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» 2016年11月16日 10時00分 公開

成長鈍化は避けられないのか、2020年に向けてのIT投資トレンドすご腕アナリスト市場予測(5/5 ページ)

[廣瀬弥生,IDC Japan]
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IT投資の主体の変化と地方と都市部の投資格差

 IT投資のトレンドの変化として、あと2点を挙げたい。1つは投資の主体がIT部門から業務部門に移行していること、そしてもう1つが地方と都市部でのIT投資の格差だ。

 1つはIT投資の主体が、従来のIT部門から、徐々にLoB(業務部門)に移行していることだ。IDCの海外での調査では、IT投資の約6割がLoBの予算から出ていると予測している。これに対して日本は3割を少し超える程度である。

 日本で大きな金額が動くのは、一般的に金融機関のシステム刷新や、製造業の製造ラインの刷新などであり、現在はオリンピック、パラリンピックに向けた投資も大きくなっている。これに必要なITサービスへの支出はIT部門が行っている。その規模が大きいので見えにくいが、日本でも実際には海外と同様にLoBによる投資が増えている。やがて投資割合が逆転するのは時間の問題だ。

 LoBでは戦略目的が明確であり、ITへの投資目的もはっきりしている。戦略に合致する価値が認められれば、それに投資することができる。IT部門にそれができないというわけではないが、ビジネスに環境変化への即応性が求められる現在、LoBが主導するケースは増えてくると思われる。そのようなケースでのIT部門の役割は、LoBの相談役となることだ。

 ビジネス効率や生産性、環境変化への迅速対応を重視するあまり、セキュリティやガバナンスをおろそかにしてはならない。またコスト最適で安心できるベンダーや製品、サービスの選定も重要だ。そのためには、業務組織を横断的に把握して、全社レベルで契約や構成を考えることができるIT部門の助言は必須になる。実際、5000人以上の従業員規模の会社では、LoBがIT部門との相談の元にIT投資を行うケースが非常に多くなっている。

 まだ戦略的なIT投資についてもIT部門が采配を振るう企業が数としては多いので、すぐに投資主体が逆転するというわけにはいかないかもしれないが、IT部門の役割の変化に備えておく必要があるだろう。

 もう1つのトレンドは、地方と都市部でのIT投資の格差である。図4に見る通り、IT投資の成長率が非大都市圏ではほとんどマイナスになってしまっている。これは非大都市圏の投資余力の弱さが背景になるのだろう。円安であっても円高であっても、ビジネスで利益が上がらないのが実情である。

 クラウドの利用は中小規模の企業にとっては有利なはずだが、ユーザー調査によると利用が進んでいない。IT投資の格差はますます開くばかりで、それは競争力の低下に結び付く。これは地域間の経済格差を広げる一因にもなり、憂慮すべき問題だ。

国内IT投資地域別比率 図4 国内IT投資地域別比率、2016(出典:IDC Japan)

 以上、国内のIT投資のトレンドを調査結果から幾つか紹介しつつ、ビジネスの成長に必要なデジタルトランスフォーメーションによる戦略的なIT活用や新技術の導入を阻む問題点、さらに地域間格差の問題も指摘してきた。

 これらの問題は、1企業の努力だけではなかなか解決が難しい。これにはITベンダーの側の助力が必要だと考えている。ITユーザー企業の経営層が情報の価値を認め、その活用を図ることが企業利益と競争力につながることを理解し、必要なIT投資を適時に行えるようにすることが重要だ。

 そのためには、専門家であるITベンダーがユーザー企業の業務をより一層深く理解し、戦略的なIT活用により現場の課題解決、生産性向上、新規ビジネスの立ち上げなどについて、誠心誠意ユーザー企業と議論し、提案していくことが求められる。企業の経営層、現業部門、IT部門、ITベンダーが一緒になって、経営全体を力を合わせて変えていくことが、これからのビジネスイノベーションには欠かせない。

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