「あー転職したい!」と思った求職者が最初に使う道具は何か。SNSでも求人サイトでもなく、企業の求職情報を直接検索できたとしたら、求職者も求人企業も使わない手はない。人手不足解消に企業側で何ができるかを紹介する。
人材の流動性が高まる状況下では、どう低コストでより希望に合った人材を獲得するかが重要だ。SNSを使った求人や基本属性診断を基にしたマッチングサービスなども登場するが、そもそもの求職者の最初の行動である「検索」に着目するとどだろうか。
検索エンジンが自動的に求人情報を検索結果に提示するとしたら、使わない手はない。2019年1月「Google for Jobs」(Googleおしごと検索)が日本でも正式にサービスを開始した。まずはどんなもので、何ができるかをチェックしておこう。
Web検索サイトにはさまざまなものがありますが、中でもGoogle検索のシェアは国内/国外ともに上位に位置しています。例えば、「NetApplications」が公表するデスクトップ版の検索エンジンシェアはGoogleが約75%を占めます。モバイル端末に限定すると実に8割以上がGoogle検索を利用しているという数字もあります(2019年3月の検索エンジンシェアによる)。
このことはつまり、ユーザーが「何かを知りたい、情報が欲しい、詳しく調べたい」と思ったときに、Google検索を利用する割合が高いということに他なりません。だからこそGoogle検索の流入は、サイトを運営する上でも、ユーザーに対して情報の発信していく上でも、とても重要になるのです。
求人市場においてもこの「検索」が、ユーザーにとって重要な手段であることに変わりはありません。ネット社会の昨今、PCやスマートフォンを利用したWeb上の求職活動が盛んに行われています。
ただしWebの検索結果には「検索順位」が存在します。求職するユーザーは地域や職種、給与といった情報を基に求人を検索します。検索を基に多様なページを回遊して求人情報を吟味するわけですが、検索結果の1ページ目にはたいてい大手求人サイトの求人紹介ページが掲載されるのが実情です。
このような背景から、多くの企業はWebサイト内に求人掲載があったとしても、それとは別に大手求人サイトに求人情報を掲載し、求人サイト経由で人材を募集する形を取ることが多いと思います。
「大手求人サイトに登録すれば情報が集まる。その中で、求職者と求人元がマッチングする」というのが、現在のWebを用いた求人市場のセオリーになっています。求職者から見ても「求人広告サイト」やその検索機能を活用した転職活動が支持されており、「直近の転職先を決定した転職手段」をたずねた調査では4割以上の回答者が「転職サイト(求人広告サイト)」を挙げています*。
* 「求人媒体とは? 媒体の種類や特徴、効果を解説」(doda)
しかし、これは非常に「もったいないこと」だという見方もできます。企業のWebサイト内の求人ページが、検索機能からの流入においてはユーザーの目に触れる機会の少ない、期待度が薄い求人ページになってしまっており、機能を果たしていないからです。
こうしたWeb求人市場に「新しい風」ともいえるサービスが2019年1月にリリースされました。その名も「Google for Jobs」です。日本では「Googleしごと検索」という名称でも呼ばれています(※当記事内では、Google for Jobsに統一します)。
Google for Jobsは「Googleが提供する求人に特化した検索機能」です。2017年に米国でリリースされ、既に多数の国や地域で運用されています。
PC/スマートフォンのどちらの検索にも対応しており「自社のWebサイトで求人を掲載しているサイト」と「その求人情報」をGoogleの検索結果ページ内に表示します。
これは「求人企業そのものが公開する情報が一番鮮度が高く、信頼ができる情報である」というGoogleの考えから作られた機能です。求職者と企業の接点を増やすことをサービスとして現在、注目を集めています。
このサービスを利用すると、通常の検索順位が振るわない求人ページでも、掲載している求人情報がユーザーの条件に沿えば優先的に検索ページの上位に表示されます。
つまり、Google for Jobsを使うと「より条件に合致したユーザーに求人を見つけてもらいやすくなる」だけでなく、「求人を掲載しているWebサイト自体への流入数アップ」も期待できます。
Google for Jobsの仕組みと利用者のメリットを図にまとめると、次のようになるでしょう。
さてそれではGoogle for Jobsに対応すると、どんなことが起こるでしょうか。図2を見てみましょう。図2は「ネットワーク エンジニア 求人」の検索結果の例です。実際の求人情報が含まれるため、本稿では一部の表示に加工を施しています。
図2の赤枠で囲んだ部分が、Google for Jobsで取得された検索結果の表示位置です。ユーザーが検索をするときの使い方はこれまでと変わりませんが、「大阪 求人」のように求人情報を求める検索条件が入力された場合に、Googleの検索結果ページの中に検索条件にマッチした「求人情報の専用エリア」が表示されます。
記事情報からは、詳細な掲載情報を参照できるほか、掲載元のWebページへのリンクも用意されています。
また、Google for Jobsに表示される情報に対しては、地域やカテゴリーといった条件による絞り込みを行うことができ、見つけた求人情報はGoogleアカウントにログインすれば保存(ブックマーク機能)をしておくことも可能です。
シンプルな機能ではありますが、ユーザーとしてはこれまでに行っていた検索機能を使いながら、大手求人サイトで行っていた「求人を探して管理する」も一緒にできるようになったということです。
このGoogleの新サービスですが、導入するにはどのような準備がいるのでしょうか?
導入には特別なアプリケーションも、ソフトウェアも、Googleのアカウントも必要ありません。「そのページに求人情報が含まれている」ことを表すソースコードを決まった書式に沿って記載できれば、自動的にGoogle for Jobsの表示エリアに求人情報が掲載されます。
最低限必要な情報は上記6点です。
これをGoogleが指定する「構造化データ」として設定すればよいのです。詳しい書式・掲載場所・必須以外のその他項目に関しては、設定の解説ページにあります。情報は、Google for Jobsのバージョンアップで変更される可能性ありますので、実際に設定される際には必ず公式のドキュメントをご確認ください。
Google for Jobsで表示される検索結果は、Google独自のAIにより判断されています。サービス開始からまだ日が浅いため、検索精度はまだ高くはありませんが、今後求人に対する検索データが収集されていくとともに、よりユーザーとのマッチング精度は高くなっていくでしょう。
冒頭で紹介した通り、リファラル採用のような手法が登場しているとはいえ、多くの場合、求人は大手求人サイトに頼り切りな状況といえます。本稿で紹介したGoogle for Jobsの登場で状況は少し変わるかも知れません。Googleの検索エンジンが分かるように求人情報を掲載しておくことで、自社に適した属性を持つ人材が、自社の求人情報を直接見てくれるようになるかもしれません。
Googleの新機能Google for Jobsを上手に活用することで、これまでの求人市場とは 一線を画する「素早く、より希望条件にマッチした求職者と企業のマッチング」が実現するかもしれません。対策は上記の通り非常に簡単です。ぜひ、トライしてみてください。
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