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RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)をテーマにした国内最大規模のイベント「RPA DIGITAL WORLD OSAKA 2019」(RPA BANK主催)が2019年11月22日、大阪市北区のコングレコンベンションセンターで開催された。
主要な大企業へのRPA導入が一巡し、活用規模のさらなる拡大と、中堅・中小企業への浸透が課題とされる現在、経済の中心地であると同時に、中小企業従業者の割合が首都圏(1都3県、80.3%)よりも高い関西圏(2府4県、84.3%)の動向は、国内RPA市場の今後を占う上でも要注目といえる。本記事では、同イベント展示会場で行われたハンズオン、デモンストレーションセミナーの模様と、展示内容の一部をピックアップして紹介する。
会場では、実際のツール操作を体験する「ハンズオン」と、操作実演を交えた解説「デモンストレーションセミナー」を計4社が実施。各7回のプログラムは、ブースからあふれる参加者も出る盛況となった。
デスクトップ型RPAツール「MinoRobo」を開発提供している株式会社Minoriソリューションズは、同ツールのハンズオンを実施。各回8人の参加者は、正味30分ほどという限られた時間を使い、東証一部上場企業である同社のリアルタイム株価をWebサイトから自動取得するロボットの実装にチャレンジした。
2018年1月にリリースされた純国産RPAツールのMinoRoboは、マウス操作主体の直感的な操作性と、「オブジェクト認識方式」による操作再現性の高さ、開発メーカー自身による迅速・柔軟なサポート体制を特長としている。既に全国でおよそ100社のユーザーを獲得しており、ある導入企業では従来手作業で行っていた社外サイトの更新確認作業を同ツールで代替。担当者不在時も含めた自動実行を実現したほか、年間480時間相当の余力を創出できたという。
この日のハンズオンは「大阪と東京で定期開催している2時間のセミナーから、カリキュラムを抜粋した内容」(担当者)だった。参加者らは、ツールの操作画面上でのドラッグアンドドロップなどで、自動実行させたい具体的な作業内容を順番に登録。駆け足で完成させたロボットが無事に株価を取得し、Excelのリストにまとめていく様子を満足そうに眺める参加者の姿もみられた。
ハンズオンでは併せて、個別のPCにインストールされたMinoRoboの稼働状況や導入効果を可視化するWebサービス「Manager」も紹介。参加者がつくったロボットが、すべて無事に作業を完了させていることを集計画面から確認し、利便性をアピールした。
RPA導入・運用支援サービス「RoboRoid」を展開するキューアンドエーワークス株式会社は、効果的なRPA導入の準備段階で欠かせない「業務可視化」を支援する「RoboRoid-HIT.s log」「RoboRoid-HIT.s」を紹介。ツール操作の実演も交えてコンセプトを解説した。
このうちHit.s logは、RPAなど働き方改革の具体的施策を進める上で「ゴーサインを出す経営陣が納得できる定量的な費用対効果を示したい」というニーズに応えるもの。PC上でのアプリケーションやファイルの使用状況をAIで分析し、RPA・ペーパーレス化といった改善策に適した作業の所在や割合、所要時間に「当たりをつける」用途を想定している。
いっぽうHIT.sは、改善を見込んだ業務について詳細を可視化していくためのWebサービスだ。オフィスワークを18種に分類した記号を使い、作業手順をチャート図にまとめるもので、ユーザーが自力でまとめきれない場合はサポートを追加することもできるという。
操作履歴をもとに効率化のポイントを探る「プロセスマイニング」の一種であるHit.s logについて、ブースの担当者は「内部統制目的でIT資産管理ソフトを利用している企業には既に十分な履歴データがあり、これをもとにすぐ分析に入れる」と説明。現時点で約100社にのぼるユーザーの中には「先行導入したRPAとの併用で、ロボット化の領域拡大につなげているケースも多い」とアピールしていた。
14社が出展した展示ブースでは、幅広い応用領域に向けたRPA製品と、人工知能の応用で光学文字認識の精度を高めた「AI-OCR」などの関連ソリューションが多数提案された。以下では、このうち8社の模様をピックアップする。
企業の生産性向上を支援する「RPA業務改革サービス」で早くから定評を得ているアビームコンサルティング株式会社は今回「RPA」と「業務改革」、さらに紙の帳票類をデジタルデータ化して処理する「AI-OCR」の一体活用を提案した。
担当者によると、この日のブースでは「RPAを導入済みで、OCRやチャットボットとの併用を検討している大企業本社・子会社」からの来場に加えて「新規導入するRPAツールを比較検討している中小企業」の担当者も目立ったという。
首都圏に比べ、これからRPAに着手する企業の割合が多い関西圏の状況について担当者は「豊富な先行事例をベースにした“相場観”に合わせ、スタート時から長期的視点で取り組めるのはメリット」とコメント。「簡便なデスクトップ型ツールを使った検証から始めるのが従来の定番だったが、活用規模の拡大に伴って本格的なサーバー型ツールへ移行するコストは無視できない。そのため、従業員数100人以上の企業が今から全社でRPA活用を始める場合、最初からサーバー型の採用を推奨している」と話していた。
