SDNについては、大きくデータセンターと企業内LANによってソリューションが異なってくるが、それぞれオープンな環境で導入が進むというよりは、ベンダごとに閉じた環境で利用されるケースが増えている。かつてはOpenFlowなど標準的なプロトコルを使ってデータプレーンとコントロールプレーンを分離し、ベンダに依存しないスイッチを用いて仮想的なネットワークを構築、ビジネス変化への柔軟な対応や運用管理の負荷軽減につなげるというものがSDNであると言われていた。しかし最近では、APIを活用して他システムと連携しながら、各ベンダのソリューションを中心に構成するSDN技術を活用したソリューションが提供され、それを実装するケースが増えている。
例えばデータセンター系のSDNソリューションを提供するベンダでは、サーバ仮想化に強みを持つVMware、そして物理的なスイッチ周りのアンダーレイの領域で強みを発揮しているCisco Systemsなどのソリューションが多く実装されている。どちらもVXLANと呼ばれるイーサネットフレームL2のパケットイーサネットフレームをカプセリングするオーバーレイ技術を利用してネットワーク仮想化を実現しているが、前者であれば仮想的なスイッチやルーターなどネットワークコンポーネントの機能を提供する「VMware NSX」にて管理し、後者であれば物理的なLANスイッチの管理を含めて「Cisco Application Centric Infrastructure(Cisco ACI)」にてネットワーク自体を抽象化して管理することになる。確かに外部とのインターフェースはそれぞれ持ち合わせているが、基本的にはベンダに閉じた形でSDNを導入すr右方が進んでいるのが技術を活用する傾向が強くなっている導入する方が進んでいるのが現状だろう。
一方で、企業内LANにおけるSDNについては、SDN以外の技術も含めて範囲が広がっている傾向にあり、SDNと同様のコンセプトを持ちながら、運用管理性にフォーカスしたソリューションなど、さまざまなアプローチが行われているのが実態だ。言い方を変えれば、目的を達成する手段として“SDNにこだわる必要がない”わけだ。ネットワークの可視化や一元管理、セキュリティ強化といったニーズは、何も厳密な意味でのSDN技術を使わずとも実現できるソリューションも数多く提供されている。例えばHPEが提供するポリシー管理の「ClearPass」やクラウド型のネットワーク管理基盤「Aruba Central」を使ってネットワークの統合管理が可能なソリューションもあれば、ヤマハが提供するクラウド型のネットワーク統合管理サービス「Yamaha Network Organizer(YNO)」を活用してネットワークの統合管理が実現できるものもある。目的に応じた選択肢は豊富にあると言えるだろう。
すでにSDN自体は登場して10年ほどが経過しており、キーワード自身は新しいものではなく、ある意味新鮮味に欠けるものになっているのが現実だ。そこでネットワーク機器ベンダでは、SDNというキーワードを使わず、ネットワークの自動化、自律化に向けた動きを加速させているところもある。例えばCisco Systemsなどは、SDNコントローラーをエンハンスして利用しながら、Intent-Based Networkingと呼ばれるキーワードにてネットワーク仮想化の世界を醸成しつつ、ネットワークの自動化に向けたソリューションを提供している。SDNという言葉の認知度が飽和状態に達しつつある今、SDNに代わる新たなメッセージで次世代ネットワークのあるべき理想を訴求していく試みが進みつつある。
ただし、すでにネットワークの自動化、自律化を実現している企業があるかといえば、まだその段階には至っていない。それでも、障害発生時にその原因を示唆してくれる機能を使ってネットワーク障害の切り分けが迅速に実施できるなど、一部の機能に注目してSDNソリューションを自社に取り込んでいくという動きも出てきている。まずは便利な機能だけを取り込んで、SDNで具現化するメリットを先行して享受するような動きは、これから増えてくるはずだ。
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