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iPhoneを売るために、Appleが中国政府に売り渡したモノとは:455th Lap金曜Black★ピット

Appleは2018年内に新型iPhoneを3機種投入するのだそうだ。もちろん、まだうわさに過ぎない。例年どおりとはいえ、毎年リリースされるiPhoneが新たなユーザーを開拓してきたのは間違いない。

» 2018年03月02日 10時00分 公開
[キーマンズネット]

 市場拡大に余念のないAppleが、パイの大きい中国市場を貪欲に狙うのは当然といえるだろう。しかし、そのために同社が中国政府に「売り渡したモノ」がヤバいと、ちょっとした話題になっている。

 ことの発端は、2017年6月に中国でサイバーセキュリティ法が施行されたことだ。Appleとしては、それに対応しただけと言えなくもないのだが、そこには看過できないアレコレが。それは一体?

 中国のサイバーセキュリティ法で定められた事項の1つに「中国本土のユーザーのデータを管理する場合、そのデータセンターは中国国内に設置しなければならない」というものがある。

 ご存じのように、いまやiPhoneはiCloudとの連携なしには、ほとんど使い物にならないほど機能的に深く結び付いている。そこで同社は、中国人ユーザー向けのデータセンターを中国に建設し、運用を開始した。

 iCloudは、世界各国のデータセンターで運用されている。iCloud上のデータは暗号化されていて、暗号化キーはAppleが管理している。どこかの国が法的捜査などの目的でiCloudにあるユーザーのデータを参照したいとなれば、米国の法に則って請求する必要がある。

 たとえ中国にデータセンターがあったとしても、そこに保存された暗号化データを当局が自由に参照できないことは、ある種の強みだった。ところがAppleは、データセンターの管理業務を中国当局が管理する現地法人へ委託すると発表したのだ。

 中国当局は国民のネットにおける自由を大幅に制限している。金盾システムによる検閲はもちろんのこと、グレートファイアウォールによる国外への通信遮断など、言論や報道の自由は制限されまくりだ。特に民主主義支持者たちは監視のターゲットである。

 そういったユーザーは、iCloudの情報保持性の高さを評価してiPhoneを使う傾向にあった。当局も容易にはユーザーデータにアクセスはできないからだ。ところが、中国当局は好きなだけiCloudのデータ開示を求められるようになるわけだ。

 中国・中正大学の羅世宏教授は、Appleに対して「ユーザーのデータを中国政府に差し出す裏切り行為だ」と非難する。米国でも「Appleは“think Different”の精神を失い、中国政府に配慮しすぎている」と批判するメディアもある。Appleは、2017年年末に中国向けApp StoreからVPNアプリをはじめとする「抜け穴」アプリを削除してしまったから、より大きく批判されているようだ。

 「ヨソの国のことでしょ」と気楽に考えるかもしれないが、もしも自分のスマホのバックアップデータを政府が読み取っているとしたら一大事だ。中国内のiCloudデータセンターの政府移管は決定事項となっているが、今後の動静を見守っていきたいな。


上司X

上司X: Appleが中国にiCloudのデータセンターを作るんだが、「その後は中国へお任せってことになるよ! タイヘンだよ!」という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: iCloudのデータを中国当局が。ふむふむ。


上司X

上司X: おや、ずいぶん冷静じゃないか。


ブラックピット

ブラックピット: 対岸の火事ですかね。


上司X

上司X: また、そんなことを。今回の措置はあくまで本土に限られるようで、香港やマカオ、台湾は対象にならないらしい。


ブラックピット

ブラックピット: 中国で大成功しているアリババのジャック・マーCEOは言ったそうですよ。「中国でビジネスを成功させるには中国に従うべき。不満なら去れ」って。


上司X

上司X: そうだな、実際にGoogleは撤退してるわけだしな。当局に従ってビジネスを展開するか、そうでないかは選択しなさいってのは正論だ。


ブラックピット

ブラックピット: それぐらい政府というか当局のシバリが強いのだから仕方ないですよ。今回のAppleのやり方は、民主化運動がどうとか人権が云々じゃなくて商売のための手法ってことでしょう? それこそ外野がヤイヤイ言うことじゃないかもしれません。中国国内のiPhoneユーザーが快適なら、それはビジネスにプラスになることでしょうって。


上司X

上司X: その通りかもしれん。MicrosoftやAmazonも、今後は中国の業者にデータセンターを委託してビジネスを進めることになるらしい。今回の件を危惧する目線と、ビジネス目線とはちょっと角度が違ってるってことかな。


川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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