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既存会計システムがモバイル活用できない、KDDI社員1万1000人の完全移行プロジェクト事例で学ぶ!業務改善のヒント(2/4 ページ)

» 2017年12月13日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

複雑化したルールをスピーディーにシステム化することを決断

 しかしルールの簡素化はガバナンス低下を招きかねないという側面もある。また十余年にわたり続けてきた経費精算の業務プロセスを急に変えることには現場の反発も大きい。仕組みそのものを変えるには入念な準備と時間を要するのが実情だ。ルール改変は他部署と調整も必要だったため、立ちふさがる社内の壁は高かった。

 「ERPの情報収集を行っていた頃、たまたまコンカー三村真宗社長のプレゼンテーションを聴講し、コンカーのサービスを知りました。講演では同社の経費精算サービスが、まさに世界標準であり、申請から承認までが全てモバイルで遂行できて、操作や仕組みが分かりやすい。『全社ERP導入の先駆け的存在』になり得ると感じました」(西田氏)

 Concur Expenseをパイロット導入して検証を始めたのは2016年3月のこと。同サービスは自社の規定を審査ルールとして仕組み化できるのが特徴の1つだ。これを活用してまずは法人営業部門で使えるプロトタイプを作成した。

 「本当はルール自体をシンプル化したかったのですが短期的には壁が厚かった。それなら現行ルールを全てシステムに入れ込もうと考えました。そうすればユーザーは複雑なルールを意識せずに効率的な経費精算が行えます」(西田氏)

 同年9月には同社、法人営業部門でプロトタイプ試用を開始した。そこで、1つ試験的な取り組みを行ったという。

 「どのように使っても構わないと、使い方をユーザー部門に解放してみました。改善意見が幾つか上がってきたので、それをすぐに反映していき、納得のいくシステムにした上で、11月に既存システムとの併用という形でしたが、Concur Expenseの全社展開に踏み切りました」(西田氏)

KDDI 経営管理本部 財務・経理部 マネージャー 伊藤和彦氏 KDDI 経営管理本部 財務・経理部 マネージャー 伊藤和彦氏

 財務・経理部 マネージャーの伊藤和彦氏は当時をこう振り返る。

 「スクラッチ開発のシステムとは違い、クラウドサービスは運用しながらでもチューニングできます。システム仕様に詳しい人が少ない中で最初から完全に要件をまとめるのは難しい。使っている中でどんどん出てくる改善ポイントをすぐに直して反映できるクラウドサービスのメリットを実感しました」(伊藤氏)

 ただし、社内の情報セキュリティ委員会や情報システム部門の理解を得るのには労力を使った。「海外サーバを使う他社のサービスは、内部統制とセキュリティ管理の社内規定にそぐわない部分がありました。しかし何をどう保てばよいか課題を聞き出し、1つ1つ解決していった結果、納得を得られました。実際にサービスの画面を見ながら説明できるため、頻繁にキーパーソンに会って説得すれば、問題点は解消できました」(伊藤氏)

 当初はクラウドサービスに懐疑的だった人も、実際の運用の中で新システムのメリットを納得していった。情報システム部門の理解も得られ、既存基幹システムとの情報連携が必要な部分にはコンカーの支援も受けながら連携機能が構築された。そして2017年3月、ついにConcur Expenseに全社で完全移行した。

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