企業におけるモバイル活用は業務改善につながる多くの可能性を持つ一方、開発成功例は多くない。成否を分けるポイントはどこにあるのか?
モバイルアプリはビジネス改善、革新につながる多くの可能性を提示する一方で、その開発プロジェクトの成功例は国内では4分の1にすぎないともいわれる。成否を分けるポイントは何だろうか。今回はMADPを活用したアプリ開発方法のステップを詳しく見ていきながら、最適なMADP導入のための視点について考える。
IBMが世界9カ国のモバイルアプリ開発エンジニア約600人に対して行った調査では、開発プロジェクトの成功例は3分の1、特に国内に限れば4分の1にすぎないという。実に約75%がモバイルアプリ開発に失敗しているということだ。コスト超過がなく、十分な品質で、適時にリリースできた成功ケースは思いのほか少ないようだ。
何がモバイルアプリ開発の成否を分けるのだろうか。調査結果を分析した日本IBMの専門家は、成功したプロジェクトに共通した条件には次の4つがあるという(図1)。
成功プロジェクトに共通した4つの条件
この分析では、これまでMADP利用のポイントと思われてきたクロスプラットフォーム開発、ハイブリッドアプリ化、開発言語などは、モバイルアプリ開発の成否を大きく分ける要因にはなっていない。これを踏まえつつ、あらためてMADPの仕組みを整理する。
MADPはモバイルアプリ開発を効率化するためのフレームワークや統合プラットフォームの総称だ(図2)。かつてはMEAPと呼ばれていたが、現実のツール機能は「E」が意味する「エンタープライズ」領域限定ではないため、現在ではもっと一般化したMADPという用語が使われることが多くなった(MEAPをキーワードとして提唱したガートナー社自身が現在はMADPを提唱している)。
青い外枠内がMADPのカバー領域で、その中のオレンジ枠の左側はフロントエンド(端末側)開発の要素を示している。この部分の中核は、1つのコーディングを各OS(iOS/Android/Windowsが主)それぞれに対応するアプリに加工し、デバイス機能であるカメラやGPSなどの制御の違いも吸収する機能だ。この機能はMADPベンダーが独自に開発している場合もあれば、オープンソースのフレームワーク(Cordova)を組み込んでいる場合もある(図3)。各OSネイティブな開発SDKもここに含まれる。これにUI部品(Ionicなどオープンソース製品を含め各種フレームワークが備えている)や、テスト支援機能などを加えてフロントエンド開発領域をカバーする。
Kony
MobileFirst Platform Foundation
従来MADPが注目されてきたのは、このフロントエンド開発領域での顕著なメリットだ。現在の製品の多くは図1のオレンジ枠右側のサーバ側開発機能(バックエンド開発領域)に関わる機能や、枠外の自社(既存)システムや外部クラウドシステムと接続するAPI(標準または個別)を備えるようになった。この部分はmBaaSとして独立したクラウドサービスが、MADPベンダー以外からも提供されている。MADPツール側でどれだけバックエンド機能を提供・統合しているかにはベンダーごとに違いがある。
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