RPAツール「Blue Prism」の導入支援実績をもとに、同ツールに強いRPA開発者の育成に力を入れる日商エレクトロニクス株式会社は、この10月から大阪で順次開講している「デジタルレイバーアカデミー」のコースを案内。さらに、Blue Prism以外のRPAツールにも広く対応したロボット管理ツール「Digital Labor Station(DLS)」を紹介した。
DLSは同社が独自開発した、ソフトウエアロボットの運用状況を管理するためのクラウドサービスだ。ロボット作成者や改修履歴、稼働状況のほか、導入業務の担当者といったデータを一元化。メッセージ機能も備えており、部署横断的なRPAプロジェクトの経過を確実に残すことで、引き継ぎ漏れなどによる長期運用時のリスクを低減できる。
ブースの担当者は「複数ツールを併用するRPA運用が徐々に一般化しつつあり、個別のツールに依存しない運用管理の必要性を感じる企業も増えてきた印象だ。年内はDLSのトライアル期間として無償利用できるので、ぜひ試して意見を寄せてほしい」とアピールしていた。
厚い法人顧客基盤を生かし、さまざまな業界・業種に対してRPAツール「WinActor」の導入を支援している株式会社NTTドコモ。この日の展示ブースではWinActorとAI-OCR「DX Suite」を組み合わせた、紙帳票のデジタルデータ化などを提案した。
同社のRPA導入支援サービスは、携帯端末やチャットボットなどと組み合わせたソリューション提供に強みを持つが、さらに全国をカバーするサービスエリアでニーズに応えてきた結果「地方創生」分野に強いことも特長としている。これに関連した関西地域での具体例として、和歌山県紀の川市によるRPA導入を同社が支援した実績も紹介された。
「地域の働き手が圧倒的に足りないという危機感の中、切実なリソース不足を補うためにRPAが選ばれる場面を多く見てきた」という担当者は「自治体や中小企業の生産性向上には公的な支援もある。利用可能な補助金の情報提供など、より少ない負担でRPAを採り入れるためのサポートにも力を入れていきたい」と話していた。
サーバー型RPAツール「Blue Prism」の国内販売元からは、PC上での実演とパネル展示などを通じ、同製品の最新情報が提供された。
グローバル企業の大規模運用に耐える信頼性がまず注目されたことなどで「高額」との印象が先行したBlue Prismは現在、1ライセンスの年額を税別120万円に設定。課金の対象を実行環境に限定していることもあり、従業員1,000人に満たない規模の企業が十分な費用対効果を達成している例も少なくないという。
一方でブースの担当者は、Blue Prismが真価を発揮する条件として「ロボット化する作業の集約化で実行環境の稼働率を高めるコンセプトに沿った運用組織づくり」が不可欠と強調。「各現場が自身の業務をロボット化するよりも、集めてきた仕事を社内エンジニアがまとめて実装するアプローチがBlue Prismには適している。方法論は確立しているので、ぜひRPAエンジニアの地位と開発時間をしっかり確保して取り組んでほしい」と呼びかけていた。
RPAツール「Automation Anywhere」の国内法人は、導入支援事業のパートナーであるシー・システム株式会社、株式会社システムサポートと共同出展。ツールの実演を交えながら、サーバー型RPAツール「Automation Anywhere Enterprise」および新製品「Automation Anywhere Enterprise A2019」を紹介した。
グローバル展開する主要RPAベンダーのツールでは初めて、ロボットの作成や運用をWebブラウザ経由で行う「完全なクラウドネイティブ型」(担当者)となったA2019は「すぐ使い始められ、運用規模の拡張が容易」というクラウドの強みを最大限生かせる製品。ロボット開発をより身近にするため、新たに「フローチャート主体」の開発画面を用意したほか、API(Application Programming Interface)による他社サービスとの連携機能を充実させたのが特長という。
同製品への移行体制も近く整うオンプレミス版のEnterpriseは併売中で、関西圏のユーザーも順調に増加しているという。担当者は「導入部署主体で本格運用できるRPAツールとして、他社製品からAutomation Anywhereに切り替える例も出てきた。『ユーザー自己完結型の運用をサポートする』というスタンスに共感いただけるパートナーと共に、さらなる浸透を図りたい」と話していた。
トッパン・フォームズ株式会社は、同社のクラウドサービス「FastAI-OCR」と、導入支援・研修サービスを手がけるRPAツール「BizRobo!」「WinActor」「UiPath」「パトロールロボコン」を組み合わせた活用を提案した。
ビジネスフォーム印刷の国内最大手で、紙帳票とデータ処理のハイブリッド運用に豊富な知見を持つ同社。この日の来場者からも「紙伝票の処理を効率化しようとRPAの導入テストを終え、その前工程となるOCRも複数の試用版を検証しているが、思うように精度が出ない」との相談が多く寄せられたという。
ブースの担当者は「AIを応用して文字認識率を高めたOCR製品は多いが、より高い精度を得るためには『傾き補正』『罫線の消去』『ノイズ除去』といった、スキャン画像への『前処理』が重要」と説明。独自技術でこうした前処理を行うFastAI-OCRの優位性と、データの分割送受信による高度なセキュリティー性をアピールしていた。
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