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成長鈍化は避けられないのか、2020年に向けてのIT投資トレンドすご腕アナリスト市場予測(3/5 ページ)

» 2016年11月16日 10時00分 公開
[廣瀬弥生IDC Japan]

今後のIT投資の中核となるのはデジタルトランスフォーメーション

 過去と現状の調査をベースにした予測として、IT市場の動きが今後もそれほど活発化しないというわけだが、投資の拡大の兆候がないわけではない。IDCでは、今後のITをけん引していくのはイノベーションであり、中でもデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ぶ、競争優位に立つための戦略的なIT活用を通した新しい価値創出だと考えている。

 これは単なるスローガンではなく、海外では実際に、IDCが提唱しているクラウド、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術、モビリティという「第三のプラットフォーム」を活用した新しいビジネスモデルを作り出すためのアプリケーション開発が行われ、成果を生み出しつつある。これは今後のIT市場を活性化する大きな要因となるものと考えられる。

 例えばUberやAirbnbなどのビジネスの成功は、まさに第三のプラットフォームの活用とビジネスモデルの変革によってもたらされたといえるだろう。またデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいるのは小回りの効く新興企業ばかりではない。グローバルメジャーな自動車会社や総合メーカーが多くの開発会社と連携し、エンドユーザーも開発の一員として加えた新しい戦略的アプリケーション開発を積極的に行っている。

 日本でも同様に、第三のプラットフォームを駆使した戦略的なアプリケーションを道具にした新ビジネスや新製品の創出が始まっていて、デジタルトランスフォーメーションが現実的なビジネス成長をもたらすものとして捉えられ始めている。

 この機運が高まれば、競争力の源泉としてITへの投資が活発化してくることが期待できる。ただし今のところはPOC(概念実証)の段階にとどまっていて、これが2020年までの期間でどれだけ本格化していくのかは未知数だ。日本ではSaaSの利用が20%台で伸びていて、クラウドやモバイルデバイスの利用も普及してはいるのだが、まだ自社の独自性あるアプリケーションを戦略的に利用していこうという機運が成熟してはいないようだ。

 これには経営陣の意識改革が米国ほどに進んでいないことに一因があると考えられる。IDCでは、デジタルトランスフォーメーションへの積極的な取り組みが、CIOではなくCEOの関心事になると予測している。事実、グローバルメジャーな総合メーカーのCEOが自らそれをコミットメントしているのだが、日本の経営者がそこまで踏み込んだ発言をしているのを聞いたことはない。

 まだ従来通り、IT活用とはコストセンターである基幹システムをできるだけ低コストに安定運用していくことの方に重心を置いた考え方が主流であり、全社的にITを企業成長のための戦略とする意識に至っていないように見受ける。

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