2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の普及に伴って、さまざまなユーザー企業の取り組みが紹介されることが増えてきた。
ただ、ツールの真価を最もよく知るはずの開発元企業が自社でどの程度ロボットを活用しているかについては、これまであまり公開される機会がなかった。
そこで今回は、「普段使いのRPA」をアピールするデスクトップ型ツール「MinoRobo」の開発元である株式会社Minoriソリューションズ(東京都新宿区)を取材し、日々進化する自社製品を最前線で試してきたユーザーに、現時点での運用と、そのポイントを聞いた。
目次
1. 今ある仕事の一部を、まずはそのまま置き換える
2. 実行再現性を高め「楽に楽ができる」メリットを訴求
3. 動作の確実性を担保し、安心して仕事を任せられる運用に
4. ユーザー視点で充実するMinoRoboの新機能
―今回お集まりいただいた方々から、まず簡単な自己紹介をお願いします。
高橋進一郎氏(ビジネスイノベーション推進室 室長): 私が所属するビジネスイノベーション推進室は、MinoRoboを含む新たなソリューションの提案を、営業と開発の両部門一体で進めていく部署です。
2018年1月にリリースしたMinoRoboの開発に際しては、お付き合いの長い取引先の協力を得て、ITがさほど得意でない方にも操作を試していただきました。実際に使ってみてよかった部分や足りない点を直接うかがいながら開発しただけに、「普段使い」のしやすさには自信を持っています。
;宮吉育男氏(業務本部 情報システム室 マネージャー): 社内システムの運用を担当している情報システム室でMinoRoboを使っています。これまで社内の9部署向けに、交通費精算の補助など17種類のロボットを実装しています。
MinoRoboがまだプロトタイプだった段階から実装や運用を試してきたので、その中で気づいたことを開発チームに随時フィードバックしてきました。改善要望のリストを渡したところ、あまりにも項目が多かったようで驚かれたこともあります(笑)。
紫関みどり氏(パートナー推進室 リーダー): 私は、当社とシステム開発業務などを分担している協力会社との連絡業務を担当しています。現在、業務の中で実際にMinoRoboを使っています。
―紫関さんの担当業務で、具体的にどのような作業がロボット化されたのですか。
紫関: MinoRoboに任せているのは、協力会社各社に月1回、検収済みの成果物に対する報酬額をメール添付のPDFファイルでお知らせする作業の一部です。
基幹システムにある元データのダウンロードからメールの配信まで、大きく5工程ある作業の後半3つをロボット化したところ、作業全体で10時間の工数削減に成功しました。また作業中、MinoRoboに手放しで任せられる時間も多いので、手作業時には止めざるを得なかった処理を、止めることなく作業できるようになりました。
―ロボットを導入後、人手や時間にゆとりが生まれたことを歓迎する現場は多いようですね。
紫関: そうですね。今までやっていた作業の一部をほぼそのままロボットに置き換えたので、作業手順の見直しなども発生せず、「単純に、やることが減って楽になった」という感覚です。
今回ロボット化した作業は、頻度としては月1回になりますが、現場の立場から言うと、メール送信準備の自動化で宛先や添付のミスを起こす心配がなくなったことで、精神的な負担がかなり軽くなった実感があります。
また、管理職の判断が必要になる人員配置とは異なり、ロボットに処理を任せるのは操作を覚えれば誰でも可能という点でも助かっています。
宮吉: このケースでは、ロボット化によって全体の作業時間が4割短縮されました。ロボット化にあたり、作業そのものの見直しにまで踏み込んでいれば、もっと大幅な時間短縮も可能だったと思います。
ただ、最初からそこを目指してしまうと実現までに時間がかかる上、導入部署が「RPAは面倒だ」というマイナスの印象を持ってしまいかねません。
ロボットを早く・確実に導入するためのポイントは「今ある仕事の一部を抜き出し、まずはそっくり人の作業を置き換える」ことです。ロボット化することのメリットを現場が実感し、時間的にも精神的にもゆとりが出てきたところで、より本格的な効率化に取り組むのがよいと思います。
―ロボットを「普段使い」するには、初めて接するユーザーの心理的なハードルを下げることが大切ということですね。
宮吉: はい。その意味では、「導入までのプロセスが簡単なこと」のほかに「作業中のロボットが極力止まらないようにすること」も重要です。エラーで止まる様子をユーザーがたびたび目にすると、ツール側に原因がなくてもRPAに対する期待が損なわれてしまうからです。
