1巻で現行テープの約22倍という大容量化を実現した「スパッタテープ」。テープストレージの進化はまだまだ続く。
今回のテーマはソニーストレージメディアソリューションズとIBMチューリッヒ研究所が発表した新しいテープメディア「スパッタテープ」だ。従来のテープと違い、磁性体を塗布するのではなくスパッタリング(真空成膜)する新製造工程を用いたもの。他の新技術も採り入れてカートリッジ1個当たり約330TBを記録できる。現行のIBM製TS1155テープドライブのJDカートリッジの約22倍という大容量化を可能にした技術について解説する。
スパッタテープは、ソニーストレージメディアソリューションズが2014年に開発発表した新しい大容量テープ技術のことだ。さらに2017年8月2日、つくば市で開催された第28回Magnetic Recording Conference(TMRC 2017)でソニーストレージメディアソリューションズとIBMチューリッヒ研究所が連名で、スパッタテープに関する画期的な発表を行った。
この発表で驚かされたのは、面記録密度の大幅向上だ。現在エンタープライズテープシステムとして販売されているIBM製のテープメディア(JDカートリッジ)の面記録密度が平方インチあたり9.6Gbitであるのに対し、新技術によるテープは201Gbitとなる。これはカートリッジ容量に換算すると、IBM製テープドライブTS1155のJDカートリッジ(非圧縮時15TB)と比較した場合、約22倍の330TBを記録できる計算だ。
販売は未定だが、恐らく数年のうちには現在のエンタープライズテープカートリッジと同サイズながら約22倍の記録容量を持つテープカートリッジが誕生することになるだろう。
テープとテープドライブは当然ながら同時に開発することになるが、スパッタテープでは、テープは主にソニーストレージメディアソリューションズが担当し、ドライブは主にIBMチチューリッヒ研究所が担当した。
テープの容量は、「テープの表面積×面記録密度」で決まる。テープの表面積は「テープ幅×テープ長さ」で、面記録密度は「トラック密度×線記録密度」で示される。テープの幅は1/2インチ(12.7ミリメートル)とするのが普通だ。例えば、市販されているテープストレージメディアの1つであるLTO-7の場合は約1000メートルの長さがあり、トラック本数は3584本、線記録密度は1ミリメートル当たり19.1Kbitである。LTO-7と同等の幅と長さを想定し、面記録密度をどこまで上げられるかに技術者たちがチャレンジした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。