今回のWindows 10移行と、前回の「Windows XPから7への移行」とを比べてみると、OSの移行そのものの作業にはほぼ同じ考え方が適用できる。具体的な作業計画の立て方や、作業実施に当たってのポイントなどは、別途後編で詳しく紹介するので、ぜひそちらを参照されたい。ただし、1つ確実にいえることは、ほとんどの企業ユーザーにとって最も時間やコストがかかるのは、前回と同じく「アプリケーションの互換性チェックや動作検証の工程」になるだろう。
現在、Windows 7上で利用している業務アプリケーションが、全てWindows 10上で正常に動作するとは限らない。従って、現在利用しているアプリケーションがWindows 10上で正しく動作するか、一通りチェックする必要がある。Windows XPから7への移行では、このチェック作業と、そこで見つかった問題を修正する作業に多くの工数が割かれたが、今回のWindows 7から10への移行では、ひょっとすると前回ほどは苦労しないかもしれない。
というのも、Windows XPとWindows 7ではOSの心臓部であるカーネルに大きな差があったが、Windows 7とWindows 10のカーネルにはさほど大きな違いはない。そのため、前回ほどアプリケーションの動作に大きな問題が生じる可能性は少ないといえる。
また、IEブラウザ上で動作するWebアプリケーションに関しても、Windows 10に搭載されるIE11には旧バージョンのIEの動作をエミュレートできる「エンタープライズモード」が備わっている。これを使えば、旧バージョンのIEを対象に開発した古いWebアプリケーションも使い続けることができる。
ただし、Windows XP時代に開発した古いアプリケーションを、Windows 7でも延命させて利用し続けてきた場合は、Windows 10上で予期せぬ問題が発生するかもしれない。また、Windows 10移行に合わせてPCを高解像度ディスプレイのマシンに入れ替えた場合は、高解像度に未対応の既存アプリケーションのUI表示に問題が生じる可能性が高い。同じく、システムフォントもWindows 7から変わっているため、アプリケーションの文字列表示がずれてしまう可能性もある。
ほんの少しの表示のずれも全て修正するのか、それともアプリケーションの機能そのものには影響しない範囲の表示の問題は無視するのか、どちらの方針をとるかは企業ごとに考え方が異なるだろうが、対応工数に大きな差が出る可能性もあるため、あらかじめきちんと方針を定めておきたい。
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