「母さん? おれおれ、実は……」という古典的な手法から「元号が変わったのでキャッシュカードも交換です」という手法まで、特殊詐欺のバリエーションは多い。いずれも電話がきっかけになるというが、AIで撃退できるのだろうか。
警察庁によれば、日本国内では2018年だけで特殊詐欺、いわゆる「オレオレ詐欺」の認知件数は1万6593件、被害額は356億8000万円だった。これでも前年比で9.6%減だというが、まだまだ被害は大きい。何とかならないものかと思っていたら「AIで撃退」というニュースが飛び込んできた。どんなものだろうか。
2019年5月9日、NTTとNTT東西、NTTコミュニケーションズの各社は、協力して特殊詐欺を防ぐ実証実験を行うと発表した。実験チームは、特定の被験者の固定電話に「特殊詐欺対策アダプタ」と呼ばれる機器を取り付ける。特殊詐欺対策アダプタを装着した電話は、通話内容を全て録音して、音声をクラウド上へ転送する。
それを「特殊詐欺解析AI」で分析する。音声認識エンジンを使って録音音声をテキスト化するとともに、言語分析エンジンを使って特殊詐欺であるかどうかを判別するのだ。教師データのソースや量は非公開だが、実験チームが警視庁の協力を受けて入手した実際の特殊詐欺事件の犯人が使った言い回しが含まれている。
「これは怪しい……」と特殊詐欺が疑われる場合、電話を受けた本人や家族に対してメールなどで注意喚起を行う。特殊詐欺の犯人たちに現金やキャッシュカードなどが渡ってしまう前に防ぐという計画だ。
ちょっと気になることもある。特殊詐欺対策アダプタを接続することで通話が全て録音される。事前に通話相手には「この通話は防犯のため録音させていただきます。ご了承ください」というメッセージが流れるというが、これを耳にした特殊詐欺犯は電話相手をだまそうと考えるだろうか。
このメッセージだけである程度の抑制効果があるような気もする。いや、警告を耳にしてもなお詐欺を敢行しようとする人物こそが、まさに捕まえるべき悪人なのかもしれない。「そのうち犯罪組織側もAIを使ってくるのでは」という不安がないわけでもないが実証実験の成功を祈りたい。
上司X: NTTグループの数社が共同で特殊詐欺対策にAIとクラウドを使うって話だよ。
ブラックピット: AIで詐欺かどうかを見分けるのですか。電話口で分かりそうなものですけどね。
上司X: 無責任なことを言うなよ。聞いただけで判断できないから被害が減らないんだろう?
ブラックピット: そうなのでしょうけど、他人を疑うのは必要なことですよ。
上司X: 詐欺師っていうのは思っている以上に人をだますことがうまいから詐欺師なのだよ。疑ってかかってもだまされるなんてことはザラにある話さ。
ブラックピット: だまされたことがあるような口ぶりですね。
上司X: ぎくり……。
ブラックピット: それにしても「AIに任せてみれば何とかなりそう」っていう最近の風潮を感じるのですが、この件については本当に何とかなることにを期待したいものですね。
上司X: 被害額が1年で350億円を超えるからな。詐欺師集団がAIで武装する前に対策を完了すべきだな。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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