフォーム(MetaArc)」の一部とした。

【レイヤー4】アナリティクスソフトウェア

 その上部にあるのが、分析系のソフトウェアだ。高速な処理が可能なビッグデータ解析ソフトウェアが中心的な役割を果たす。IBM、SAP、AWS、マイクロソフト、Google、Salesforce.com、オラクルなどの製品が使われる。

 なお、レイヤー3、4のソフトウェアはIoTインフラとしてのサーバやストレージ、アプライアンスの上で稼働することになるが、ハードとソフトをひとまとめにしたPaaSとして提供されることもある。今後はPaaS間で競争が激化すると思われる。

【レイヤー5】垂直市場ソリューション、専門サービス

 一番上のレイヤーは、下位レイヤーの全てを垂直統合するソリューションおよびSIサービスになる。GEやPTC、シーメンス、ボルボなど、国内では大手建設・機械ベンダー、自動車ベンダー、電力会社などがこの領域のプレイヤーになっている。しかし特定の1社だけで全てのレイヤーの製品やサービスを取りそろえることはできておらず、不足する部分はパートナーとの提携で補っているのが現状だ。

 また取り組みの仕方としては汎用(はんよう)的なIoTプラットフォームを中心にして上下のレイヤーの技術を取り込んでいく形をとる場合(図3)と、特定業種や目的に特化して一気通貫のソリューションにする場合とがある。

IoTプラットフォーム 図3 IoTプラットフォームを中心にしたソリューションのイメージ(出典:富士通)
IoTソリューション 図4 特定業種や目的に沿ったIoTソリューションメニューの例(出典:NEC)

 これら5つのレイヤーと、IoTインフラの全体にわたって、データの暗号化送受信や保管、マルウェア感染対策などが非常に重要になる。セキュリティベンダーがこの部分を担うことが多い。

 以上、簡単にIoTの全体像を紹介した。巨大企業が中心となってIoTの標準化と垂直統合を図っている一方で、IT企業の多くは各レイヤーの水平展開を図っている。ビジネス上でどのような価値を生むのかをよく検討し、競争力のあるアプリケーションやサービスを他社よりも先に見いだすことが、近未来の企業価値を決めるといわれている。

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