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デジタル時代にセキュリティ事業強化で挑むシスコシステムズKeyConductors

シスコシステムズがInterop Tokyoで語ったのは、ネットワーク、サーバ事業とは異なる分野への市場展開。シスコは今後、どのように変わっていくのか?

» 2016年06月22日 10時00分 公開
[谷崎朋子キーマンズネット]

 シスコシステムズは、2015年6月に新戦略「Security Everywhere」を発表した。モバイルやIoTデバイス、エンドポイント、ネットワーク、データセンター、クラウドなど、インターネットにつながるありとあらゆるものに対して包括的なセキュリティ保護を提供する。

企業買収でセキュリティ事業をさらに強化

 「実は、シスコシステムズはセキュリティ分野で年間30億ドルの売り上げがあり、社内にはセキュリティに従事する専任者が4500人在籍している。22年間、同分野に取り組んできた世界最大のセキュリティ企業でもある。(会場の様子から)この事実を知らない方が多いみたいなので、マーケティング不足のようだ」。

 Interop Tokyo 2016の講演「デジタル時代のサイバーセキュリティ対策」で、シスコシステムズ、シニアバイスプレジデント、チーフセキュリティ&トラストオフィサー、ジョン・N・スチュアート氏は苦笑いする。

ジョン・N・スチュアート氏 シスコシステムズ シニアバイスプレジデン チーフセキュリティ&トラストオフィサー ジョン・N・スチュアート氏

 実際、同社は2013年よりセキュリティ企業の買収を積極的に展開。2013年には、IPSやウイルス対策製品のSourceFireを買収、シスコのマルウェア防御機能「Cisco Advanced Malware Protecion(AMP)」に「AMP Everywhere」としてシスコ製品に統合された。2014年は、サンドボックス製品を提供するThreatGridとセキュリティアドバイザリサービスのNeohapsisを買収。前者は、AMPの機能として統合されている。

 そして2015年には、ネットワークアセスメントやフォレンジック、トレーニング、セキュリティ体制に対する監査などのコンサルティングサービスを提供するPortcullis Computer Security、ネットワーク内のトラフィックパターンを可視化して解析し保護を提供するLancope、インターネットドメインからの攻撃を遮断するなどDNSセキュリティ対策サービスを提供するOpenDNSを買収。OpenDNSは、リカーシブDNSサービス「Cisco OpenDNS Umbrella」および「Cisco OpenDNS Investigate」として製品ラインアップに加わった。

ジョン・N・スチュアート氏 ジョン・N・スチュアート氏

 わずか3年でセキュリティ企業の買収に約40億ドルを投資したほか、6月14日には奨学金制度「Global Cybersecurity Scholarship Program」を発表。セキュリティ人材不足の課題に取り組むために、今後2年間で1000万ドルの予算を人材育成プログラムに投資するとしている。

 次世代ファイアウォール、マルウェア対策、ネットワーク分析、メール、Webなど包括的なポートフォリオを拡充しながら、人材育成にも携わるシスコシステムズ。セキュリティ事業への本気度が伺える。

セキュリティはイノベーションに必要? CFOの意識変化に注目

 注力する背景の1つに、デジタル化の到来と経営層のセキュリティ対策への認識の変化が挙げられる。

 特にデジタル化時代を象徴する要素の1つに、IoTが挙げられるが、「既にグローバルで547億ものセンサーが出荷されており、その一部はインターネットに接続されている可能性が高い。デバイスも、毎週約3000万台の新規デバイスがネットに接続され、デバイスやセンサーが生成するデータは人間が生成するデータの約300倍といわれている」。

 そう述べたスチュアート氏は、こうした通信やデータを管理し、攻撃を防ぐ対策を徹底しなければ、どんなに魅力的で画期的なイノベーションであっても、誰も使いたがらないだろうと指摘する。「コンピュータが関わっていることに恐怖を覚えるような世界ではなく、コンピュータによるサポートが安心を与える世界。それを目指さなければならない」。

 そうした認識は、同社が最高財務責任者(CFO)などに実施したアンケート調査にも表れているという。調査によると、デジタル化を成功させるうえでサイバーセキュリティ対策は重要かという質問に対し、6割以上が「非常に重要」と回答したという。また、3分の1はサイバーセキュリティ対策が成長の加速に必要不可欠な要素とし、半数近くが競合との差別化要素として認識していると回答。「サイバーセキュリティのリスクや脅威はイノベーションを妨げるかという質問では、71%が「はい」と答えた。今やセキュリティはコストセンターではなく成長やイノベーションを促進する戦略と捉える企業が増えている」。

デジタル時代のイノベーションはサイバーセキュリティ対策の欠如で阻害される

 デジタル時代を乗り切るために、企業はセキュリティ対策に対してどう推進すべきなのだろうか。スチュアート氏は、3つのポイントを挙げる。

 1つは、セキュリティ戦略をビジネスの成長・発展や事業目標と関連付けることだ。国の経済成長をも支える必須要件として、国家として取り組み、文化のレベルまで浸透させるべきものとスチュアート氏は強調する。

 2つ目は、セキュリティ対策の効果を見極めることだ。問題が発生してから対処するコストの方が、事前対策にかかるコストよりもはるかに大きい。だからといって、優れた製品を導入すればよいというわけでもない。攻撃を検知するまでの時間、攻撃の可視化、脆弱(ぜいじゃく)性の対処にかかる時間など、さまざまな要件を検証して効果のあるソリューションを採用してほしいと同氏は述べる。

 そして3つ目は、仲間を作ることだ。「強大なサイバー上の脅威と戦うには、仲間が必要だ。情報を共有し、互いの成長を高めあう関係を築くことが、このデジタル時代に欠かせない」。そうした取り組みを促進するために、今後もシスコシステムズはサポートしていきたいとスチュアート氏は述べ、講演を終えた。

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