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日本企業の国際競争力を担う「デジタルレイバー」(後編)

» 2017年01月30日 10時00分 公開
[RPA BANK]

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RPA BANK

製造業をはじめとして、日本企業がグローバル市場での競争にさらされている。日本企業が国際競争力をつけるために今、注目を浴びているのが、人が行っていた定型業務(単純作業)を自動化する「RPA/AI/デジタルレイバー」である。

だが、RPAに課題がないわけではない。例えば、より高度な仕事に人がシフトするためには何をすべきかといったことだ。しかし、RPA時代に則した人材開発を行うことによって、そうした課題は解決できる。RPA市場にいち早く進出し、日本企業の国際競争力向上に貢献するKPMGコンサルティング株式会社の田中淳一氏と田邊智康氏に話を聞いた。

「RPA(Robotic Process Automation)/デジテルレイバーの面白いところは、現状のITシステムに手を加えることなく導入できて、しかもすぐに導入効果が現れることです」。KPMGコンサルティング SSOAビジネスユニット日本統括、パートナーの田中淳一氏はこう話す。

例えば、人手で業務を行う場合、業務トレーニングマニュアルに基づく説明が必要であり、トレーニングコストが発生すると共に、ずっと人が作業をし続ける必要がある。また、通常のシステムを使って業務を行う場合、導入には専用プログラムの開発が必要となるため高いコストがかかり、開発のための期間も長くなる。さらに開発にはプログラミングスキルも必要となり、開発できる人が限られる。 他方、RPAを活用して業務を行う場合、準備に必要なことは操作の記録だけであり、低コストかつ短期間で行える。しかもプログラミングスキルは不要である。

RPAと親和性の高い業務としては、大量処理や反復的な作業、予測可能な作業、ボリュームの季節変動がある業務やピークボリュームが読みにくい作業など。つまり、一定の決まりに従って実施する事務処理業務全般に適用することが可能だ。 人件費格差や標準化を元にしたコスト削減は15〜30%が限界だが、RPAを活用すれば、40〜75%のコスト削減が可能になるという。

実際、「コスト削減や業務の効率化・正確化(作業ミスや不正の低減)、働き方改革など様々な目的を持ったお客様がRPAを導入しています」とKPMGコンサルティング SSOAビジネスユニット ディレクターの田邊智康氏は話す。 業務の正確化やスピードの向上という点では、RPAは人の150倍〜200倍のスピードで業務を行い、かつ24時間365日動き続ける。しかも、ミスを犯すことはないのだ。

参考元:「IoTの先にあるAI労働力(RPA/Digital Labor)時代」(2016年12月7日)KPMGコンサルティング株式会社

RPA導入に伴い求められる企業の人材開発とは

RPA導入に伴う業務の自動化・高度化により、人材に求められるスキルセットは変化するため、早期に対応を実施し、変化に備える必要がある。 RPA時代は業務を「実行」する能力よりも、「理解・分析・設計」する能力のほうが重要になる。

求められるスキルセットとしては、例えば、?現状業務の効率化余地見極めなどの業務分析・設計の能力、?新テクノロジーの適合性・実現性などのテクノロジーの理解と設計能力、?ユーザーニーズを具体的に理解・分析し、RPAの活用施策を考え出す能力――といったことが挙げられる。 さらに、必要なスキルを持つ人材開発のためには、?既存人材に対するトレーニング、新規採用ともに時間を要すため、RPAの早期・小規模な導入を繰り返し、人材面の対応を徐々に推進すること、?過去の従業員の情報(スキル、経歴、過去の評価など)を分析し、補強すべき職種に対する潜在力のある従業員を選別し、必要な人材開発施策を実施して雇用を創出すること、?RPAによる変革ビジョンを早期に経営層から示し、RPA導入後の従業員への期待の共有、キャリア構築方法の明示、トレーニングなど、人材への意識改善を実施すること――が重要である。

「デジタルレイバーの導入によって、従業員の数を減らそうというわけではありません。RPAが自動化する作業に就いていた人には、別の仕事に従事してもらうのです。例えば、RPAを造ったり、メンテナンスしたりすることは、デジタルレイバーが行う業務を深く知っている人でないとできないことです」と田中氏は説明する。

具体的には、人工知能(AI)やRPA技術を踏まえた範囲の広い問題を大局的にとらえ、洞察や意思決定を行う「新ビジネスストラテジスト」や、AIやRPA技術を駆使し、新しいソフトウェアを生み出す「次世代テクノロジスト」、AIやRPAを活用し、業務を構築、管理・監視する「業務デザイナー」、人間性やコミュニケーション力を武器にする「共感スペシャリスト」、自動化されないニッチな専門性を追い続ける「ロングテール専門家」などといった職業が今後、生まれてくると考えられる。

「人がやりたくない仕事をすべてデジタルレイバーで自動化させたいと考えています。そして人は面白い仕事をすればいいのです。ただし、面白い仕事をするには責任も伴います。また、仕事を面白くするためには考えることが必要であり、そういった人材を教育によって増やしていくことが求められます。勤務時間は半分なのに給料は今までと同じ。デジタルレイバーによって業務を効率化させることで、そんな世界をつくれると楽しいでしょうね」(田中氏)

写真:田中淳一氏(奥)、田邊智康氏(手前)

KPMGコンサルティングが目指すネクストフェーズ

KPMGコンサルティングは今後、AI(人工知能)を活用して業務の生産性の改善や効率化に取り組んでいくという。

「既に定型業務(単純作業)をデジタルレイバーによって自動化させることは技術的に可能になっているので、今後はAIを使って非定型業務をどう自動化させるかに注力していきます」(田中氏) KPMGコンサルティングの考えるRPAの進化の段階の2番目であるClass2では、「コグニティブ(認知)AI」が進化の鍵を握っているが、今のところ、期待と現実が乖離している。まだ、AIの技術が期待するほど高まっていないためだ。 「現在、KPMGコンサルティングはClass1のRPAを提供しながら、Class2のRPAの実業務への適応を先進的なクライアントと模索している段階です。非定型作業の自動化を実現するため、なるべく早くAIを活用するClass2のRPAを提供できるようになりたいと考えています」(田邊氏)

日本企業は今、グローバル市場の競争にさらされている。田邊氏は次のように話す。「KPMGコンサルティングはグローバルコンサルティングファームですが、日本にいる私たちにとって、日本企業を支援することが使命だと感じています。日本のお客様が、国内だけでなく海外、特にASPAC(アジア太平洋)を視野に入れた将来像を描けるようにすることを2017年のテーマの1つに掲げています。個人的には製造業のお客様のお世話になってきたので、グローバルのチームと連携しながら、世界で勝てる日本の製造業の復活を支援していきたいですね」。

RPAを日本に広めてきたKPMGコンサルティングは今、RPAの更なる活用により日本企業の国際競争力を向上させることにまい進している。

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