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経営判断に必要なデータ分析に2週間、そんな経営速度を上げたのは事例で学ぶ!業務改善のヒント(3/4 ページ)

» 2017年03月15日 10時00分 公開
[キーマンズネット]

信頼できるBIツールにするためには、信頼できるデータソースが必須

 同社がTableauで見える化しているのは、営業担当者の受注前の活動状況(案件数や見込み客ごとの金額などいわゆるパイプラインの情報)と、受注後のプロジェクトの予実の管理状況などだ。

 「パイプラインに関する各情報は、別々のExcelシートで作成されているのですが、これらを経営層が瞬時にデータを分析・把握できるようTableauに集約して見える化するというのがスタートでした。例えば受注目標に対して今、どれぐらいのステータスにいるのか、目標を100%達成するためには、どの受注確度の案件まで追いかける必要があるのかなどをビジュアル化しました」(高橋氏)

 そして次のステップとして取り組んだのが、受注後のプロジェクト管理の状況を、Tableauによって見える化することだ。そのためには、基幹システムから必要なデータを抽出してくる必要がある。その際に利用したのが、同社自身が開発・販売するETLツール「DataSpider for Tableau」だ。

 「今までは各事業部の担当者が、経営会議のたびに基幹システムから必要なデータを引っ張ってきてExcelシートにまとめていましたが、DataSpiderを導入して必要なデータベースを自動連携させることで、こうした手間が一切不要になり、またデータ抽出時や加工時の人為的ミスも撲滅することができました。正しい経営判断を下すためには正しいデータが必須です。これを担保してくれるのが、DataSpider for Tableauだということです」(高橋氏)

 BPRプロジェクトでは、この2段階でのTableau導入を約1カ月半で完了させたが、最初のステップである見える化については現場のユーザーと協議をしながら画面を作成・修正し、約2週間でリリースした。しかも、専任のプロジェクトメンバーを置いたわけではなく、複数のメンバーが通常業務の空いた時間で進められた。

2週間かかっていたデータ分析がリアルタイムに、現場の作業時間も20分の1に

 Tableauの導入によって、同社では計り知れないメリットを享受することができたという。

 「われわれが今まで経営会議で見ていたのは、多少のグラフはあったものの、ほとんどがExcelの数字だけが並んでいる報告書でした。しかも文字が小さくて見にくく、拡大すると全体が見えません。報告書の数字を見ながら、電卓をたたく人もいました。これでは経営判断を間違えてしまう恐れもあります。しかしTableauによってデータを直観的に分かるよう見える化したことで、目標達成に必要な受注件数やプロジェクトごとの予実管理を瞬時に捉えることが可能になりました。報告書に対して全社で抱えていた課題は解決したといえます」(小野氏)

 経営会議で確認する数字はほぼ決まっているため、それらをまずTableauで見える化しておき、報告書には載せていないが、プロジェクトメンバーの残業時間などその都度見たくなったデータは、経営会議のその場でTableauのダッシュボード画面からデータをドリルダウンしていくことで、リアルタイムに確認することができる。

 「これまでフォーマットにないデータを確認したいと思ったら、経営層は2週間後の会議まで待たなければなりませんでした。その度に現場にも追加の作業を強いていました。それが今ではその場で、数秒で見ることができるようになりました。経営判断のスピードは何倍になったというレベルではなく、劇的に向上したといえます」(小野氏)

 また各事業部が報告書の数字を作成するために費やす時間も、大幅に削減することができた。この点について、流通・ソリューション事業部 ITソリューション部 部長の今野達矢氏は、次のように説明する。

セゾン情報システムズ 流通・ソリューション事業部ITソリューション部部長 今野達矢氏 セゾン情報システムズ 流通・ソリューション事業部ITソリューション部部長 今野達矢氏

 「私たちの事業部では、これまで報告書の数字を1回まとめるのに約40時間、1カ月で80時間もの時間がかかっていました。複数のExcelシートを組み合わせて、決められた形式のExcelシートを毎回約20帳票ほど作るのですが、会議後、フォーマットにはない切り口でデータを見たいという追加のオーダーがあった時には、さらに追加の作業時間が必要でした。それが今では約2時間で済むようになりました。実に9割以上の時間を削減することができたということです」(今野氏)

 現在流通・ソリューション事業部では、これまでExcelシートを組み合わせて報告書を作っていた経理スタッフ出身の50歳代のベテラン担当者がTableauを使っているというが、エンジニア経験があるわけではなく、SQL文を書くことができるわけでもないという。

 「今ではデータを加工する作業自体が一切無くなったので、情報を正しく編集する作業に約1時間、データを実際にビュワーで確認して、事前のイメージ通り経営層が判断できる状態になっているかをチェックするのに約1時間といったボリュームに短縮できました。さらにはそうした定型の作業だけでなく、事業部メンバーの残業時間と有給休暇取得率の関係をグラフにして問題提起するという取り組みも行っています。単にセルフサービスBIを実現したというだけでなく、Tableauを使うことでユーザーが新たなインスピレーションを得て、能動的に仕事を創出しているという状況が生まれてきているのです」(今野氏)

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