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日本RPA市場に乗り込んだ「Kofax」台頭なるか――感情を読み取るAIで機能強化も

インテリジェント・オートメーション(IA)分野で実績を持つKofaxが、同社のIAプラットフォームの機能強化と日本市場における戦略を発表した。他社のRPA製品とは何が違うのか。

» 2019年11月22日 08時00分 公開
[キーマンズネット]
11月13日の記者発表会に登壇したKofaxのレイノルズ・C・ビッシュ氏

 「2019年の8月にHFSリサーチが『RPAはもう死んだ、インテリジェント・オートメーション(IA)を存続させろ』というレポートを発表しました。RPAは確かに価値を持っていますが、より大きなソリューションの枠組みでは一部にすぎません」――こう話すのは、インテリジェント・オートメーション(IA)分野で実績を持つKofaxの最高経営責任者 レイノルズ・C・ビッシュ氏だ。

 同氏は、多くの企業において組織内での特定の部署でのRPA導入は進んでいるものの、全社横断的なビジネスプロセスの自動化が進んでおらず、期待するROI(投資対効果)と真の意味で自動化のメリットを享受できていないとして、この解決策となり得る同社のインテリジェント・オートメーションプラットフォームの特徴と、直近の強化ポイント、さらに日本市場における戦略を話した。同社の提唱するIAとは具体的にどのようなもので、他社ベンダーのRPAとは何が違うのか。

Kofaxのインテリジェント・オートメーション・プラットフォームとは

 米国に本社を置くKofaxは、RPA(Robotic Process Automation)やドキュメント処理を可能にするコグニティブ・キャプチャーなどを統合し、プロセスの自動化を実現するインテリジェント・オートメーション(IA)分野で実績を持つ企業。グローバルで2万5000社以上の企業に導入され、同市場で28%のシェアを占める。日本三菱UFJフィナンシャルグループやゆうちょ銀行といった大手金融機関を中心に顧客を獲得し、延べ1000社以上の導入実績があるという。

 同社のインテリジェント・オートメーション・プラットフォームは、ドキュメントをはじめとするコンテンツを抽出、理解する「コグニティブ・キャプチャー」、定型業務を自動化する「RPA」、人や各種システム、RPAが介入する複数のプロセスを統合する「プロセス・オーケストレーション」、自動化によるパフォーマンスを可視化する分析機能、そして電子署名や顔認識技術、複合機、モバイルデバイスなどを活用して効果的なコミュニケーションを可能にする機能など、5つの要素を統合し全社的なプロセスの自動化を可能にするとしている。

Kofaxが提供するインテリジェント・オートメーション・プラットフォーム

 一般的に、RPAなどで自動化したプロセスが組織内の各所に散在している「サイロ化」の課題と、それらの統合を目指す動きは各RPAベンダーに見られるが、同社の差別化ポイントは何か。

 ビッシュ氏は、長年にわたって上記した各機能を統合し、単一のプラットフォームとして機能するよう努力をしてきたことを強調した。

 「私たちの競合企業には、エンドツーエンドの自動化をうたい、同様の技術や機能をもつ製品も存在します。しかし、これらの製品は、各機能についてそれぞれ開発や保守、管理が必要な場合が多く、ROIが出るまでに多くのコストや時間がかかります」(ビッシュ氏)

 同氏は、KofaxがBPM(Business Process Management)ツールを提供するベンダーとして長年経験を積み、RPA事業をはじめるよりも前からインテリジェント・オートメーションの概念を重視してきたことから、プロセスの統合にはそれほど苦労しないとも語る。

 11月13日には、このインテリジェント・オートメーション・プラットフォームの機能強化に関する発表もあった。1つは、AI(人工知能)および機械学習の技術を使った自然言語処理による文書解釈の機能だ。メールや法的文書、SNSの投稿、顧客の問い合わせといった非構造化データから入力者の意図や感情を読み取る「センチメント分析」と、テキストの中で言及のある人や場所、モノの情報を抜き出す「エンティティ抽出」が可能になる。

 「、非構造化データを含む文書としてリースや保険、融資の契約書などがあります。従業員がこれらの専門的な文書から情報を読み取る業務は投資が必要な上、ミスも生じます。これを自動化できることで、生産性や効率が大幅に上がるでしょう。また、人を介さず顧客のインサイトも得られるため、サービスの質を向上できます」(ビッシュ氏)

 もう1つの強化ポイントとして、オンプレミス版で提供してきたKofaxの機能を、「Microsoft Azure」上のクラウド型のサービスとして提供するとの発表もあった。

2019年、日本のRPA市場に大きく乗り出したKofax

 同社は近年、日本市場への投資にも積極的だ。2019年における飛躍は目覚ましく、2019年の対前年比売上成長率は、1月から9月にかけて70%、7月から9月にかけては305%を記録し、2019年12月末には100%超を見込む。

Kofax Japan 代表取締役社長 荒川勝也氏

 日本市場におけるビジネス強化の一環として、新しいマネジメントチームも採用した。2019年9月には、Kofax Japanの代表取締役社長として荒川勝也氏が就任。同氏はデロイトコンサルティング、EMC、シマンテック、オープンテキスト、モバイルアイアン、チェック・ポイントの日本法人でプロフェッショナルサービスや営業部門の要職に就いた経験を持つ。

 会見で荒川氏は、日本市場においては2020年に向けたさらなる投資として、Kofax RPAの強化やユーザー会およびイベントの開催、オンラインコンテンツやセミナーの分野におけるパートナーとの協業、顧客事例の展開などを予定していると述べ「パートナーおよび顧客を含むエコシステムを確立し、日本での存在感を高めていきたい」と締めくくった。

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