無線LANの運用においてクラウド管理型Wi-Fiの導入ニーズが高まっている。課題だった管理負担の軽減が期待できるからだ。サービス形態、導入メリット、アクセスポイントや管理画面などクラウドWi-Fiの最新トレンドについて紹介する。
多くの企業で導入が進められている無線LANだが、ネットワークへアクセスするための基盤としてコモディティ化したといっても過言ではない今、管理の負担が軽減できるクラウドWi-Fiに対するニーズは確実に高まっている。
無線LAN環境の新設や刷新を検討する際には、選択肢の1つとして挙がってくる機会も増えてきた。中小企業はもちろんだが、多くの店舗を展開する小売業を手掛ける大企業でも、実際にクラウドWi-Fiを活用するケースが出てきている。今回は、そんなクラウドWi-Fiの現状について見ていきながら、無線LANにおける最新トレンドについても紹介していこう。
現在では、最大伝送速度が1.7GbpsとなるIEEE 802.11ac(最新は802.11ac Wave2対応のチップ)に対応したアクセスポイント(以下、AP)が普及期に突入しており、高速な無線LAN環境が安価に入手できるようになった。
無線LAN環境を整備するためには、展開する複数APを統合的に管理するための無線LANコントローラーが運用管理業務の負担を軽減するツールとして重宝されるが、この管理を行うための機能をクラウドサービスとして提供するのが、いわゆる「クラウドWi-Fi」と呼ばれるものだ。
クラウドWi-Fiは、純粋にメーカー側がクラウド環境を用意し、複数のユーザーが同時に利用できるようマルチテナント環境でサービス提供するパブリッククラウドサービスもあれば、インテグレーターなどが自身のデータセンターやAWSなどパブリッククラウドサービス上に環境を構築し、ユーザーに対してはサブスクリプションでサービス提供するものまで千差万別だ。
本来的には前者のモデルが純粋な意味でのクラウドWi-Fiになるが、ユーザーとしてのメリットは後者のパターンでも十分享受できるだろう。そこで今回の企画では、双方含めたものをクラウドWi-Fiとして位置付けていく。
無線LANにおけるクラウド化、いわゆるクラウドWi-Fiがどの程度広がっているのかについてだが、2016年にIDCが発表した資料によれば、かなりの拡大が見込まれるマーケットとなっていることが分かる。
情報システム部門が専任化していない中堅中小企業などでは、管理に人手を割くことが難しい面もあり、クラウドWi-Fiへの切り替えも行いやすい。実際には、通信事業者が提供するインターネット回線とともに、オフィスでネットワークにアクセスするための環境としてクラウドWi-Fiを同時に契約するケースが多くみられるのが日本におけるクラウドWi-Fiの特徴の1つだ。
ただし、全てがクラウドWi-Fiへ移行するかといえば、そう単純ではない。当然だが、既存のネットワーク環境との連携を含めた形で無線LANを考える必要がある。最近では、標的型攻撃などが増えていることからも、エンドツーエンドでセキュアなネットワークを構築する動きも出てきている。
無線LAN単独でサービス導入するよりも、ネットワーク全体の重要なアクセス部分として無線LANを考える必要が出てくるわけだ。その場合、既存スイッチとの連携が前提になることも多く、無線LAN部分だけクラウド化しても管理的な負担軽減には大きく寄与しない。実際には、いまだにオンプレミス環境での無線LAN整備も多く行われている状況にある。
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