ロボットに任せたタスクがきちんと達成される「実行再現性」は、MinoRoboが昨年夏のバージョンアップで追加した「オブジェクト認識機能」によって一気に高まりました。私個人としても、いまのMinoRoboでいちばん気に入っているのは、この「実際の現場で使ったときに安定して動くところ」です。
―オブジェクト認識機能が加わった前後で、使い勝手がどう変わったのですか。
宮吉: ある動作をPC上でロボットにさせるとき、従来からMinoRoboで使えたのは「クリックするボタンなどを画面上での位置で指定し、反応待ちの時間設定を挟んだ上で後続の動作につなぐ」という方法でした。
これが有効な場面もありますが、通常は「ロボット実行時のモニター画面が作成時と異なる仕様の場合にうまく動作しない」「クリック後の待ち時間設定が短すぎると反応をつかめずエラーになる」という2点から、実行再現性の面では不利な方式です。
オブジェクト認識機能では「ボタンクリックで生じる結果を直接指定し、その結果が得られたら次の動作に移る」という指定方法がとれます。使用するハードウエアに左右されず、反応があればすぐ次の動作に移れる上、反応が返るまでずっと待つこともできるので、実行再現性は格段に上がりました。MinoRoboを使った社内の実装では現在、ほぼ全ての場面でオブジェクト認識機能を選んでいます。
―確かに「どんな環境でも動いて途中で止まらない」となれば、仕事を任せたくなる気がします。
紫関: ええ。私が最初に業務でMinoRoboを試したときも、ツールの操作が簡単だったのと、置き換えた作業の9割方が最初からうまくいったのとで「ずいぶん楽に、楽をさせてもらえるんだな」と感じたことをよく覚えています。
―ロボットは人間と違い、うっかりミスをすることはありませんが、それでも作業を完全に任せてしまうことにはためらいが残ります。
宮吉: 実装している私自身もそう感じます。何かの間違いで、添付漏れのままメールが送信されたりしないかが不安なので、社内でMinoRoboを使ったロボットの実装を行うときは「添付ファイルを確実に取得する」だけでなく「添付されている場合にだけ送信できる」といった確認工程を必ず挟むようにしています。
いったん取得したファイルは、ほぼ間違いなく添付されるので、現実的にはそこまで慎重になる必要はありません。とはいえ「動作の確実性をきちんと担保しているからこそ、人間が安心して任せられる」ことも事実です。
―RPAは、従来のシステム構築に代わる手法と受け止められることもあるようです。両者の違いを、どう考えていますか。
宮吉: RPAに対する市場からの関心は、今までのシステム導入と同様、ロボットによる作業の代替が生産性向上をもたらす点に集中しています。
しかし、RPAには、より実務担当者に近いレイヤーから「働き方改革」を推進できるという独自の特性があります。単純反復作業からの解放による「モチベーションの向上」であったり、削減工数を有効活用した「上位業務への要員シフト」が可能となるのは、システム導入にはないメリットだと考えています。
今後はこうした多様なメリットにスポットを当てて、自動化の対象を広げていきながら、社内のイノベーションに貢献していきたいと考えています。
―「プロトタイプ以来のユーザー」として、MinoRoboへの改善リクエストも随時行っているそうですね。実現した具体例があれば教えてください。
宮吉: 集中管理ツールの充実です。通常のMinoRoboはインストールしたPC単位でライセンスを管理するだけで、ロボットの作成や実行には特に制限がありません。そこで、社内でつくられたロボットの一覧や稼働状況を把握する機能を追加してもらい、社内IT統制を強化したいと要望してきました。
高橋: ロボットの管理についてはさる5月に、サーバ上で集中管理する機能をオプション製品「MinoRobo Manager」としてリリースしました。稼働したロボットや端末の一覧が確認できることで、「野良ロボット」対策が行えるようになります。
また当社に限らず、おそらくどこの企業でも、RPAの導入にあたっては「ロボット化した作業の処理時間がどれだけ短縮するか」を社内で説明する場面が出てくると思います。
こうしたニーズに応えて、「MinoRobo Manager」ではロボット化前後の稼働時間を概算で確認できる「導入効果の検証」機能も標準搭載しました。RPAの導入効果を具体的に把握することで、今後の展開計画がよりスムーズに進められると考えています。
―ロボット化の効果を簡単に定量化できる機能は、歓迎する読者も多いと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。
※「MinoRobo」は、株式会社Minoriソリューションズの登録商標です。
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