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RPA活用のポイントと効能? BPIA講演レポート

» 2018年01月09日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

システムエンジニアやITコンサルタントなどの会員が業務革新の理論と手法を研究する「ビジネスプラットフォーム革新協議会」(BPIA、倉重英樹会長)は2017年11月28日、東京都品川区の日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社本社で「第116回 目からウロコの新ビジネスモデル研究会」を開催。定型的なホワイトカラー業務を代替するツールとして注目を集めるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)について現況と展望を学んだ。システム構築を通じた業務効率化に知見を持つ会員らの目に、RPAはどのような存在と映ったのだろうか。当日の模様をレポートする。

RPAも人間と同様、「配属先」や「担当業務」の割り当てが必要

この日は初参加を含めて60人強の会員が出席。国内でいち早くRPAの普及に取り組んできたRPAテクノロジーズ株式会社の笠井直人氏が「日本型RPAで実現する働き方改革〜失敗しないRPA導入アプローチ〜」と題して講演を行った。

大学の文系学部を卒業後、インターン先だった同社に就職した笠井氏は、現在RPAツールのマーケティング・営業・導入支援を担当しながら最高執行責任者を務める。講演冒頭では「仕事は楽しくないもの」と漏らす大人に疑問を持っていた自身のエピソードを交えながら、「楽しいアナログ時代に進化する」という同社のコンセプトを紹介。RPAの普及でホワイトカラー労働者を不毛なルーチンワークから解放し、“人がやりたいことを自由に表現できる社会”を目指していると説明した。

PC上の操作を登録して自動実行させることにより、開発の期間・費用を抑えながら人手不足に対応できるRPAは、ここ2年ほどの間に国内での導入が急拡大。向こう3年で国内400億円規模に成長するとの予測もある。いわば“旬”のテクノロジーであるRPAの意義について笠井氏は「単なるソフトの導入ではなく、オペレーションを強くすることが重要」と指摘。活用にあたっては、24時間・365日働き続けられる仮想的な労働者(デジタルレイバー)として位置づけ、人間の従業員に対するのと同様「配属先」や「担当業務」を考えて割り当てる姿勢で臨むべきと説いた。

現場主導がRPA成功への足掛かり

笠井氏はまた、基幹業務システム(ERP)と人間との間をデジタルレイバーが取り持つ「3層構造」のモデルを提示。システム開発によって業務の自動化を進めると、それに伴って新たに「付随的なルーチンワーク」も生じるのが常であり、こうした作業まで自動化するのは費用対効果の面から困難だったところ、RPAによってPCによるデータ処理を代行させるアプローチが現実的な解決策として機能していることをアピールした。

デジタルレイバーの労働力を、特に日本のビジネスシーンへ円滑に採り入れるための留意点として笠井氏は「現場にあるノウハウ、力を活用すること」を挙げ、業務の効率化に向けて組織内で協働する文化の醸成が欠かせないことを強調。具体的な導入支援のプロセスにおいては「RPAの導入が『業務の削減』ではなく『働き方の進化』であることを示し、デジタルレイバーの実装や、それに先立つ業務整理を導入企業の現場が主導して行うよう助言している。併せて、デジタルレイバーの活用推進や利用手順の整備を担う専門の部署を設けることも提案している」と述べた。

効率化の先に求められる“働く”の再定義

この日の講演では、RPAテクノロジーズが地方の中小企業にRPAの導入支援を行う模様を採り上げたテレビ番組の動画も上映。日ごろIT化に意欲的な企業と多く接している参加者らの反応でまず目立ったのは「本来RPAを使うまでもない、ごく初歩的な業務改善まで掘り起こしていることへの驚き」だった。

「Excelの標準機能があれば足りることまでRPAに期待されているのではないか」との問いに、笠井氏は「プログラミングの素養が必要なこともあり、(RPAの機能に近い)Excelのマクロをよく知らないという企業は案外多い。直感的に分かりやすいRPAというツールの登場を機に、難しそうで敬遠されてきた部分の業務改善が進んでいる面もある」と回答。さらに「デジタルレイバーという擬人化は、テクノロジーへの関心が薄い層にも身近に感じさせるための手段か」というやや厳しい質問に対しては「システム投資が長期にわたる計画を前提とするのに対し、RPAは人間と同様、日々変化する業務環境へ柔軟に対応できるということだ」と応じた。

質疑応答ではさらに「例外対応を理由に現場が定型化・効率化を拒み、現状維持しようとする例はないか」「属人化させた仕事を盾に居場所を死守しようとする従業員にどう対応するか」など、RPAの導入先で従業員が協力しないリスクへの懸念も続出。これらに対して笠井氏は「個人的に経験した限り『煩雑な業務から解放された』と喜ばれたケースが圧倒的だ」と断った上で「定型業務をすべて自動化する必要はなく、RPAで7割方を代替すれば、負担は相当減る。代替困難な例外処理は、その都度アラームを発して人間に委ねれば足り、まずはデジタルレイバーを使えそうな部分に入れてみるのが手っ取り早い」と回答。今後RPAが多くの企業で一般化しても「基本的には、オフィスでやりたくないことをやっている人がたくさんいて、ラクになることは歓迎されるという認識でいる。効率化によって余剰時間が生まれれば、全員が決まった時間帯で勤務する雇用慣行が見直されていくのではないか」と楽観的な見通しを示した。

業務革新のプロフェッショナルが集う研究会らしく、RPAの技術的な適用範囲や、デジタルレイバーの管理方法についても意見が交わされたものの、参加者らの主たる関心は終始「業務効率化で余剰となる時間や人員をどう生かすか」という1点に集中していた印象。労使それぞれの立場から直面せざるを得ない、働き方改革の“本丸”を示す結果となった。

「早く家に帰っても、何をすればよいかで困らないための方法を1人ひとりが考えよう」。参加者自身の意識改革も迫る研究会ナビゲーター・井ノ上美和氏の“辛口”な総括で、講演会は盛況のうちに幕となった。

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