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1巻で約330TBを記録できる「スパッタテープ」とは?5分で分かる最新キーワード解説(3/3 ページ)

» 2017年09月20日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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なぜ今大容量テープストレージメディアが注目されるのか?

 さて、ここでこのような大容量テープストレージメディアがなぜ今注目されるのか、あらためて考えてみたい。現在では業務システムが扱うデータが増加して、データアクセスに高速性が要求されるため、アクセス頻度の高いデータは高速ディスクストレージやオールフラッシュストレージに、ややアクセス頻度の低いウォームデータは低コストのディスクストレージに、さらにアクセス頻度の低いコールドデータは低速だがより低コストのディスクストレージに記録されるようになってきた。それでもバックアップ用途には圧倒的にテープストレージが利用されている。

 その主な理由は、他のストレージメディアよりもテープのビット当たり単価が圧倒的に安いことである。しかも簡単に持ち運びでき、システム間のデータ交換にも都合がいい。保管するにも省スペース化できる上、ディスクストレージのように常時通電する必要もない。しかも環境条件が適正に保たれれば30年以上の高寿命が期待できる。

 こうした優位性があればこそ、テープは半世紀を超えて利用されてきたのだ。また近年はテープドライブにデータ圧縮化回路に加えて暗号化回路が備えられ、WORM機能による改ざん、消去防止と、データ暗号化をディスクメディアよりも高いスループットで実行できるようになっている。これはテープの遠隔地保管、長期保管の際のデータの安全性を高め、BCPやDRのためのデータ外部保管に都合が良い。

 さらにLinear Tape File System (LTFS)機能が追加され、あたかもUSBメモリでもあるかのようにファイルアクセスができるようにもなっている。これによりテープにウォームデータやコールドデータを保管して、いつでもアクセス可能にするアーカイブ用途での利用が簡単・高速になった。

 一方、2020年には世界のデジタルデータ量は44Z(ゼタ)Bにまで増加するといわれている。身の回りのシステムでも、音声や動画、SNSデータなどを含む非構造化データが急速に増加しているのを実感しておられることだろう。さらにIoTの進展とビッグデータ分析の発展がデータ増加傾向に拍車を掛けている。巨大化するデータを保管し、また利用する媒体として、テープの優位性は今後も揺るぎそうになく、さらなる大容量化と高速化が求められるのは必然だ。

 現在はテープとドライブの標準規格はLTOに事実上絞られている。2000年に誕生したLTO規格は2年から3年で世代が切り替わり、そのたびにカートリッジ当たり容量が2倍以上に増えてきた。転送速度も常に倍とまではいかないが順調に高速化してきている。表1にその変遷を示す。

LTO規格の変遷 表1 LTO規格の変遷

 現在最新の世代はLTO-7で、圧縮時(2.5倍)の容量は15TB、転送速度は750MB/秒となっていて、ニアライン用途のHDDに匹敵する。4、5年後のLTO-10までのロードマップができていて、その時点で圧縮時容量120TBとなる。

 これに比べてもスパッタテープはその2.75倍程度の容量となるわけだ。スパッタテープがLTO規格に組み込まれるかどうかは定かでないが、将来性は十分といえるだろう。

 クラウド、IoT、SNSなどを含め、ビッグデータ活用が進む将来、データ量増加はどんどん加速していく。今後はデータを温度差(ホット、ウォーム、コールド)によって保管先のストレージ装置を分けて使う階層管理がより重要になるだろう。またBCP、DR目的でも大容量データの移転や交換などの必要性は強まりこそすれ、薄れることはない。システムコストも運用コストも低く、二酸化炭素放出も少ないテープストレージは、さらに大容量・高速化することにより、バックアップ一辺倒の利用を超えて、多様な目的に使えるものになっていきそうだ。

関連するキーワード

LTO

 Linear Tape-Openの略で、IBM、シーゲイト・テクノロジー、ヒューレット・パッカードが策定した業界標準のテープ規格。ベンダー独自規格のテープストレージもあるが、LTOはLTO対応ドライブと対応テープならどのベンダーの製品でも互換性があり、新しい世代の規格の製品が登場しても、ドライブの世代の1世代前までのテープなら読み書きが可能なことが保証されている。

「スパッタテープ」との関連は?

 業界標準であるLTOのフォームファクターを踏襲しながら、大容量化に取り組んだ成果が「スパッタテープ」。カートリッジサイズは同じでありながら、驚異的な記録密度を実現している。

WORM(Write Once, Read Many)

 一度書き込まれたデータを改ざん・消去できないようにするデータ保護技術。LTO規格ではテープカートリッジ内の半導体メモリとテープ上のサーボコードを利用してこの機能を実現している。「スパッタテープ」との関連は?

 直接の関連はないが、LTO規格との整合性を意識して開発されているため、商品化されるときにはWORM機能が実装されると考えられる。

Linear Tape File System (LTFS)

 テープストレージに一般的なHDDやUSBメモリなどのようなファイルシステムの考え方を適用する技術。LTO-5からサポートされた機能でもある。いったんテープに保管したデータの一部を利用したい時、従来はバックアップデータをHDDなどにリストアしなければならなかったが、この技術によればカートリッジを、外付けHDDやUSBメモリのように、ディレクトリの1つと見なすことができ、特定のファイルに簡単にアクセスできる。

「スパッタテープ」との関連は?

 直接の関連はないが、データアーカイブが増えることを想定すれば、アーカイブの保存先として大容量テープストレージは有力な選択肢となる。

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