無線LANを中心に議論が進むIEEE 802.11だが、最近ではIoT向け無線規格「LPWA(Low Power、Wide Area)」の話題も出てきているのはご存じの通りだろう。中でもIEEE 802.11ahで規格化されWi-Fi Allianceから「Wi-Fi HaLow」として策定されているものもあるため、あらためてここで整理しておきたい。なお、これらサブGHz帯無線が想定している周波数は、日本であれば免許不要帯域である920MHz帯を利用することになる。
Wi-Fi HaLowは、Wi-Fi Allianceによって策定されたブランド名であり、規格そのものはIEEE 802.11ahのこと。この規格は、IoTやM2M領域で求められる低消費電力での動作を目指しつつ、Wi-Fiの利便性を損なうことなく無線利用が可能な環境を作り出すことに主眼が置かれている。変調方式はOFDMを採用しており、データ伝送速度は約100kbps以上(数Mbpsまでが必須条件となっている)と低速ながら最大伝搬距離は最大1キロほど。
フランスのSIGFOXが2009年から提供している規格。世界展開に当たって1国当たり1つのサービス事業者と提携する戦略をとっており、日本では京セラコミュニケーションシステム(以下、KCCS)が事業者として展開している。伝搬距離はなんと最大30キロ程度のエリアをカバーすることが可能で、極めて限られた100Hzという帯域幅を利用し、混信に強いという特徴がある。ただし、データ伝送速度は上りのみでおよそ100bpsと小さい。
LoRaは、IBMとセムテックが開発したIoT向けの無線技術で、長距離を意味する“Long Range”から名付けられている。その伝搬距離は5〜15キロほどで、SIGFOXほどではないしろ、LPWAの中では遠くまで飛ばすことが可能な規格といえるだろう。LoRa Allianceが推進団体として動いており、オープンな規格となっている。独自のスペクトル拡散変調方式を採用することで、データ伝送速度は諸説があるが300bps〜30kbps程度になる。SIGFOXとは違い、双方向通信をカバーしている。
Wireless Smart Utility Networkの略語であるWi-SUNは、近距離無線通信規格である「ZigBee」がベースにしているIEEE 802.15.4の物理層を変更した拡張規格であり、IEEE 802.15.4gとして標準化されている。当初はガスの自動検針情報を無線で取得するための規格としてスタートしたもので、規格の標準化を主導してきたのは日本のNICT(情報通信研究機構)だ。1キロ弱程度の長距離通信が可能であり、チャネル間隔が600kHzの場合のデータ伝送速度は最大400kbpsになる。
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