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格安SIMはビジネスでも使えるのか? MVNO法人プランの今を探るIT導入完全ガイド(2/3 ページ)

» 2017年04月17日 10時00分 公開
[宮田健キーマンズネット]

MVNOが活躍するシーン

 MVNO回線は、通話および通信のサービスが提供されている。しかし前述した通り、「通話」に関しては、従来通りの携帯電話大手3キャリアによる法人契約の方が品質やコストメリット、サポートも期待できるため、ここをリプレースすることに大きなメリットはない。しかし「モバイル通信」に関しては、コスト面やサポート面、事業継続性の意味でもリプレースのメリットが出てくる。

 まず想定できるのは「有線を引きにくい場所」における活用だ。例えば工事現場などの時限的に通信回線が必要な場合や、デジタルサイネージなどの展開でデータを送りたい場合などは、工事不要ですぐに利用を開始できるモバイル回線は有効である。特にデジタルサイネージのように夜間に大容量のデータを送信し、日中帯はほぼ送受信しないという通信パターンがある場合は、それに合ったMVNOのプランを厳選することで、より安価な通信回線が手に入る。

 さらに、回線の「バックアップ」としてMVNOを活用する事例が増えている。光回線や専用線などのバックアップとして、MVNOのSIMをルーターに差す、またはUSBドングルをルーターに指すことで、回線のバックアップが設定可能になる。こちらは通常時はほとんど利用しないため、より安価なプランを選択可能だ。

 そしていま、企業の拠点間通信用の回線としても注目が集まっている。これまでISDN網などで拠点間通信をしているような場合、通信頻度・通信容量によってはMVNO回線に切り替えることで、大きなコストメリットが出る。ISDN(やADSL)は現在サービスが収束に向かいつつあり、このリプレースとしても活用が可能だ。この用途については第2回の記事で紹介するため、参考にしてほしい。

MVNO選定前に準備すべきこと

 MVNOを検討する際、毎月どの程度の通信が発生するのか、その時間帯および上り/下りの比率など、通信状況を把握することが挙げられる。MVNOはコスト的に安価ではあるが、それは「通信状況に合わせ、柔軟なプランが選択可能」であるためだ。個人向けMVNO回線と同様、基本的には「月の通信上限」が設定されているため、その上限を超えるものであれば専用線や光回線が最適な場合もある。

 まずは「必要なスペック」――利用場所、通信の状況、必要な通信量を確認してみよう。その上で、1回線につき、月3GB程度に収まるのであれば、MVNO回線の方がコストメリットが出る場合が多いだろう。

 MVNO回線の利用を決めたら、次はMVNO事業者の選定が必要だ。MVNO通信事業者の選択のポイントはさまざまだが、例えば「品質」を選択するのであれば、事業者の「バックボーンネットワーク」を重視すべきである。障害時など、利用者の通信可否に大きく影響するためだ。

 また、利用するシーンに合わせた「プランの柔軟性」も確認すべきだ。個人利用向けには3GB、7GB、10GBといったようなシンプルなものが多いが、法人向けではより細かな容量プランが選択できるだけでなく、事業者によっては上り重視・下り重視や、通信のピークを外した夜間であればディスカウントされるといったような時間区分によるプランも用意されていることがある。

 さらに、法人向けで注目したいのは「閉域網利用」だ。これは直接インターネットにつながるのではなく、事業者の閉域設備に直接収容し、企業に直結する通信経路を選択できるものだ。インターネットを経由せず自社ネットワークに接続することでセキュリティリスクを低減することができるため、セキュリティを重視するならば、この仕組みを安価に手に入れられるということは大きい。

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