メディア

2020年は何が“来る”のか? エンタープライズITを占う10大予測

2020年は「as a Service」の考え方はSIerにも求められ、働き方改革も次のフェーズへと移るだろうとIDC Japanは考える。これに対して、組織は何を考え、どう意識転換するべきか。

» 2019年12月27日 13時00分 公開
[岡垣智之キーマンズネット]

 IDC Japanは、2020年の国内IT市場において注目すべき動向およびテクノロジー主要10項目を発表した。同社は「DXに対する意識はここ1〜2年で大きく変化した。今後国内企業はそのトレンドに乗り、ITベンダーはそれを支援していくべきだ」としている。企業のDXが進展を続ける中、何を考えるべきか。IDC Japanの寄藤幸治氏(リサーチバイスプレジデント)が、2020年の動向について解説した。

グローバルは外向きのDX、国内は相変わらず内向きのDX

IDC Japan 寄藤幸治氏

 寄藤氏は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)を実践する企業は今後ますます増えるだろう。そして、それらの企業が生み出すサービスや製品が世界経済の多くを占める『デジタル優位』が、4〜5年のうちに訪れるだろう」と今後の展開を捉えている。

 DXが進展しデジタル優位が訪れようとしている中、国内企業のDXに対する考え方には少々課題があるようだ。DXを実践する企業を対象にIDC Japanが実施した調査によると、「DXによって得たベネフィットは何か」という問いに対して、「コスト効率性」「生産性の改善」「業務プロセス時間の短縮」といった回答が上位を占めた(図1)。いまだ効率性、生産性を重視する国内企業に対して、グローバルでは顧客とエンゲージし新しいビジネスを生み出す手段としてDXを捉えているようだ。つまり日本のDXは内向きであるのに対して、グローバルでは外向きのDXが進んでいるということだ。

 そうしたグローバル基準のDXに付いて行くために必要な要素として、寄藤氏は「ハイパースピード(超高速)」「ハイパースケール(超大規模)」「ハイパーコネクテッド(超他接続)」の3つを挙げた。これらの単語だけでは分かりづらいが、つまりは「顧客体験やサービスを速いスピードで生み出し、それらを大規模に展開する。自社にとどまらず、他社と積極的に結び付くことで新しい価値を生み出す」ということだ。この点が、2020年で国内企業のDXが新たな次元に進めるかどうかの鍵となるようだ。

図1 DXを実践する企業に対して「DXから得たベネフィット」を尋ねた結果

2020年、国内IT市場「10大予測」

 IDC Japanは、国内IT市場において2020年に起こりうる事象を予測し「10大予測」として次のようにまとめた(図2)。

図2 2020年、国内ICT市場10大予測

 これらはエンタープライズITにどのようなインパクトをもたらすのか。ここからは同社が発表した10大予測について説明していく。

予測1:2020年の国内ICT市場は前年比1.3%減

 2020年1月に予定される「Windows 7」のサポート終了を受け、2019年のPC市場は好調。市場全体を見ると前年比1.8%増の見込みだ。しかし、その反動を受け2020年は1.3%のマイナス成長に転じる。

予測2:「働き方改革」から「Future of Work」へ

 働き方改革が次のフェーズを迎え、働き方だけでなく企業文化を変革する「Future of Work」の重要性が増す。単に残業時間を削減するといった改革ではなく、組織文化の変革も求められる。

予測3:クラウド市場はカオス期を迎える

 クラウドの提供モデルやベンダー間の協業などによってクラウドの選択は複雑化する。企業は経営戦略に合わせて自組織に必要なクラウドを選択し、企業横断的なクラウド活用を推進することが求められる。

予測4:より広いデータ活用が企業競争力の源泉になる

 社内にとどまらず、社外とのデータ連係も重要となる。データ共有のプラットフォームとして、複数の組織で管理するプライベート型ブロックチェーンの検討や実証が増加する。

予測5:AI(人工知能)、RPA(Robotic Process Automation)を活用した業務オペレーションの自動化が進む

 AIやRPAを組み合わせて、経営分析やプロジェクト管理、資産管理といった業務の自動化を実践する企業が増加する。約半数の企業が、ビジネスプロセスにインテリジェントな自動化を組み込むだろう。

予測6:リスクベースアプローチによるサイバーセキュリティ対策が重要となる

 2020年は大型イベントが開催されることもあり、サイバー攻撃が増加し、甚大な被害をもたらす可能性がある。リスクアセスメントによる重要資産の把握と脆弱(ぜいじゃく)な部分の特定、リスクを低減させるためのセキュリティ投資、侵害を受けた場合の早期検知や対処、そして復旧までの体制作りが必要となる。

予測7:DXに対応したデータ基盤の要求が高まる

 国内のエンタープライズインフラ市場は全体的にマイナス成長が続くが、DXに対応したデータ基盤の要求が高まる。エッジでの高速データ処理ニーズも増加。国内エッジインフラ市場はさらに成長し、競争が激化する。

予測8:ITサービスベンダーにおいても「as a Service」が本格化

 ソフトウェアなどプロダクトベンダーでは先行して「as a Service」化に取り組んできたが、SIerなどITサービスベンダーはこのトレンドに乗り切れていなかった。SIerは、今まで続けてきた人月契約からサブスクリプションモデルへの転換を考えていかなければならない。

予測9:人材争奪戦が激化する

 レガシーシステムのモダナイゼーションの取り組みが本格化する。それに伴い、コンテナ技術や「Kunbernetes」、クラウドネイティブアプリケーションのアプローチが積極的に採用される。しかし高度なスキルを持つ人材が不足し、人材争奪戦が激化する。

予測10:5Gの提供が開始、ローカル5Gにも関心が集まる

 2020年に提供が予定される5G。提供開始当初は、基地局数が限定的であったり5G端末が高価であったりするなど普及はややスローではあるものの、そのスピードは徐々に加速する。特に、工場の機械設備の操縦や建設機械の遠隔操作、ロボットや機械の運転制御などにおいて、ローカル5Gの活用に関心が集まる。


 こうした予測を踏まえて、寄藤氏は「今後4年のうちに到来するデジタル優位の時代に勝ち残っていくためには組織変革が必要で、企業はそれに対して準備を進めるべきだ。そうした背景から、ユーザー企業とともにITサプライヤーもデジタルファーストを目指すべきではないか」と締めた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。