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人事評価者の評価もできる? 機能別に見る人事評価システム詳細解説

人事評価システムといっても、備わる機能は製品によってさまざまだ。今回は、実際のシステム画面を見ながら機能の詳細について紹介しよう。自社の人事制度に合ったシステムを選定する際に役立ててほしい。

» 2018年06月11日 10時00分 公開
[酒井洋和てんとまる社]

 人事評価の仕組みは、所属メンバーの給与や職級を決定するうえで重要な制度であり、大手企業を中心にその仕組みが確立されてきた。しかし、中小企業などではいまだに経営者の独断で給与査定が行われているケースも多く、まだ広く浸透しているとは言い難い。それでも、人材不足が叫ばれる中で会社と社員とのエンゲージメントを高めるためにも、納得感のある評価の仕組みは必要な時代だ。具体的に人事評価ソリューションが持つ機能について詳しく見ていきたい。

人事評価システムの実態

多くのプレイヤーが参入している人事評価の世界

 前編では、人事評価の目的やその変遷をたどったが、後編では人事評価システムが持つ具体的な機能について見ていきたい。

 一般的に人事評価とは、まずは自社に適した人事評価の在り方を検討し、そこから評価制度の基盤構築、社員への周知、研修を通じての教育、そして定期的な評価面談という流れで運用されていく。

 人事評価の仕組みを整備するための具体的なフローを見ると、例えば初期の段階では人事評価に関するコンサルティングが必要になるため、コンサルティングファームなどのプレイヤーが登場する。次に構築に関しては、いわゆる社内に設置する人事評価システムからクラウドを利用したサービスまで幅広いソリューションが存在しており、ベンダーやインテグレーターなど顔ぶれもさまざまだ。そして、社員に対して評価の重要性や啓蒙活動などの教育を行う場面では、研修サービスを提供するベンダーなどがその役割を担うことになる。最終的な運用については社内の人事部内で行なうのが一般的だ。

人事評価制度を整備するためのフロー 図1 人事評価制度を整備するためのフロー(資料提供:あしたのチーム)

 もちろん、初期のコンサルティングから運用まで一括で手掛けることで人事評価全体をBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスとして提供するものもある。いずれにせよ、人事評価については多くのプレイヤーが存在していることは理解しておきたい。

人事評価システムの区分け

 その中でも今回は、実際に人事評価を行うための器となるシステムに着目してみよう。一般的な人事評価システムには、主には年次での目標を定めるための評価指標の作成機能から、査定を行う機能、そして査定結果を含めた評価やスキルを管理する人事評価データベースなどの機能が備わっている。

 また、査定結果に基づいて人材配置を検討する機能や、その結果をもとに支払われる給与のシミュレーションを行う機能など、査定情報を生かすための機能も備わっている。前述したプロセスの中では「構築」の場面にあたるが、ここでのサービスや商品もいくつかの選択肢が考えられる。

 その大きなものの1つが、ERPをはじめとした基幹システムの一部として提供されている人事給与パッケージだ。いわゆるタレントマネジメントシステムとして提供されているもので、人事DBはもちろん、給与計算や勤怠・工数管理、研修管理、後継者管理、採用管理といった人事部門の業務に必要な機能が網羅されており、その中に人事評価の機能も内包されている。主に大企業向けの仕組みだといえるだろう。

 豊富な機能を持つ基幹システム系の仕組みに対して、人事管理や労務管理の一部として、あるいは評価システムに特化して提供されている仕組みもあり、最近ではクラウド環境にて利用できるものが増えている。こういったサービスや商品には、目標管理制度、コンピテンシー評価、360度評価など、よく利用される評価制度の機能が備わっており、企業の考え方に応じた評価の仕組みが実装できるようになっている。給与などの仕組みとはAPI連携やCSVなどでデータを取り込むなど、何らかの方法で外部システムとの連携が行えるようになっている。

人事評価システムが持つ具体的な機能

 ここで、具体的に人事評価システムが持つ機能について、画面を参照しながら見ていきたい。実際の機能を見ていくことで、具体的な人事評価プロセスがイメージできるだろう。

人材情報管理

 人材情報管理機能では、社員の属性やスキル、保有する資格、携わってきたプロジェクト履歴、過去の査定結果などの情報が管理できる。最近では、顔写真も表示されるようになっており、一覧ページから社員の写真をクリックすることで、社員ごとの情報が表示される仕様になっている。

顔写真付きの評価シート一覧画面 図2 顔写真付きの評価シート一覧画面。一覧画面から社員の情報や評価の一覧が確認できる。評価一覧画面では、現在の評価におけるステータスなども可視化できるようになっている。(資料提供:あしたのチーム)
プロフィール詳細 図3 プロフィール詳細。社員情報に関する属性が詳細に管理できる。人事データベースが別にあればインポートすることも可能。(資料提供:カオナビ)

検索機能

 社員検索機能では、人事データベースの情報を横断的に検索できるだけでなく、「カオナビ」ようにプロジェクトごとに過去の関連メンバーを表示させたり、一覧情報からスキルや保有する資格などの条件で絞り込み検索することで適任者を見つけ出せたりできる。

