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» 2016年11月16日 10時00分 公開

成長鈍化は避けられないのか、2020年に向けてのIT投資トレンドすご腕アナリスト市場予測(4/5 ページ)

[廣瀬弥生,IDC Japan]

規制の多い日本の業界で期待できるのは製造業や小売業

 また米国では、特に金融やヘルスケアの分野で戦略的アプリケーション開発が盛んになっている。日本でも銀行やクレジットカードの口座情報を統合的に個人や法人ユーザーに提供するようなフィンテック関連サービスが人気を呼び、またウェアラブルデバイスを利用する健康管理サービスも数々見られるようになった。

 しかし産業規模を左右するほどのインパクトはもたらしていない。その一因には、これらの分野が日本では「規制業界」と呼ばれ、環境変化が起きにくいことが挙げられよう。競争が激しい分野でなければ、なかなかイノベーションの機運は生まれない。

 日本で競争が激しく、規制が緩やかな業界といえば、製造業や小売業が代表的な例だ。むしろこうした業界の方が、イノベーションが進みやすいと考えられる。

 また、IoTと、AIとも呼ばれるコグニティブ技術も、これからのIT戦略の鍵になるだろう。IoTによって収集したビッグデータから得られる情報をコグニティブ技術で解析、学習し、ビジネスに有効に活用する手法はさまざまなシーンで実証され始めている。

 IoTの活用シーンの典型的な例は製造現場のオペレーションの効率化だろう。世界ではIndustrie 4.0のような国家的な取り組みが注目され、IoTは製造業を革新していくものと考えられている。しかし日本では少し温度差があるようだ。

 センサーからの情報収集やその分析により産業機械を制御するという工場内でのシステムは、実は日本企業が昔からやってきたことなのだ。現在以上に何をもたらしてくれるのかという疑問が湧いてくるのも分からないではない。

 しかし個人的な見解だが、現場でのオペレーション効率化の面では、海外の方が進んでいると思うことも多い。IoTのさらに積極的な活用により、今よりも改善できる部分はあるはずだ。

 就業人口が減少している現在、技術やノウハウを継承する意味でも、IoTやコグニティブ技術は大きな利用価値があろう。既にこれに気付き、研究を始めている企業は多い。特に特定産業向けのプラットフォームについての関心は高く、積極的に海外の情報収集が行われている。ただし逆に言えばまだその段階にあり、本格的に踏み込む企業は少ないのが実情だ。しかしその潜在力は大きく、やがてはIoTとコグニティブ技術導入の機運が盛り上がるものと思われる。

 製造業以外でも同技術を活用した応用事例は出てきている。例えば畜産業の家畜の体調管理,

病気の早期発見や、トラックやバスのドライバーの健康状態の管理、構造物の状態監視や保守を目的とした事例だ。

 企業の関心も高まってはいるが、まだ実験、実証段階にとどまり、ビジネスとしては萌芽が見えてきた段階にすぎない。とはいえ数年前に比べて実用段階に近づいていることは確かであり、長期的な視点からはさらなる技術開発と応用の発展可能性に期待できそうだ。

 なお、コグニティブ技術は金融分野ではよく利用されている。一時はコールセンターのオペレーションの効率化のために導入されることが多かったが、現在は商品設計などの領域での利用にシフトしているようだ。

 さらにもう1つの投資拡大が予想される分野はセキュリティだ。これは現在、一番注目される分野になっている。どのようなサービスでもセキュリティは必須条件である。大企業に限らず、中小企業でも何らかの対応を図らなければならない。コストをかけずにセキュリティを確保するための製品導入やサービスの利用は、専門技術者が不足する中、これからますます重要になる。

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