業務に必要なPC環境を検討する上で、多くの企業が選択肢の一つとして考えるであろう、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)をはじめとしたクライアント環境の仮想化。今回は、クライアント仮想化ソフトウェアやDaaSなどのクライアント仮想化サービス、モバイル仮想化ソリューションなどの動向を踏まえながらクライアント仮想化の勘所について見ていく。
渋谷 寛(Hiroshi Shibutani):PC,携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト
国内シンクライアント市場、クライアント仮想化ソフトウェア市場、クライアント仮想化ソリューション市場、DaaS市場、モバイル仮想化ソリューション市場の調査分析を担当。IDC Virtual Client Computing Vision(イベント)イニシアチブリード、 ROI分析、ホワイトペーパー執筆、ユーザー事例分析、DecisionScape(フレームワーク分析)なども実施。新聞、雑誌への掲載、講演などの実績多数。
最初に、クライアント仮想化を定義しておきたい。IDCの定義では、クライアント仮想化とは、プレゼンテーション仮想化(一般的には、SBC型と言われる)、デスクトップ仮想化(VDI)、アプリケーション仮想化(アプリケーションをカプセル化し、クライアント環境で実行するもの)、HDI(Hosted Desktop Infrastructure)、その他の簡易的な仮想化ソリューションなどを含む。また上記の方式において、デスクトップ画面(WindowsやLinux)もしくはアプリケーションのみを画面転送数ケースがあるため、非常に多くの組み合わせがある。
ここで、現在のクライアント仮想化市場について概観していこう。クライアント仮想化を実現するためのソフトウェアは、Microsoft、Citrix Systems、VMwareの3社によってもたらされており、10年ほど前から先進的なテクノロジーを提供し続けてきた。ただし、プロトコルやコネクションブローカー、ハイパーバイザーなど、クライアント環境の仮想化における根幹となる構造は大きく変わっていない。一方、クライアント仮想化を支える技術(動的配信技術など)、関連技術(認証技術、インフラ系仮想化技術など)、AIやアナリティクス、SD-WAN、モバイル製品との融合など、新たな付加価値をもたらす技術拡張が続けられている。この3社の技術を基に、システムインテグレーターやDaaS事業者などが環境を整備し、ユーザーが利用しやすい携帯でサービスが提供されているのが日本市場の特徴だろう。
最近の動きでは、従来のオンプレミス、プライベートDaaSに加え、ハイブリッド型のDaaSとして利用できるサービス、具体的には「Citrix Cloudサービス」や「VMware Horizon Cloud」などが提供されており、コントロールプレーンとデータプレーンを分離して顧客に提供可能な環境も整ってきている。他にも、「Microsoft Azure」(Azure)でホストされる仮想デスクトップサービス「Windows Virtual Desktop」が登場するなど、注目のサービスがクライアント仮想化市場を盛り上げている。
クライアント仮想化に関する市場予測を見てみると、2023年までの予測では堅調な伸びを示しており、例えばシンクライアントデバイスでは成長率(CAGR)が3.1%、クライアント仮想化ライセンスで2.0%、クライアント仮想化ソリューションで4.2%となる。そして仮想化率は、2023年には38.2%ほどになると予測している。
自社で環境を用意せずに利用可能なDaaSについては、2018年実績の670億円から960億円と7.3%の成長率が見込まれており、VPN技術の拡張も含めたモバイル環境に特化したモバイル仮想化ソリューションに至っては16.3%の成長が見込まれている。クライアント仮想化のユーザー数でも3.9%成長すると予測している。
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