欧米における先行研究からは、医療費(医療費+薬剤費)の大きい疾病と、生産性低下のコストの大きい疾病では順位が異なることも判明している。医療費等のみでみると、1位から5位までの順位は以下のようになる。
一方、生産性低下の要因トップ5は以下だ。
「医療費のみで考えるか、生産性まで含めて考えるかによって、ターゲットとなる疾患が異なってくる可能性があるのです」(尾形氏)
ここで健康経営について論じる際の重要ワードとなるのが、「プレゼンティーイズム(Presenteeism)」だ。プレゼンティーイズムとは、欠勤するほどの具合の悪さではなく出社はしているものの、心身の不調によって業務遂行能力や生産性が低下している状態を指す。対して、欠勤や休職、あるいは遅刻早退など、職場にいることができず、業務に就けない状態(いわゆる病欠や病気休業)は「アブセンティーイズム(absenteeism)」と呼ばれる。
従来、日本では主にアブセンティーイズムの予防と対策のみに注力されてきたが、これまで欧米で行われた調査研究から、企業にとって従業員の健康にかかわる最大のコストはプレゼンティーイズムであるという事実が明白となっているのだ。
「プレゼンティーイズムというのは、個人の健康問題だけではなく、同じ職場で働く周囲の人々に及ぼす影響も大きい点に注意が必要です」と尾形氏は指摘する。
さらに別の米国の研究によると、健康リスクの数が増えるほど労働生産性(アブセンティーイズム、プレゼンティーイズム)の損失割合は上昇するが、特に、プレゼンティーイズムにおいて顕著に労働生産性の損失に影響が表れている(図5)。
ちなみにこの研究での健康リスク項目は、次の11項目となっている。
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