プロジェクトでの絞り込み一覧画面 図4 プロジェクトでの絞り込み一覧画面。特定プロジェクトに関連したメンバーだけを検索して一覧表示。(資料提供:カオナビ)
適任者俯瞰機能 図5 適任者俯瞰機能。ハイライト表示する項目を選択すれば、一覧画面から適任者が容易に可視化できる。ハイライトしたい項目は企業によって任意に設定可能。(資料提供:カオナビ)

評価シート作成機能

 評価シート作成機能では、人事評価に必要な評価シートを作成する。例えば、複数者によって評価する360度評価や、企業や部署の目標達成に向けてチームや個人の目標を明確化するOKR(Objective and Key Result)といった目標設定および評価手法については、あらかじめ基本テンプレートが用意されており、自社にとって必要な項目が基本テンプレートにない場合は、追加できるようにもなっている。カオナビでは評価フォームをマウスのドラッグ&ドロップだけで作成でき、自社独自の評価手法を取りれることも可能だ。

評価フォーム作成 図6 評価フォーム作成。必要な帳票項目をドラック&ドロップだけで作成できる。(資料提供:カオナビ)

人事評価シート出力機能

 人事評価シート出力機能では、各社員の評価情報や評価項目が一覧で表示され、評価者はこの評価シートを基に社員と面談を行う。面談時にはPCの画面ではなく、紙のシートで行いたいというニーズに応えて、中には評価シートそのものをExcelフォーマットに出力できるツールも多い。

評価シート画面 図7 評価シート画面。全ての項目が1ページ内に収まるように設計されている。余計な画面遷移を排除したUIに。(資料提供:あしたのチーム)

評価分析機能

 評価分析機能では、社員全体および部署の評価の平均点や社員個別の分析が可能になっている。例えば、職位ごとのコンピテンシー(業績や成果につながる行動特性)を分析することにより、社員の行動改善に生かすことができる。また、コンピテンシー目標とMBO(目標管理制度)の2軸で評価を行っている場合は、過去の数字と比較しながら点数比率の乖離が確認できるといったことも可能だ。

社員全体の評価分析 図8 社員全体の評価分析(資料提供:あしたのチーム)
社員個別の評価分析 図9 社員個別の評価分析(資料提供:あしたのチーム)

 なお、人事評価以外のデータを取り込み、クロスして分析する機能を持つ製品もある。例えば、勤怠管理システムから評価の低い社員の残業時間を取得することで、残業時間と評価の相関関係を分析できる。残業時間が多い割には評価が低い社員は、マネジメントに課題がある可能性が考えられるため、上司を個別に呼び出して状況確認するといったことも可能になる。

シミュレーション機能

 人事評価システムには、蓄積された情報を活用したシミュレーション機能が実装されていることも多い。具体的には、給与査定のシミュレーション機能などだ。本来、人事評価は給与を決めるための基礎情報となるため、当然ながら評価いかんによっては、給与の増減が発生する。ただ、企業の人件費にも限りがあるため、給与査定によって人件費がどのくらい変化するか、といったことが事前にシミュレーションできれば助かるはずだ。

 また、人事データベースが備わっている人事評価システムであれば、評価や査定結果、そしてこれまでのキャリアや職歴などの情報を基に、組織をシミュレーションすることで、最適な人材配置を検討することも可能だ。

査定シミュレーション 図10 査定シミュレーション。評価を決定する前に総人事費の変動予測をシミュレーションできる。(資料提供:あしたのチーム)
組織シミュレーション 図11 組織シミュレーション。実際の組織上に情報をマッピングすることで、配置や抜てき、異動などのシミュレーションが可能に。(資料提供:あしたのチーム)

AIを用いた評価モニタリング機能

 人事評価システムの中には、蓄積されたビッグデータに基づいて、評価者をAIが自動評価する仕組みを実装しているものもある。あしたのチームが提供する「コンピテンシークラウド」では、評価モニタリング機能を備えており、評価者のシステム操作ログをベースに、実施期日や入力内容をテキストマイニングし、レーダーチャートにて評価者としてのスキルが可視化できる。 

 一般的な企業の場合、役職者、管理者といった評価者の人数は限られているため、社内の情報だけでは評価者のスキルを測るに足るデータが十分に得られない。多くの企業の評価者のノウハウをクラウド上に大量に蓄積している事業者だからこそ、機械学習を通じた評価者自動評価が可能になる。

評価モニタリング 図12 評価モニタリング(資料提供:あしたのチーム)

コミュニケーション機能

 面談日の設定や評価シートの作成を社員に対して通知、催促するなど、人事評価に必要なコミュニケーション機能も用意されているものが多い。コミュニケーション機能は、対象者への一括送信はもちろん、個別の事務連絡などにも活用できる。また、カオナビはアンケート機能を備えており、社員に対して人事評価に関する調査をアンケート形式で行うことも可能だ。異動希望や社員の満足度調査など、さまざまなシーンに役立てることができるはずだ。

調査票作成 図13 調査票作成(資料提供:カオナビ)

 今回は、実際に提供されている人事評価システムの画面を見ながら、機能の詳細について解説した。人事評価システムを社内の基盤に乗せるためには、そもそも社員の納得感を得ながら人事評価の仕組みがどうあるべきかを考え、しっかりと議論と検討を重ねたうえで、必要なシステムを選ぶ必要がある。

 あらためて自社が求める人材像を具体的にしながら、業績につながる目標設定や行動特性となるコンピテンシーがどうあるべきか、また、社員の納得感につながる評価方法について十分検討していただきたい。

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