SD-WANについては、SDNの考え方を企業のWAN環境に応用したもので、2016年ごろに注目された領域の1つ。SD-WANは、センターに設置されたSD-WANコントローラーによってWAN越しの拠点に設置されたネットワーク機器まで一元管理できるソリューションであり、オーバーレイ技術によってダイナミックに構成変更を行うことができる。これにより、拠点におけるネットワーク管理をセンター側に集中させ、全体の管理工数を減らしながら安全なネットワーク運用が可能になる。このSD-WANで最も期待されているたのが、アプリケーション種別によってWANを自動的に切り替える機能で、特にMPLS網が高価な米国を中心にSD-WANを導入する企業は増えている。
しかし日本では、通信事業者が提供するWANサービス網が比較的安価に提供されているだけでなく、ブロードバンドの広がりによって広帯域なインターネット活用が可能で、かつLTE網が発達している。米国に比べて、SD-WANを活用するだけではコストメリットはそれほど出てこないのが正直なところだろう。そこで、SD-WANを提供するベンダ側では、SD-WANにさらなる付加価値を提供すべく、拠点側のボックスにセキュリティを含めたさまざまなネットワーク機能を持たせたり、直接拠点からインターネットに抜ける「インターネットブレイクアウト」をさせるための手段として提案したりなど、新たな価値が提供できる点にフォーカスを移してきている状況にある。
なお、大手通信事業者のラインアップが拡充していることに加えて、大手企業が買収したSD-WANソリューションも導入しやすい環境が整ってきているなど、SD-WANはこれからさらに期待できる領域だと言える。なかでもVMwareが買収したVeloCloud(現在はVMware NSX SD-WAN by VeloCloud)やCisco Systemsが買収したViptela(現在はCisco SD-WANに統合)などは、注目されるソリューションとなってくるはずだ。またそれ以外にも、ヤマハのYMOやHPEのAruba SD-BranchといったSD-WANソリューションやなど、ヤマハのYNOのようなSD-WAN同様のことが可能なソリューションもあるためり、数多くの拠点を持つ企業などを中心に、日本でもWAN領域も含めたネットワーク仮想化が広がりを見せてくる可能性は高い。
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