AIは業務どうを変えるのか。富士通がAI「Zinrai」を活用し、川崎地質とともにレーダー画像を解析して地面の空洞を検知した事例の他、2017年5月の「富士通フォーラム2017」内覧会で紹介された実例を見ていきたい。
社会に膨大なデータが出回る現代において、ビジネスを円滑に回していくには、AIやロボティクスなどの技術が必要だ。一方で「人間を補助するはずのAIが人間に取って代わるのではないか」という不安に駆られることもあるだろう。
富士通は「人に寄り添うAI」「お客さまと一緒に、継続的に成長すること」「AIをサービス化して提供すること」(谷口典彦副社長)という指針に基づいて独自AIブランド「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」(以下、Zinrai)の技術を活用したサービスを展開している。
同社がパートナーと培ったZinrai活用サービスはさまざまな分野でも広がりを見せている。AIの技術はビジネスにどのような変化をもたらすのか。当記事では、川崎地質とともにレーダー画像を解析して地面の空洞を検知した事例、野村證券の取引データから自動的にアノマリパターンを分類した事例の他、2017年5月の「富士通フォーラム2017」で紹介されたAI活用の実例を見ていきたい。
富士通によれば、Zinraiの強みは、従来は難しい画像認識やグラフデータの分析を解析し、機械学習できる点である。富士通は、この技術を生かした、ディープラーニング基盤サービス「Fujutsu Cloud Service K5 Zibraiディープラーニング」(以下、Zinraiディープラーニング)を道路陥没の原因となる地下空洞の発見に活用する。
昨今、国内では陥没事故が相次ぎ、社会問題にまで発展している。2016年11月に起こった福岡駅前陥没事件は記憶に新しい。事前に空洞を発見して陥没事故を防ぐために、従来では専門技術者が目視によって地中レーダー装置の画像データを確認していたが、作業負担が大きく調査の正確さに問題があった。
Zinraiディープラーニングは、路面下空洞探査技術で撮影されるレーダー画像の解析処理を行うことで、作業の性能を上げ効率化を図る。
川崎地質との実証実験では、レーダー反射の変化で波形として現れる画像をZinraiが機械学習し、空洞か下水道管か判別することで空洞探査の性能が上がり、目視と比べて10分の1の時間で解析が終了する。教師データが少ない状況でも学習によって認識率を高めることがポイントだ。このサービスは、2017年夏から川崎地質が採用する予定だ。
今後は、AIによる空洞探査に、「富士通・交通道路データサービス」が提供する、地図上に調査位置をマッピング可視化させるサービスを連携させ、自治体などに道路修繕の必要性を分かりやすく提示していく。
Zinraiの技術は、膨大な業務データの中から「普段と違う」(アノマリ)のパターンを検知する際に活用できる。人のみではチェックが困難な業務データの異常な動きやパターンを検知し、早期に対処することが狙いだ。
例えば、取引所では日々膨大な取引データがやりとりされており、そこから普段と違う異常な動きを発見することは難しい。一方、Zinraiはアノマリ検知技術と機械学習技術を用いた分析によって、事前にデータを学習させることなく、投入したデータを正常パターンと「いつもと違う(アノマリ)」パターンに分類する。
実証実験では、数千万〜数億件規模の取引データから、数十件のアノマリパターンを発見している。そのうちの数件は、業務有識者でも気付くことのできなかったパターンであった。加えて、検知した内容の中から新たな気付きを有識者のノウハウとして蓄積し、継続的にデータ品質および分析精度の向上させることが可能となった。
富士通は2017年6月に、野村證券へ同サービスを導入する予定だ。また、今後は業種業務を問わずさまざまなシステムに適用していくことを構想しており、システム間の不整合の検知、システムテストにおける不具合の検出なども実現していく。
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