SFAを定着させるためには、導入段階でユーザーを「巻き込むこと」、運用段階で「楽をさせること」に注力する必要がある。
SFAの導入効果を得られるか否かは、営業現場の活動状況がきちんとシステムに集まってくるかどうかにかかっている。そのためSFA導入を進める際には、システムそのものの観点はもちろんのこと、導入後にシステムを利用する営業現場の意見を必ず取り入れるようにしたい。理想をいえば、導入プロジェクトを情報システム部門だけで進めるのではなく、ユーザー部門の担当者にも入ってもらい、営業現場が求める機能や使い勝手について早い段階からヒアリングや検討を進めたいところだ。
ITの専門家ではない営業担当者が日々使うシステムは、情報システム部門の担当者には思いもよらない「ほんのちょっとした使い勝手の違い」によって、その定着率が大きく左右される。しかし、そうした細かな使い勝手の観点は、情報システム部門や経営層が製品を選定する際の基準からは、得てしてこぼれ落ちてしまいがちだ。
情報システム部門が主導するIT製品・サービスの選定プロセスでは、選定候補製品の機能を横並びで比較した「○×表」や、各製品ベンダーによるプレゼンテーション・デモの出来栄えが重視される。しかしSFAは既に長い歴史を持つ“枯れた”製品ジャンルであり、現在市場に出回っている製品・サービスの間で「基本機能の有無」の差はほとんど見られない。そのため、最終的には「コストが安い製品」「プレゼンが印象的だったベンダー」が採用されることになり、営業現場の声が製品選定プロセスに反映されることはまれだ。
これでは、営業現場のユーザーが日々快適に利用できるかどうかは、実際に導入してみるまでは誰も分からない。これでは「導入しても使われないSFA」が決してなくならないのも、無理からぬことだ。こうした事態を防ぐには、営業現場がSFA導入で解決したい課題や、手に入れたいメリットといった「SFA導入の本来の目的」が、きちんと製品選定プロセスに反映されるような仕組み作りが欠かせない。
製品選定プロセスだけでなく、製品の機能やその活用方法によっても、SFAの活用度や定着率は大きく変わってくる。営業現場のユーザーに、率先して日々の活動状況をSFAに入力してもらうには、SFA導入が営業活動にもたらすメリットを啓発、教育することはもちろん大事だが、加えてシステムの入力作業が日々の業務に与える影響をなるべく少なくしたい。
近年のSFA製品・サービスの中には、そうした観点に立って設計されたものが増えてきた。例えばソフトブレーンが開発・提供するSFA/CRMアプリケーション「eセールスマネージャー」は、ユーザーがある機能の画面で情報を一度入力すれば、その内容が全ての機能に反映される他、連携する外部アプリケーションにも反映される。これにより、同じような情報を複数のシステムに何度も入力する必要がなくなり、ユーザーの利便性が大幅に向上する。
また製品そのものの機能だけでなく、その活用方法も重要だ。Salesforce.comの「Sales Cloud」のとあるユーザー企業では、ルートセールス担当者向けにユニークな機能を独自に作り上げた。モバイル端末上にその担当者が担当するエリアの地図が表示され、担当顧客の所在地がプロットされる。各所在地のアイコンは、訪問すれば色が変わるようになっている。
「訪問済」「未訪問」が一目で把握できるだけでなく、「ゲーム感覚」で顧客所在地のアイコンの色を変えていくことで、自然と顧客訪問とその履歴入力を促すことができるという。こうしたゲーミフィケーションの仕掛けを使って情報入力のモチベーション向上に成功している例もある。
さらには、ユーザーにあらためてSFAシステムにログインして情報を入力させるのではなく、既存の業務プロセスの中に入力のステップを埋め込んでしまうことで、現場に違和感なく情報入力を促すことに成功している例もある。例えば勤怠管理や各種申請といった「従業員が必ずアクセスするシステム」のワークフローの中に営業活動の入力処理を埋め込むことで、自然とデータ入力を習慣づけてしまおうというわけだ。
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