デルは、こうしたソリューションを展開するだけでなく、自身でも働き方を積極的に推進している。
山田氏は「実際に取り組んで分かったことは、働き方改革やワークフォーストランスフォーメーションの推進や定着で最も重要なのは『合意形成を重視する』ということです」と、定着のカギを分析する。
「目的を明確に説明して、従業員と合意する――取り組みは、何かを達成したら終わりではなく、変化に対応して少しずつ変えていく必要があります。このイノベーションは何を目的にしているのか、経営トップが何度も何度も説明しました」
合意形成がないと「数字が一人歩きしてしまう」という。指示された数値を目指すことが「手段」ではなく「目的」になりやすいのだという。生産性を低下させても数値目標を達成することに主眼が置かれるようになると、場合によっては従業員の納得感が損なわれたり、主体性が失われたりといったリスクが高まる。
デルが今回の取り組みで目的にしたのは(1)「どこでも働ける環境を作ること」だ。併せて、(2)最新のデバイスを貸与し「貸与したデバイスは必ず使うこと」という原則を設けた。さらに、部門を超えたコラボレーションの活動を広げるために、(3)働く場所に適した「コラボレーションエリア」の環境を整えた。
(1)(2)については、見てきた通り7つのメソッドとテレワークなどの環境を整備、(3)コラボレーションエリアは、ファシリティの専門家の知見を取り入れ、さまざまな工夫を施した。
「当社のファシリティ担当者によれば、例えば会議の目的ごとに適した空間設計がある、ということが科学的に明らかになっています」
山田氏によると、合意形成の場には授業やセミナーのように対面で座る空間が適しており、「ワイガヤ」でざっくばらんに議論を行う場にはモニターを設置すると効率が良くなるという。モニターを使ってデータで確認し合うことで異なる意見をまとめやすくなるからだ。逆に議論が具体化してきたら立ち話の方が効率がよい。取り組みが進むと、お互いの確認だけで済むことが多くなるためだ。
こうして聞くとシンプルなことのように聞こえるが、会議室の設計にこうした知見を生かすことはなかなか難しい。デルではこうした知見を反映して、会議がしやすいミーティングブースや、ワイガヤがしやすいコラボレーションテーブル、集中するためのフォーカスブース、進捗(しんちょく)を確認しやすいカフェカウンターなどを配置している。
それまでの会議室の利用実態を調査してみると、会議室の平均利用人数は2.7人、そのうち、機密性が求められる会議は15%、つまりオープンなスペースで問題ないケースが85%ということだ。調査の結果、2〜3人分のオープンスペースをたくさん用意した方が効率良く利用できることが明らかになったわけだ。デルではこの結果を受けて会議室のレイアウトを変更、従来と同じ面積でも会議に使える場が増えたことで、会議待ちでアクションが遅れるといった問題を解消したという。
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