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IoTを支える10のテクノロジーとは? ユースケースと支出の動向すご腕アナリスト市場予測(4/4 ページ)

» 2016年08月17日 10時00分 公開
[鳥巣悠太IDC Japan]
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IoT活用のポイントは何か

 こうしたユースケースを支えるのがIoTテクノロジーだ。下のレイヤーから順に、次のような10種のテクノロジーに分類することができよう。

  • センサー、モジュール
  • ストレージ
  • サーバ
  • セキュリティハードウェア、その他ハードウェア
  • コネクティビティ
  • IoTクラウドプラットフォーム
  • アプリケーションソフトウェア、セキュリティソフトウェア
  • アナリティクスソフトウェア
  • 導入サービス
  • 運用サービス

 これらのテクノロジーを一覧してお分かりの通り、全てを1社で賄えるベンダーはない。つまりIoTでのビジネス発展を考える企業は複数のベンダーの製品やサービスを利用する必要に迫られる。そこでIoTの標準化動向が気になる読者も多いだろう。IoTが将来的にグローバルに普及する上での超えなければならないハードルの一つがIoT技術の標準化やオープン化であるとみられているが、昨今ではそうした技術の標準化やオープン化に向け、ポジティブなトレンドが見え始めている。

 まず、ドイツが政府主導で進めるIndustrie 4.0と、米国が大手ベンダー主導で進めるIIC(Industrial Internet Consortium)という2者の動きに注目が集まる。前者はドイツの産官学における多くの組織が協調し合うことによって次世代のモノづくりの形を模索する技術施策を指しており、後者はIoTの技術標準化団体ではないものの、他の標準化団体との連携により、IoTに関連する通信方式やデータ形式などの標準規格の策定に深く関わる団体である。昨今では双方が推進するIoTのリファレンスモデルを連携させる動きが見え始めており、製造業を中心としたあらゆる産業のIoTの利用を促進していくと見込まれる。

 次に、IoTのデバイスコネクティビティ技術の標準化を推進する団体にも大きな動きが見え始めている。具体的にはGoogle傘下のNestが主導するThread Groupと、インテルやクアルコムといった半導体ベンダーが主導するOCF(Open Connectivity Foundation)が、相互運用性を高めていくことを発表している。これにより例えば家の中のスマート家電の利用などが今後急速に広がるとみられる。

 また国内に目を向けた際にも大きな変化がみられる。例えば、トヨタ自動車では工場内における産業機械のコネクティビティについて、従来採用してきた日本固有の規格からドイツで開発/オープン化された通信規格である「EtherCAT」へ移行することを発表している。これにより同社の工場内ネットワークにおける特定メーカーへの依存度は下がり、適材適所にマルチベンダーの機器を配置していくことが見込まれる。

 このように、国内外においてIoT技術の標準化を進める動きや、オープンな技術を採用するユーザー企業の動きが活発化しているといえる。

 昨今では、大手ITベンダーが中心となり「IoTプラットフォーム」と銘打って、さまざまなサービスをまとめて提供し始めている。ただ一言でIoTプラットフォームといってもその種類は多様である。例えばデバイス認証やファームウェアアップデートなどの役割を果たすプラットフォーム、IoT向けのアプリケーション開発支援を行うプラットフォーム、グローバルなコネクティビティを管理するプラットフォームなど、その種類はさまざまだ。

 つまりIoTプラットフォームと言っても、本当にIoTに必要な全ての機能を統合しているわけではなく、それぞれのベンダーの得意領域に限られているのが実情だ。現時点では各ベンダーが強みをどう打ち出し、不足した部分をどう外部から取り込むかを模索してパートナー探しをしている状態にある。エンドユーザー企業としては、1つのベンダーだけをパートナーにIoT推進を図ることはありえないと考えた方が良い。

 また、IoTへの取り組みのモチベーションは、従来のIT部門が重視してきたような「コスト削減」ではない。ビジネス拡大、利益追求の方がはるかに強い。そこでIoT導入の窓口になるのがIT部門ではなく事業部門であることも多い。ところがこれが従来の組織運営になじまず「シャドーIT」として問題化することがある。

 実際、クラウドIoTプラットフォームはスモールスタートが可能で、運用の中で有効な使い方を見つけていくこともできるため、事業部門にとっては魅力的な選択だ。しかし、そこで企業のセキュリティやコンプライアンスに関わるリスクを制御できないのでは困る。IT部門は、事業部門に協力してビジネス拡大や新ビジネス開拓に努める一方、セキュリティやコンプライアンス面での問題が生じないようにサポートしていく必要がある。

 例えばERPとの連携など、クリティカルな部分はIT部門が主導して導入・構築にあたることが勧められる。また、IT部門と事業部門の共同で運用ポリシーを策定すること、あるいはCIOと業務部門の長の調整が可能な役員を任命することなど、組織の壁を超えた取り組みも求められる。IT部門の担当者としては、これまでのような「減点主義」の考え方から、事業成長を堅実に支えるための役割を果たすことへのマインドシフトが重要になるだろう。

 以上、今回はIoTの産業別のユースケースと動向について解説した。今後、2020年に向けて景気は上昇していくことが期待できるが、その後には以前から山積している経済課題、社会課題が必ず表面化してくるに違いない。そのときまでにビジネスをどこまで合理化・効率化できているかが次の時代の競争力を左右する。政府が提唱するSociety 5.0などのコンセプトもそのとき以降の日本の国力を保つことにフォーカスしているようだ。目先の好景気に浮かれず、未来に備えた支出を行っていくことが今こそ求められている。IoTはその有力な選択肢だ。

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