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ISDNのサービス終了に向けて、移行先にMVNOは使えるか?IT導入完全ガイド(2/2 ページ)

» 2017年04月24日 10時00分 公開
[宮田健キーマンズネット]
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ISDNが残る現場は?

 現在残っているISDNの通信需要は特殊といえるものが多い。例えば、駐車場の臨時通話システムやATMやビルのセキュリティのための監視カメラなどだ。1990年代後半や2000年代前半から動き続けているレガシーなシステムが多く、リプレースが大変難しい。

 それだけでなく、これまで64〜128KBで充足していた通信環境を光回線へ移行するとなると、オーバースペックであるだけでなく、コストも倍程度に増加してしまう。また、回線工事を行うにも光回線は数週間を要し、簡単にアップグレードもできない。コストも人的リソースもかけられない状況があり、ISDN利用者の悩みは大きくなっている。

図2 ISDNが活用されているシーン 図2 ISDNが活用されているシーン(出典:パナソニック)

 そのようなISDNの利用を「モバイル回線」に置き換えようという動きが、MVNO市場で進んでいる。その中の1社、パナソニックでは、これまで利用していたISDNのTA(ターミナルアダプター)を、専用に設計した「ISDNマイグレーション用M2Mゲートウェイ」に置き換え、ネットワークケーブルを差し替えるだけで、現行のシステム環境を大きく変更しないまま通信環境だけをMVNO回線へ移行できるソリューションを提供している。

 この製品はセンチュリーシステムズとの協業で作られたもので、ISDNのマイグレーションに必要な各種ポートを搭載したカスタマイズ製品だ。

図3 M2Mゲートウェイ 図3 ISDNマイグレーション用M2Mゲートウェイ。M2Mゲートウェイにはイーサネットのインタフェースに加え、アナログ電話回線モジュラー、RS-232C(DCE)、そしてSIMスロットがついている。SIPサーバ機能、アナログモデムエミュレート機能もあり、Line入出力ポートも搭載している(出典:パナソニック)

 パナソニックによると、ISDNがいまも利用されているシーンとして、コインパーキングのシステムやATM回線、コインロッカー管理などが挙げられるという。例えばATMでは回線だけでなくシステム全体での見直しが必要であるが、コインロッカー管理などの小さなシステムにおいては、20年から30年単位での利用を踏まえて作られるため、回線の切り替えを想定していないこと、そして通信頻度や通信容量面で光回線へのアップグレードはオーバースペックであるため、移行パスがなかった。

 そこで、MVNO回線の特徴が生きてくる。ISDNのデータ通信は常時接続だが通信量が多くないシーンで利用されていることが多いため、MVNO回線で充足することが多い。通信品質はベストエフォートであることを加味すべきだが、ISDNのリプレース手段としてのMVNOは検討の余地は十分にあるだろう。

図4 マイグレーションのイメージは「TAを置き換えるだけ」 図4 マイグレーションのイメージは「TAを置き換えるだけ」。ISDNマイグレーション用M2Mゲートウェイを用いることで、ISDNサービスを利用した現行システムを生かしたままIPネットワークへの移行が実現可能(出典:パナソニック)

 MVNO回線を利用することによるコストメリットも大きい。これまでISDN回線は1回線あたり月額3500円程度だったものが、通信上限3GBでこれまでのISDNレベルの低速であれば1000円程度にまで押さえられるという。従来の3分の1のコストで利用できるようになるのだ。

 また、このソリューションが評価されていることの1つに、多種多様な「回線利用ニーズ」を満たすことが挙げられるという。例えばこのゲートウェイでは、光回線とモバイルを同時に収容可能であるため、拠点間通信のバックアップ回線としてMVNOを選択することもできる。さらにはアナログの電話回線も収容可能であり、防災無線などの用途にも活用できる。実際に自治体から防災無線用に導入される事例も多いという。

 このゲートウェイは当然ながら工事が不要で、光回線の敷設よりも早く利用できるため、工事現場などでの活用も行われているという。いまではISDNを利用しているユーザーだけでなく、多くの「キャリア」からも引き合いがあるとのことだ。

 現在NTTでは、ISDN回線のディジタル通信モードのマイグレーションのため、検証環境を用意するなどの施策を行っている。2020年以降もサービスが残る可能性があるが、MVNOに早目に移行すればその分コストを削減できる可能性もある。また、サービス終了に近づけば近づくほど、各社の移行案件が集中するため、早目に移行先を検討した方が得策だろう。

 ただし、そのままマイグレーションできない利用シーンも残る。先のATMやファームバンキング、EDIなどのように、上位システムが変わらなければならない場合や、音声通話中心の利用は本ソリューションの対象にはなりにくい。しかし実際にデータ通信として活用している利用者にとっては、ソリューションとして魅力に感じるだろう。

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