それではシステムの事業継続計画を策定あるいは見直すとしたら、具体的にどのような項目を重視する企業が多いのだろうか。全体に対して聞いたところ、1位「リモートワークを前提にした事業継続体制の整備」48.5%、2位「従業員の安否確認や連絡手段」38.3%、3位「クラウドを前提としたITシステムの構築」28.1%と続く結果となった(図2)。
昨今着手する企業が増えているリモートワークなど、多様で柔軟な働き方に対応したBCP計画や、そのような働き方の従業員であっても確実に安否確認の連絡が取れるような環境を望む様子が上位の項目から見て取れる。その他、前項でもあった想定外の規模の災害に備えてか、クラウドを前提としたシステム構築や遠隔データセンターへのバックアップなどが見直し項目に挙がり、次にシステムセキュリティ上の問題に特化した専門組織であるCSIRTの編成が続いた。
ここまでBCP計画を策定・検討している企業を対象に紹介してきたが、一方、前項で触れたように緊急時の行動指針やBCP計画を「策定していない」とする企業も24.6%と、ほぼ4社に1社の割合で存在する。策定しない理由はどこにあるだろうか。今回の調査では自由記述でその理由を聞いた。
まず前提として「策定しない」と回答している方の大多数が「BCP策定の必要性は感じている」という意見を持っている。しかし、3つの理由で策定していない。その1つは「企業規模が小さく、資金的な余裕が無い」「策定すべきであるが、実施する体制が整備されていない」「他業務のため時間を取れない」などBCP策定にかかるコストや時間捻出の優先順位が上がらない、といった理由である。もう1つは「ノウハウがない」「BCPに精通した担当者がいない」といった社内の人的リソースの問題。そして3つ目が「役員に危機感がないから」「上層部に打診したが必要ないと判断された」など経営層の理解不足に起因する問題であった。
BCP策定には人的リソース負担、体制構築などに掛かるコストが少なくない。経営層からすると直接的な投資インパクトが見えにくいことから実行力のある計画策定に割く予算の優先順位が下がりやすい傾向があるかもしれない。
しかし自然災害が多く、また国際的行事の開催が迫ることから「狙われやすい」とされる現在の日本企業であれば、まともに使えるBCP計画を策定しておくことは決して無駄ではないだろう。単なる緊急時の対応策定と考えるのではなく、取引先の増加や既存業務の効率化、社会的信用の獲得に活用するなどの経営戦略の一部であると捉えることも肝要だ。実際の計画策定に当たっては全社横断的な見直しが必要となるため、経営層を起点としたトップダウンでの取り組みも検討し、早期の検討および策定を実現してもらいたい。
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