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IoTを支える10のテクノロジーとは? ユースケースと支出の動向すご腕アナリスト市場予測(3/4 ページ)

» 2016年08月17日 10時00分 公開
[鳥巣悠太IDC Japan]

(3)公共、インフラ、金融セクターのIoTユースケース

 公共、インフラ、金融セクターで注目されるのは、公共インフラ管理と公共安全への支出である。公共インフラ管理の領域では、老朽化が進む橋梁やトンネルなどに対する安全検査へのIoT活用が進みつつある。手作業による点検では老朽化スピードに追い付けないため、ドローンや自動化機械による打音検査など保守関連作業の合理化が将来的に見込まれる。

 また公共安全では、東京オリンピック・パラリンピックに備えたさまざまな保安対策にIoTが利用される。中でも街中の監視カメラと画像分析による安全確保、テロ対策に大きな支出が行われるだろう。

 さらに、自動車や電車などの運行に関わる公共交通情報システムも、渋滞情報やパーキングの空き情報や位置情報などと統合し、その情報収集、分析、サイネージや車両への情報配信が現在よりも一層高度になると見込まれる。そのベースになるのはIoTだ。

 他にも、スマートグリッドへの電力会社による支出は当然ながら伸びていく(年間成長率118%)。現在はやっと個人宅へのスマートメーターの設置が始まったところだが、これから数千万の世帯に次々に設置される。同時にスマートメーターの計測データをベースにした新サービスが生まれると考えられる。

 例えば、在宅状況を電力使用状況から判断し、物品配達の時間帯をスケジューリングすることや、医療機関や福祉機関による在宅の高齢者や病人の見守りに活用することも考えられる。こうした、スマートグリッドのデータを活用するビジネスモデルにも当然ITリソースが投入されることになる。

ユースケースの例 表3 ユースケースの例(出典:IDC Japan)

(4)個人消費者、クロスインダストリーセクターのIoTユースケース

 このセクターで支出金額として大きいのは、産業分野を問わずに必要となる「クロスインダストリー」の領域だ。現状ではその一番大きなニーズはビルのエネルギー管理だろう。照明や空調を効率的に使いエネルギーコストを削減するBEMS(Building Energy Management System)や、エレベーター、エスカレーターの遠隔管理に多くのIoT支出が行われている。2020年にはこの領域への支出は倍以上に膨れ上がるだろう。

 しかし、今後は個人消費者に向けたB2B2Cサービスや製品が、ITベンダーとメーカーやサービスプロバイダーのパートナリングによって急拡大することが見込まれる。ホームセキュリティ分野ではIoTがより品質の高いソリューション提供に生かされるようになっていく。スマート家電はこれからの普及を目指して家電メーカーが注力していく。それを支えるのはITベンダーだ。特に飛躍が期待されるのはこの領域である。

ユースケースの例 表4 ユースケースの例(出典:IDC Japan)

 以上、主な産業分野別にユースケースを紹介したが、この他にも卸売、専門サービス、個人向けサービス、メディア、教育、証券、その他金融サービスなどIoT活用が進むと見込まれる分野がある。また上に紹介したユースケースはあくまで一例であり、これ以外のユースケースも数多くあり、また今後新しい用途がどんどん追加されていくに違いない。

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