メディア
連載
» 2017年05月10日 10時00分 公開

耳で認証、ヘルスケアや屋内ナビも実現する「ヒアラブル」技術とは?5分で分かる最新キーワード解説(4/4 ページ)

[土肥正弘,ドキュメント工房]
前のページへ 1|2|3|4       

「ヒアラブル」の活用ケースは?

 「ヒアラブル」のユースケースには、これまでにも心拍数や呼吸数、歩数、移動距離などの活動量データをもとにしたヘルスケアやスポーツサポートの事例がある。今後は、上述のような技術を組み合わせて、用途は大きく広がることになる。

パーソナルナビゲーション

 屋内地磁気位置推定技術を利用して、音声による施設案内が適切に行える。道順の案内はもとより、目的地に近づいたら「次の角を右です」などとアドバイスすることもできよう。また広告パネルなどに近寄ると、その人だけに向けたメッセージを流すことも可能だ。立ち入り禁止区域での警告、転倒などの事故検知と音声サポートなどにも役立てられよう。また両耳への装着を前提にすると、立体音響が利用できる。「目的の場所はこちらですよ」と、その方向から呼びかけるようなナビゲーションも考えられる。

入退場管理

 セキュリティゲートのようなピンポイントの「関所」を設けるのではなく、廊下を歩くうちに自然に本人認証できる仕組みが考えられる。認証が成功した人のヒアラブルデバイスのLEDを点灯させるなどの工夫をすれば、認証していない人に係員が声掛けするような、ソフトな形の入退場規制が可能だ。

従業員の動態把握

 常時装着を前提にすれば、施設内の従業員の動態モニターが可能になる。工場などでの従業員動態管理は安全管理や作業合理化の面で重要。フリーアドレスオフィスでの従業員の執務場所の把握や医療現場での医師・スタッフの位置確認にも利用可能だ。必要に応じていつでも本人認証できるのが他の手法とは異なるポイントだ。

常時認証で不正防止

 耳音響認証はユーザーに負担なく常時実行できる。例えばスマートフォンのスクリーンロック解除から、その後の各種サービスへのログイン、ECでの決済時など、認証が必要な場面は多数あるが、全て耳音響認証で済ますことができる。

 例えばオンライン試験の場合なら、受験者が本人かどうかを継続的に確認できる。さらに、サーバルームでの作業やセキュリティエリアでの業務などに際にも、必要に応じていつでも本人認証できるので、セキュリティとコンプライアンス管理上でも安全が図れる。

身体状況、心理状況に応じた対応

 体内音からは心拍と呼吸のデータが取れる。これらからは健康状態と心理状態(高ストレス状態、眠気など)の推定ができるので、休憩の勧めや注意喚起などを状態に従って音声で伝えるといった、きめ細かいパーソナルな労務管理に役立てられそうだ。

 心理状態は例えば商品の購買意欲、関心を寄せるコンテンツの種類などにも影響がある。心理状態に応じた商品やコンテンツのレコメンドといった、マーケティング用途にも活用できるかもしれない。

 NECでは2017年5月には同社製のヒアラブルデバイスのプロトタイプを公表し、2018年には上述のようなソリューションを提供していく考えだ。プロトタイプで技術の周知、浸透を図り、ソリューションの普及を目指す。デバイス開発や販売は外部メーカーに期待しているとのことだ。

 なお、現在のところ「ヒアラブル」はスマートフォンとの接続・連携をベースに考えられているが、いずれはデバイスが直接インターネットに接続することも視野に入っている。LPWAなどのIoT向け通信サービスは実用フェーズになり、5G通信もやがて登場する。これらを利用して、各種のクラウドサービスが耳元のデバイスだけで利用できるようになる日が、遠からずやってきそうだ。

関連するキーワード

測位技術

 GPSのような、モノや人の位置を知るための技術の総称。GPSは衛星電波を利用するため、屋内ではほとんど利用できない。他には無線LANアクセスポイントや携帯電話基地局からの電波によりおおよその位置を割り出す方法、超音波を利用する方法、BLEを利用したビーコン、LEDなどの可視光による測位、別項のPDRなどの方法がある。

「ヒアラブル」との関連は?

 ヒアラブルデバイスは搭載する地磁気センサーにより周辺の地磁気の状態が計測できるので、それを作成済みのフロア地磁気マップと照合すれば現在位置が推定できる。GPSの電波が使用できないところで利用できて、他の測位方法よりも測位誤差が比較的少なくできる。電波や超音波、光利用の方式のように特別な装置も必要としない。

PDR(Pedestrian Dead Reckoning、歩行者自律航法)

 測位開始位置を決めたら、9軸センサーなどを用いて移動の方向と速度を測り、開始位置からの相対的な位置を推計する測位方法。

「ヒアラブル」との関連は?

 フロアの地磁気マップをもとにした位置推定技術との組み合わせにより、より正確な測位が期待できる。耳に固定されているヒアラブルデバイスでは、センサーの軸の位置が一定になりやすく、正確な相対位置推計が可能になる。

耳音響認証

 外耳道に向けて発した音の反射をマイクで拾い特徴を記録、認証時に同様に取得したユーザーの外耳道での反射音のパターンと照らし合わせて本人か否かを認証する仕組み。反射音は耳の形状の個人差によって異なることを利用している。1秒程度の反射音を周波数分析し、周波数成分の強度分布を調べ、20個ほどの特徴量に集約、あらかじめ登録済みのユーザーの特徴量と比較して類似度を計算する。

「ヒアラブル」との関連は?

 マイク一体型のイヤフォンが耳音響認証の前提。従来のヒアラブルデバイスは音声操作とヘルスケアデータの利用を中心にしていたが、耳音響認証技術が加わることで利用価値が格段に上がった。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。