2020年1月15日、「Windows 10」ユーザーのデフォルトWebブラウザを一斉に変更するアップデートが予定されている。対策を講じない場合は全従業員の端末で設定が変更されるため、PC管理者は不要な混乱が生じないよう、事前に対策を講じる必要がありそうだ。
【追加情報】2020年1月16日、日本マイクロソフトは日本国内向けのChromium版Edge配信を2020年4月1日以降まで延期すると発表しました(詳細は「【速報】Chromium版Edge、日本向けの配信は4月1日以降に延期へ」)(16 Jan 2020 18:19:30 +0900更新)
【お知らせ】Windows Updateの配信時間は米国時間の2020年1月15日です。日本での配信は時差の関係で1月16日となる見込みです。当初記事で現地時間である旨の記載が漏れていましたので補足いたしました。(10 Jan 2020 18:44:30 +0900更新)
2020年1月15日(米国時間、日本では2020年1月16日)の「Winodws Update」は、「Windows 10 Version1803」(2018年4月配信)以降のWindows 10のデフォルトWebブラウザが「Chromium版Edge」に変更される。マイクロソフトの次世代Webブラウザとして開発されたEdgeは独自のレンダリングエンジン「EdgeHTML」を採用してきたが、2018年12月に「Chromium」を採用する方針を表明していた。ChromiumはGoogleらが開発を進めるオープンソースのWebブラウザー開発プロジェクトだ。Web標準準拠で拡張機能なども豊富な点が特徴だ。
Chromium版EdgeはHTMLレンダリングエンジンやJavaScript処理エンジン(V8)にオープンソースのChromiumを使用し、UI部分はChromiumをベースに旧Edgeの機能を取り込んでいる。Chromium版Edgeにアップデートすると旧Edgeのショートカットやピン留め、ブックマーク、保存されているIDやパスワードなども一括して移行する。ただしChromium版Edgeにアップデートした後は特殊な設定をしない限り旧Edgeは使用できない。
Chromium版Edgeは「Internet Explore」(IE)の機能を内蔵しているため、イントラネットでIEを使用している企業にとっては非常に便利だ。先に「Chromium版Edgeにアップデートした後は特殊な設定をしない限り旧Edgeは使用できない」と説明したが、Chromium版Edgeにアップデートする際、旧Edgeのデータが削除されるわけではない。簡単に説明すると、ユーザーからのアクセスを全てChromium版Edgeに切り替えるため“見た目上は”旧Edgeが利用できない状態になる。ユーザーがChromium版Edgeを手動でインストールした場合はChromium版Edgeと旧Edgeの両方を併用できる。この場合でも旧Edgeが持つブックマークなどの情報はChromium版Edgeにもコピーされる。
こうして見ていくと大きな影響はなさそうに見えるが、企業の情報システム担当者の立場などからみれば、全従業員のWindows 10端末でデフォルトブラウザが変更されるとなると、一時的な混乱が懸念される。そこで、本稿では今から間に合うChromium版Edge移行タイミングのコントロール方法を紹介したい。
IT管理者にとっては、Windows 10のデフォルトWebブラウザが自動更新でChromium版Edgeに移行してしまうことは問題と感じるだろう。少なくとも業務アプリケーションの動作確認を完了するまでは更新をストップしたいと考えるかもしれない。この時、強制アップデートを回避するには2つの方法がある。1つは管理ツールを利用する方法、もう1つはMicrosoftが提供するツールを利用して個別に設定したり「Active Directory」(AD)のグループポリシーで制御したりする方法だ。
Chromium版Edgeは、1月15日に配布が開始するWindows Updateに含まれているため、通常は自動でアップデートされる。ただ、社内でWindows Updateをコントロールする「System Center Configuration Manager」(SCCM)や「Windows Server Update Services」(WSUS)を使用している場合は、Chromium版Edgeの自動インストールをブロックできる。
SCCMやWSUSを持たないユーザーに向けて、MicrosoftはChromium版Edgeの自動更新をブロックするツール「Blocker Toolkit」を配布している。Blocker ToolはSCCMやWSUSを使用せず、通常のWindows Updateをそのまま利用している場合にChromium版Edgeの自動インストールをブロックする。
Blocker Toolkitは、Chromium版Edgeを自動インストールしないように設定できるスクリプトを用意している。このスクリプトを実行すれば、PCのレジストリが変更され、1月15日のWindows Update時にChromium版Edgeが自動インストールしないように設定される。
このスクリプトはレジストリに「HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\EdgeUpdate」という項目を作り、その項目に「DoNotUpdateToEdgeWithChromium」(REG_DWORD)を作成し、値「1」を設定する仕組みだ。ユーザーがレジストリエディタを起動して手動で同じ設定をすればChromium版Edgeをブロックできるが、操作ミスなどの事故を排除するためにもスクリプトの利用が好ましいだろう。
Blocker Toolkitには、スクリプトと別にADのグループポリシー用のADMXファイル(ADMLファイルを含む)も入っている。ADを使用する環境の場合は、このADMXファイルを追加すればAD配下のクライアントにChromium版Edgeの自動配布をブロックするグループポリシーを追加できる。
なお、このブロックツールを使用しても、ユーザーが能動的にChromium版Edgeをダウンロードしてインストールする場合はインストールをブロックできないので注意が必要だ(Windows Updateによる自動アップデートだけをブロックする)。
今後、MicrosoftはChromium版Edgeに全面移行するため、旧Edgeに関してはサポートを終了する予定だ。セキュリティパッチの提供もなくなると考えられる。そのためChromium版Edgeの動作状況を確認して、できる限る早いタイミングでChromium版Edgeに移行した方が良い。さすがに1月15日に企業内の全PCをChromium版Edgeにアップデートしようとすると、トラブルが起きた場合に復旧の手間が掛かってしまう可能性がある。しばらく様子を見て移行を計画すると良いだろう。
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