制御系も基幹系も、外部データも丸ごと分析するためのデータ基盤を持つ中部電力。カラスの営巣を見守る裏側で、巨大なデータ分析基盤を運用する。一体何をどう使っているのか。
システムが大規模で複雑な場合、基幹システムと制御システムの両方から事業に役立つデータを取り出して活用するには相応のコストと時間が必要になる。
その中でも発送電事業者はスマートメーターなどの技術革新をきっかけにITによる事業運営の大改革が進む業種といえる。IT活用による事業運営効化や新規事業創出に積極的に取り組む中部電力もその1社だ。本稿では中部5県の電力需要に対応する中部電力におけるIT活用、特にデータ分析基盤とその活用例に注目して記事を紹介する。
※本稿はTableau Japan主催「Tableau Data Day Out 東京」(2019年5月14日、東京で開催)での講演を基に再構成したもの。
中部電力は将来にわたって電力供給を安定させる目的で、ICTを活用して電力ネットワークを高度化する取り組みを続ける。その一方で、顧客である「個人の生活の質向上」に向けたサービスの開発を推進する渦中にある。
2つの異なる取り組みに共通するのは、いずれも、送配電網や施設内の機器などが日々生み出す膨大で多種多様なデータを、蓄積して加工や分析を施して活用する点だ。
スマートメーターや新型の開閉器(配電制御スイッチ)などの機器に加え、再生可能エネルギー電源の連係など、電力系統全体の構成や機器は大きく変化しつつある。ネットワーク全体を可視化するだけでも大変な労力を要する。これに加えて顧客向けに新サービスを開発したり提供したりするには、自社の電力系統から得られるデータだけではなく、外部データを受け入れて統合する必要もある。
中部電力は、古くからIT化に取り組んできたが、大規模化する基幹システムや制御システムは、個々の環境でサイロのように独立した構造を持つため、連係したり統合したりと行ったことが難しい状況だった。「システム内部のデータを自由に抽出して柔軟に加工し、分析することが難しくなっていた」と鈴木氏は明かす。
「業務部門はそれぞれの業務のデータしか知らず、データを利用しようと思っても費用と時間がかかる。共通BIツールを導入したものの、データが固定的であったり動作が遅かったり、UIが使いにくかったりと問題が多く、データ探索や、可視化、分析に使うより、各種システムからのデータダウンロードツールとしての利用にとどまることが多かった」(鈴木氏)
その結果、「データ活用といえば『ごく一部のユーザーがExcelで挑戦すること』という認識になり、新しいデータ活用のアイデアがあっても、検証や検討に取り掛かることもできない状況だった」という。この状況を打破するきっかけが、セルフサービスBIツール「Tableau」の導入だった。
「多様なデータを活用し、業務の効率化・高度化、価値創出を実現するのが理想だが、データがすぐ使える状態で蓄積されておらず、ユーザーのアイデアやニーズの具体化が進まない環境にあった。ユーザーがストレスなくデータを触れる環境と施策が重要だが、Tableau導入は従来のデータ利用環境を変え、データ分析の普及を進める起爆剤になった」(鈴木氏)
同社のデータ利活用への取り組みは、大量データを取り扱うデータプラットフォームの整備(プラットフォームグループが担当)と、データ利活用の全社に浸透に向けたユーザー支援(デジタル化推進グループが担当)の両面で進められた。
データプラットフォームのアーキテクチャは図2にある通りだ。
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