では、今後3年間の戦略的施策として各国のCEOは何を重視しているのだろうか。日本のCEOをとってみると、「市場進出スピードの向上」「破壊的テクノロジーの導入」といった項目が上位に挙がった。
2016年調査でガバナンスの強化やサイバーリスクといった項目に重点が置かれていたことを考えると、変化に対する積極的な姿勢が見て取れる(図3)。一方、グローバル平均で見ると、破壊的テクノロジーよりも「イノベーションの促進」といった項目が重視されていた。
「破壊的テクノロジーの導入」を戦略に掲げる企業が多い日本だが、「今後3年間で技術イノベーションにより自社の業界に大きな破壊が起こるかどうか」という設問には、日本のCEOの87%が「起こる」と回答。一方、グローバル全体は48%にとどまり、39ポイントもの差が出た(図4)。
技術イノベーションによる業界破壊とは、Uberのようなビジネスを差す。新たなテクノロジーとイノベーションによりタクシー業界の構造を一変させたこの例は、これまで製品にカイゼンを加え自社製品やサービスの価値を段階的に向上させてきた多くの日本企業に衝撃を与えた。この結果からも分かるように、日本のCEOは“技術イノベーションによる業界破壊”に対する危機感が非常に高いことを表している。
もし業界破壊が起これば、危機感を抱いているだけでは簡単に飲み込まれてしまうだろう。これに対する取り組みをいち早く実行することが重要である。
しかし、最新テクノロジーや技術イノベーションの対応など、具体的な取り組みに関する意識を聞いた設問では、日本のCEOの79%が「最新テクノロジーに追い付いていくことに対し懸念している」、77%が「技術イノベーションへの対応に苦労している」と回答している(図5)。これはグローバルと比較しておおよそ倍の数値となる。日本のCEOは破壊的テクノロジーへの関心や危機感は高いものの、具体的な取り組みに対して圧倒的に消極的だ。
日本のCEOはどうすれば、最新のテクノロジーや技術イノベーションの進歩に前向きになれるのか。宮原氏はこれらに関する正しい情報を、タイムリーに取得できる仕組みを持つことが重要とアドバイスする。
「これまでの社内で培ってきたネットワークの延長線上で情報収集を行うのではなく、最新テクノロジーに対するレベルの高い人材(ブレーンとなる人間)を雇用する、システムベンダーのトップと定期的に情報交換を行う、実際にシリコンバレーなどに足を運びグローバルのレベルを体感する、現地企業とアライアンスを組むなど、外に向けての投資が必要。実際に韓国の企業はシリコンバレーにコーポレートベンチャーキャピタルを設置し、毎年何百社にも投資を行うなどし、新しい種を見つけているというような話を聞く。もちろん、日本企業においてもそのような取り組みを行っている大企業はあるが、まだまだそのようなケースは少ないと感じる」(宮原氏)
正しい情報を得たり、新しいテクノロジーを持つ企業と協業したりすることで、自社の力だけでは苦労していた最新テクノロジーの活用や技術イノベーションへの対応がスムーズになっていくだろう。グローバル競争に負けぬよう、日本のCEOには具体的な次の一歩を惜しみなく踏み出してもらいたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。